佐川などが現場に採用、グローバル展開も加速へ
物流倉庫・製造工場向け自動搬送ロボット開発を手掛けるスタートアップのLexxPluss(レックスプラス)は、次世代自動搬送ロボット「Hybrid-AMR」の生産・販売拡大を目指している。
3月15日には今後2年間の取り組みとして、製造拠点を現状の1カ所から3カ所まで増やして生産能力を20倍に高めるほか、日本にとどまらず米国で事業を拡大する方針を発表。海外で事業を展開することで知名度を高め、製品の設計情報を無償公開しながら共に共同利用する「オープンパートナーシッププログラム」のパートナー企業を、今後2年間で国内外100社まで広げる計画だ。
Hybrid-AMRの生産規模は年間1500台まで拡大させることを目指している。既に佐川急便が物流現場で採用するなど、小回りが利き大型のラックを牽引可能なAMRの機能や使い勝手に注目度が高まっている。
LexxPlussは独自技術を囲い込むのではなく、ハードや走行管理システムに関する情報は広く公開し、多くの企業などと連携して技術のレベルを高め、Hybrid-AMRを物流に不可欠な「自動化インフラ」まで進化、普及させていきたい考えだ。
「Hybrid-AMR」
AMRとAGV両方の機能持つ「ハイブリッド」
川崎市内にあるLexxPlussの研究拠点では、Hybrid-AMRの研究開発が続けられている。Hybrid-AMRは多数のセンサーを搭載し、周辺の環境を把握しながら倉庫や工場の中を自律移動する。棚の下に潜り込んだり牽引したりして運搬する仕組みだ。
Hybrid(ハイブリッド)との名称は、自律的に障害物を検知・迂回できるAMRとしての機能と、繰り返す作業で精度とスピードを保証できるAGV(無人搬送ロボット)としての機能の両方を持っていることが由来だ。
1台で最大500kgを運搬できる上、回転の半径は38cmと小回りが利く。Hybrid-AMRの幅は64.5cmで、狭小な倉庫や工場のスペースでも円滑に移動することが可能と見込む。
研究開発拠点
棚の下に潜り込んで搬送するHybrid-AMR
レーダーで周辺の地図を自動作成
さらに、倉庫や工場で既に稼働しているアソートシステムやコンベヤとも、LexxPlussのソフトウエアを活用すれば容易に連携できるのもメリット。バッテリーは最大18時間持続する。2020年3月に同社を創業した阿蘓将也CEO(最高経営責任者)は「価格も1台300万円前後と同程度の機能を持つAMRより安く抑えており、コストパフォーマンスは非常に高い」と自信を見せる。従来は人手で2時間を要していた搬送作業をHybrid-AMRの活用で4分の1に短縮できた事例もあるという。
Hybrid-AMRの走行管理システム「Konnectt(コネクト)」に関しても、日本語を母語としない作業員でも利用可能な言語非依存性のインターフェースを備えたり、50台以上のロボットを一括管理できたりする。海外出身の従業員が物流現場に増えていることにも配慮している。
昨年12月には、SGホールディングス(HD)が東京都江東区新砂に構えているグループの次世代型大規模物流拠点「Xフロンティア」佐川急便中継センター3階でHybrid-AMR12台を導入した。自動仕分け機で搬送することができない不定形の荷物をHybrid-AMRに担わせている。24時間絶え間なく荷物と人が行き交う環境下でも、人などに接触せず、自律移動できる強みを発揮しているという。
様々な搬送方法を研究中
Xフロンティア佐川急便中継センターで稼働するHybrid AMR(LexxPlussと佐川急便提供)
オープンパートナーシッププログラムのパートナー企業の顔ぶれはマテハン設備メーカーや情報システム開発会社、段ボールメーカーなど多岐にわたっている。今後はテナント企業の物流業務自動化・省人化を後押ししたい物流施設デベロッパーとの連携強化も視野に入ってきそうだ。
阿蘓CEOは「倉庫や工場の業務効率化や自動化のニーズは日本だけにとどまらない。米国でも移民の減少や新型コロナウイルス禍後の労働に対する意識の変容などで人手不足が深刻化している。米国をまず足掛かりにグローバルな事業展開も加速させていきたい」と強調している。
(藤原秀行)