地権者への契約意思確認せず
日本郵便は4月26日、郵便局局舎の移転や建て替えの際、担当社員が地権者の意向を確認していなかったにも関わらず、確認したと虚偽の報告をするなど社内の手続きを順守していなかったケースが103件あったとの調査結果を発表した。
責任を明確化するため、本社担当役員や支社長ら関係者73人を処分した。
同社によると、局舎の移転・建て替えの際、地権者が日本郵便との直接取引を望まないなどやむを得ない場合に限り、日本郵便の郵便局長らが条件に合った土地を見つけ、局舎を自費で建てた上で日本郵便に貸し出せる制度を設けている。その場合は公平性を担保するため、取締役会の決議などを経るよう設定している。
同社内のルールでは、郵便局長らの物件が最良で他に選択肢がないことを確認するため、担当社員が関係する地権者に日本郵便と直接賃貸契約をする意思がないかどうか尋ねるよう定めている。
しかし、同制度を導入した2016年度以降の287件のケースを調べたところ、局舎の選定や契約の担当者が実際には地権者に意思を尋ねていなかったにもかかわらず、契約する意思がないと確認したと虚偽の報告をしていたのが103件あった。担当者が関係する事務が煩雑になるのを嫌がったり、局長が自身で局舎を所有したいという意向をくみ取ったりしていたことが理由という。
このうち3件に関しては、地権者側が日本郵便と直接契約する可能性があり、虚偽報告が同社取締役会の決定に影響した可能性があるとみている。ただ、日本郵便はどの局舎の取得に問題があったか具体的な情報は開示していない。
同社は問題の背景として「本社が支社に対して局舎調達手続の趣旨、重要性を十分に伝えきれておらず、その理解が希薄なまま一部の支社担当者が、記録などの体裁を整えることに傾注した。本社は、各支社の手続きの実施状況の把握および適正報告へのけん制が不十分だった」と指摘した。
責任を明確化するため、本社役員4人を報酬減額や厳重注意、部長ら8人を減給や注意、支社長9人を注意、支社社員52人を戒告や注意の処分とした。
同社は再発防止策として、社員らからの局舎調達は最良で他に選択肢がない場合が条件と明確にし、地権者への意向確認の詳細化、関係社員への個別説明の明文化などを進める方針。
今回の不適切取引に関しては、朝日新聞が2021年、最初に報道して発覚。当初、日本郵便は社内調査結果を公表しない意向を示していたが、今年2月に松本剛明総務相が「国民に理解されるよう説明責任を果たしてほしい」と苦言を呈していた。
(藤原秀行)