三菱ふそう・日野統合会見概要(後編)
ダイムラートラックと三菱ふそうトラック・バス、トヨタ自動車、日野自動車が5月30日、東京都内で開いた記者会見の発言概要の後編は以下の通り。
会見に臨む(左から)日野自動車・小木曽聡社長CEO(最高経営責任者)、トヨタ自動車・佐藤恒治社長CEO、ダイムラートラック マーティン・ダウムCEO、三菱ふそうトラック・バス カール・デッペン社長CEO
▼質疑応答
(4社協業に至った経緯)
トヨタ自動車・佐藤恒治社長CEO
「カーボンニュートラルやCASE技術普及に向け、多様な選択肢を実現していく流れの中で、さまざまな方と議論を進めていた。水素やCASE技術の浸透には大きな連携が必要だと昨年、ダイムラートラックのダウムCEOからも話をいただいた。大きなスコープで何かできないか、話し合いを重ねていく中で今回の統合も含め、4社の連携による、さらなる世界的規模での競争力強化となった」
ダイムラートラック マーティン・ダウムCEO
「最初に、将来のビジョンを考えた際に共通点があった。技術開発を強化するには(企業の)スケールを拡大する必要がある。4社が連携することで、カーボンニュートラルを進める上で最も必要な水素の利用も促進できる」
(いすず自動車との資本提携、CJPT)
トヨタ・佐藤社長CEO
「いすゞとの協業は今後も続けていく。CJPTの枠組みは非常に大きな意味合いを持っている。CASEには規格や規模、インフラなどに多面的に取り組んでいく必要がある。CJPTのフレームワークを生かしながら、積極的かつ能動的な行動を続け、実際の取り組みはそれぞれのプロジェクトベースで連携を取りながら、具体化していくスピードを速めていきたい。いすゞも含めた大きな連携を実現し、CASEの普及加速につなげていく」
(統合の効果)
三菱ふそうトラック・バス カール・デッペンCEO
「三菱ふそうと日野は2社とも東南アジアで良いポジションを作っており、補完的な協力ができると思っている。2社はこの地域で強いブランドを持ち、販売網もサービス網も強いものを持っている。強い2社が組むことで、補完しながら競争の厳しいアジアで戦っていけると思う。東南アジアのカーボンニュートラルにも貢献できる」
日野自動車・小木曽聡社長CEO
「カーボンニュートラルを実現するための水素や燃料電池、内燃機関、合成燃料などへの対応はいろいろ検討しているが、個社では難しい。100年に一度の大きな変革期に、三菱ふそうと日野が同じ志を持ち、さらに4社で枠組みを作り、カーボンニュートラルを実現していきたい」
(統合会社の概要)
トヨタ・佐藤社長CEO
「持ち株会社は上場し、三菱ふそうと日野が100%子会社として収まる。新会社の下で開発から調達、生産までの過程で統合のメリットを発揮していきたい。中大型の商用車の国内シェアは日野と三菱ふそうで、いすゞとUDトラックスを合わせたものと同等のレベルになる」
ダイムラートラック・ダウムCEO
「数カ月前から話し合ってきた。三菱ふそうと日野は成功したブランドであり、明確に2つの別個のブランドを維持していきたい。最大限シナジーを実現するということで、持ち株会社の下で開発、調達、生産を共有したい。そうすることで商用車メーカーとして国内最強になる。持ち株会社は日本で上場する」
持ち株会社の概要
(日野の認証不正)
日野・小木曽社長CEO
「問題に向き合い、皆様に信頼していただけるよう(再発防止や企業体質改善を)進めているが、まだ全て終わったわけではない。世の中に(変わったと)認めていただけるよう、今後も徹底的に続ける。カーボンニュートラルなどにしっかり対応するためにも、問題に対して1つ1つ丁寧に対応していく」
(持ち株会社にした理由)
トヨタ・佐藤社長
「三菱ふそうと日野両社のさらなる成長を描くには、より大きな協力が必要。トヨタやダイムラートラックが持っている技術もあり、それぞれの強みを持ち寄れることができる体制として持ち株会社を選択した」
(CJPT)
三菱ふそう・デッペン社長CEO
「CJPTに関しては長い間、非常に重要な取り組みだということで観察してきた。三菱ふそうが加わるかどうかについて、結論を出すにはまだ時期尚早だと思う。将来のためにいいソリューションをつくろうというのが根底にあるので、いい方向に行くと思っている」
トヨタ・佐藤社長CEO
「CJPTはCASE技術普及への大きな枠組み、規格を具体化していくスピードを上げていこうということでパートナーが集まった1つの形。プロジェクトごとにパートナーが柔軟に連携している。もし、そういうオポチュニティがあれば当然ウェルカムだ」
(トヨタが主要な商用車メーカーの全てと資本連携する理由)
トヨタ・佐藤社長CEO
「繰り返し申し上げている通り、未来はみんなで作るもの、というところに尽きる。自動車産業が向かい合っていく未来は1社でどうこうできるものではない」
(藤原秀行)