大和ハウス、ASEANで低温物流事業に参入

大和ハウス、ASEANで低温物流事業に参入

シンガポールの企業買収、コールドチェーン拡大図る

大和ハウス工業は6月1日、シンガポールで低温物流事業を手掛けているStorbest Holdings(ストーベスト・ホールディングス)を買収したと発表した。

具体的な株式の取得比率や取得額は開示していない。

大和ハウスは創業以来、工業化建築のパイオニアとして3000棟以上の物流倉庫を開発してきた。2002年には物流施設の設計・施工にとどまらず、物流最適地の提案から維持管理に至るまで顧客の事業スキームに合わせた専用の物流施設をコーディネートする独自の物流プロジェクト「Dプロジェクト」を開始。不動産や金融など各分野のパートナーを組み合わせ、自社保有・ノンアセット・不動産流動化など物流不動産ソリューションを展開している。

事業エリアは海外にも拡大しており、ASEAN(東南アジア諸国連合)はベトナム・インドネシアで冷凍冷蔵機能を備えた物流施設の建設など、現在までに9棟の物流施設を建設し、今後も開発と機能の拡充を計画している。

物流領域では併せて、グループの大和物流が建材やアパレル、ECを中心とした物流サービスを担うとともに、冷凍・冷蔵・定温・常温の4温度帯共同配送システムを有する若松梱包運輸倉庫と、3温度帯の保管・配送に高いノウハウを持つ神山運輸社が、食品を中心とした低温物流事業を展開している。

さらに踏み込み、成長市場のASEANで低温物流事業に参入する足掛かりとして、ストーベストの買収を決めた。

シンガポールをはじめとするASEAN各国では人口増加や食生活の多様化などを背景に、コールドチェーン物流の需要が高まっている。ストーベストを傘下に収め、近隣諸国で品質の高い物流サービスを展開するとともに、大和ハウスグループが日本国内に構築したコールドチェーン物流網や日系の顧客基盤と連携させることで、国際物流サービスの拡大を図る。

ストーベストは1997年2月に創業。シンガポールで低温物流事業を26年間継続してきたことによる豊富なノウハウと強固な顧客リレーションを確立している。

現在はシンガポール国内に合計2万7000パレットの4温度帯低温物流施設を運営しており、冷凍冷蔵トラックやプライム・ムーバーを含む運送自動車を多数保有している。シンガポールのスーパーマーケットや食品小売業、ホテルなど400社以上の顧客に、通関手配、各種フォワーディング業務、保管業務、付加価値業務(仕分け、小口分け、ラベリング、パッキング、再パッキング業務)や冷凍冷蔵トラックによる輸配送業務まで、ワンストップで円滑なSCM運営を実現している。


ストーベストの4温度帯低温物流倉庫と車両


ストーベストの低温物流におけるワンストップサプライチェーンマネジメントソリューション(いずれも大和ハウス工業提供)

今後は大和ハウスグループが持つ物流ノウハウや顧客ネットワーク、IoT・オートメーション技術などの事業基盤を最大限活用し、ストーベストの施設運営能力強化を進めるとともに、成長著しいASEAN市場のハブとして機能しているシンガポールの戦略的なロケーションを活用し、近隣諸国への事業展開を加速させたい考え。

株式取得の概要
Storbest 社の概要

名 称 Storbest Holdings Pte. Ltd.*(ストーベストホールディング社)
所 在 地 531 Upper Cross Street 03-58 Hong Lim Complex, Singapore
代表者の役職・氏名 Collin Phua(CEO)
事業内容 独立系ワンストップ低温物流ソリューションの提供
設立年月日 2004 年 11 月 25 日

* Storbest 社は同グループ子会社の主要持株会社

(藤原秀行)

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