通信回復せず、燃料不足で「ハードランディング」か
月面へ物資を輸送する「ペイロードサービス」の商用化を目指しているスタートアップのispace(アイスペース)は4月26日、月面を目指していた着陸船に関し「通信の回復が見込まれず、月面着陸を確認するSuccess9の(作業の)完了が困難と判断した」と発表した。
着陸船は昨年12月、米宇宙関連企業のスペースXのロケットを使って打ち上げられ、順調に行けば4月26日の午前1時40分ごろ(日本時間)、月面に着陸する予定だった。成功すれば民間企業としては世界で初めての快挙だった。
同社によると、着陸の直前までは着陸船と地上管制室の間で通信のやり取りができていた。しかし、その後は通信が途絶え、着陸予定時刻を過ぎても着陸を示すデータを確認できなくなった。
推進燃料の推定残量が無くなったことや急速な降下速度の上昇がデータ上、確認されているため、同社は着陸船が月面へ激しく衝突する「ハードランディング」をした可能性が高いと推察している。
着陸船は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したロボットなどを搭載していた。無事に着陸すれば、月面のデータ収集が進むと期待されていた。
同社は24年に2回目、25年に3回目を予定している着陸船の打ち上げ計画に変更はないと強調。今回のトラブルの経験を次の打ち上げに向けた技術開発に生かしていく意向を明示した。
東京都内で同日記者会見した同社の袴田武史CEO(最高経営責任者)は「次に向けた大きな、大きな一歩だと考えている」と前向きな見方を示した。
(藤原秀行)