【現地取材・独自】「関西物流展」、ハード・ソフト両面で2024年問題などの課題対応を強調

【現地取材・独自】「関西物流展」、ハード・ソフト両面で2024年問題などの課題対応を強調

自動フォークリフトや自動倉庫、出展内容多彩に

西日本では最大規模となる物流関連の展示会「第4回関西物流展」が4月12日、大阪市の「インテックス大阪」で開幕した。過去最多となる361社が出展。トラックドライバーの長時間労働規制強化で長距離輸送が制限され、物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」の解決を図る製品やサービスが多数並ぶなど、会場内には物流業界が抱えている課題を解決しようとする意気込みであふれている。

会場で目を引いた最新技術の1つが自動フォークリフトだ。トラックドライバーの不足が近年、社会的に大きく注目されているが、倉庫などではフォークリフトのオペレーターも確保が困難になっているとの声が多く聞かれる。そうした状況を考慮、積み降ろし作業の省力化を提案する出展が複数見られた。


多くの来場者で混み合う会場

GROUNDは、中国のMultiway Robotics製の自動フォークリフト3機種を国内で初めてお披露目した。カメラやロボット、3Dセンサーといったマシンビジョンと人工知能技術を駆使、自動的に貨物を搭載したパレットの姿を認識している。

ブースではカウンターバランス型の自動フォークリフトがトラックの荷台にパレット貨物を積み降ろしするデモンストレーションを公開、正確な作業ぶりが来場者の注目を集めていた。かごの積み重ねや高所作業にも対応可能で、人件費高騰に悩む企業などから多くの相談を受けているという。


GROUNDブースの自動フォークリフト

ラピュタロボティクスは4月4日に発表したばかりの「ラピュタ自動フォークリフト」を出展。ピッキング支援AMR(自律移動ロボット)の導入先でフォーク作業の自動化についての相談も多く、ニーズがあると考え、開発にこぎ着けた。

今回発表した自動フォークリフトは、反射板や磁石などガイドとなる設備が不要で、既存の施設やレイアウト変更にスムーズに対応できる点を強みにしている。スイッチ1つで自動モードと有人モードの切り替えが可能で、一部の作業を人手でやりたいというニーズにも応えられるようにしている。既に鈴与と連携、物流現場へ試験導入することが決まっている。


ラピュタ自動フォークリフト

自動倉庫システムも来場者の関心を集めている。フランス産業界初のユニコーン(時価総額10億ドル=1300億円=以上の非公開企業)となったロボットメーカーEXOTEC(エグゾテック)の日本法人EXOTEC NIHON(エグゾテックニホン)は、最大高さ12mの保管棚の間を搬送ロボットが昇降し、ステーションへ商品を運ぶピッキング支援システム「Skypod(スカイポッド)」と、多関節アーム型のピッキングロボット「Skypicker(スカイピッカー)」を展示。

Skypodはシステム内に保管されているビン(専用コンテナ)やトレーまで2分以内に到達可能な作業スピードが強みだ。人材採用が厳しい中で、ピッキング作業に伴う長距離の歩行を無くし、従業員の満足度を高めたり、人の定着につなげたりする効果を見込んでいる。AGV(無人搬送ロボット)が行き来している保管棚もワイヤーなどが入っていない普通のラックで、短期間に導入や拡張が行えるように設計している。


Skypod

Skypickerは1時間に最大600個のアイテムをピッキングする能力を備えており、取り扱えるアイテムは最大重量2kg、最小2×2cmの平面を持つものから対応できる。日本は物流現場でもいまだ人海戦術による作業の割合が高いことから、これからの市場として期待しているという。

脱炭素の潮流が強まる中、商用車の領域で活用できるかどうか関心が高まっているEV(電気自動車)については、新興のEVモーターズ・ジャパン(北九州市)が今年12月に発売予定の荷台・車両一体型の物流用EV車を展示。ラストワンマイル配送での利用を想定し、準中型免許で運転が可能な2t車と普通免許で運転できる1t車をラインアップで取り揃えている。

通常、トラックの荷台は運送会社によって細かい仕様があるため、開発のしやすさなどを総合的に考えて荷台と車両一体のタイプを採用。大手宅配会社などから既に多数の問い合わせが来ているという。


ラストワンマイル用EVトラック

ワコンは新商品の置き配用保冷ボックス「Oite-Cool(オイテクール)」をお披露目。オリコンをそのまま4段積みで格納できる上、冷凍品と冷蔵品を一緒に保管することも可能。特に外食産業の需要を見込んでおり、夏ごろのトライアル開始を目指している。

30℃環境下での実験では、保冷剤を入れたオリコンを格納し、冷蔵品で10℃以下、冷凍品でマイナス5℃以下を8時間保持しているという。外食産業は新型コロナウイルス禍の営業時間短縮を経て、対面納品から夜間の置き納品に切り替える事例が出てきており、物流コストの上昇による値上げへの対応も課題となる中、置き納品によるコスト低減を提案していくことで、外食作業を支えていきたい考えだ。


Oite-Cool

ハードに加え、ソフトの面でも多様なソリューションが並んでいる。ウイングアーク1stは4月1日に発売した配車業務プラットフォーム「IKZO Online」と、そのオプションとして5月1日に提供を開始する「IKZO Analytics」を出展した。IKZO Onlineは、オンラインで荷主から協力会社までつなげることが可能なシステムで、IKZO Analyticsと組み合わせれば、様々な経営分析が可能になる。

デジタルタコグラフの運行データと作業履歴、燃料のデータなどを集計することで、例えば1km当たりの単価など新たなKPI(業績評価指標)となるようなデータを可視化する。来場者は車両別収支などに加え、2024年問題を控えてドライバーごとの改善基準告示違反の状況に関するデータにも注目しているようだ。

物流施設の庫内業務進捗状況を可視化するクラウドベースのシステム「Logimeter(ロジメーター)」を展開しているKURANDO(クランド)は、各サービスや外部システムから得たデータを連携し、現場横断で集計・分析ができる新サービス「Logiscope(ロジスコープ)」を全面に打ち出している。ロジメーターの通常プランのユーザーであればいくつかのレポートは無料で利用できる。

同社は業務改善のためには、データの「見える化」より「見せる化」が重要だと指摘。一例として、可視化されたデータから目標値を設定し、下回った場合にアラートを表示すれば否応なく目にとまると効能を説明している。特にセンター間の横比較が簡単にできる点はユーザーから好評を博しているという。

(川本真希、藤原秀行)

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