「投函ビジネス、日本郵便の真似してもたどり着けないと感じていた」

「投函ビジネス、日本郵便の真似してもたどり着けないと感じていた」

郵政&ヤマトグループ協業発表会見詳報(後編)

――日本郵便は佐川急便とも協業している。その関係はどうなるのか。独占禁止法上、問題はないか。
日本郵便・衣川和秀社長
「今回、ヤマトからお話をいただいて、私ども、ユニバーサルサービスを使命に掲げているので、一緒にやりましょう、やらせてくださいということで、このような提携に至った。佐川は佐川で、従来から(提携を)やらせていただいていて、今いろんな提携関係を深めていて、そちらはそちらでしっかりやらせていただきたい。それから、基本の関係だが、私どももいろんな検討はしているが、特に大きな問題はないと考えている」

――競合とタッグを組まないともう乗り切れない、との判断なのか。
日本郵政・増田社長
「私ども、中期経営ビジョンでも、われわれ日本郵政グループの持っているネットワークを共創プラットフォームと呼んで、ともに創る、従ってぜひ、これからの様々な環境変化の中で、われわれ自身成長を遂げていく上で、他社様としっかりタッグを組んで、それで共創プラットフォームを1つの道具として、成長を遂げていこう、こういう考えを打ち出したところだ。今お話があった通り、佐川とこれまでも関係を深めて、ともに事業を進めているが、今回ヤマトと、従来行っているが、非常に大きな事業で組む。成長に大きく資するということと同時に、今目の前にある2024年問題、あるいは環境問題を乗り切って、社会的な使命を果たしていく上でも、有効な取り組みと考えたところだ」

「われわれとしてはできるだけ資源を、一番それぞれ強みを持っているところを、その事業主体が生かして取り組みをしていく、従って先ほど話があった通り、ヤマトさんはやはり、冷蔵のそういうものに大変強みを持っておられて、そして、お客様、あるいはDXの分野でも大変素晴らしい取り組みをしておられる。われわれは薄型、小型の荷物などを配る上で、8万2000台の2輪と、3万台の軽4輪を持っていて、環境問題もクリアしながら非常にきめ細かく配ることが可能になるので、そういう強みをうまく掛け合わせることが、これから成長にとっても大変大事だと判断した。従って、こういう取り組みは考え方とすれば、これからもいろいろな可能性はあり得ると考えている」


ヤマトHD・長尾社長(日本郵政提供)

――協業でヤマトの協力会社はどうなるのか。
ヤマトHD・長尾社長
「当社はこの投函のビジネスに対して参画いただいている事業者の方々を含め、個人事業主の方々もいらっしゃる。先ほど申し上げたように、これから2年間かけて順次、移管していく。タイミングに合わせて、当社からその業務がなくなっていく形になるので、まさにその方々の次のキャリアをどうするかということへのサポートに全力で推進していくということが当社にとっても大事だと考えており、そこは丁寧に進めたい」

――少し前までメルカリ向けにネコポスサービスを頑張っていて、日本郵便の取り扱いが減ったのはヤマトが頑張ったということもあったから。そこから見直しに至った背景は?
ヤマトHD・長尾社長
「目の前、足元のお話を申し上げているつもりはあまりなくて、やはりこれから長い目でわれわれのビジネスを見ていく中で、やはりさまざまな領域、成長していくものもあれば、シュリンクしていくものもあろうかと思う。その中で、われわれの経営資源を、もう少し中期的に見た時に、どこに振り向けていくべきかということを考えていくと、やはりどこかのタイミングで、ベストなチョイスはすべきなんだろうなと考えている。まさに今、物流の2024年問題がクローズアップされているこのタイミングで、こういう意思決定ができたというのは、ある意味、タイミングとしてもしかるべきだったなと考えている」

――オペレーションの構造改革に影響するところもあると思うが、日本郵便と連携するところはあるのか。
ヤマト運輸・鹿妻専務執行役員
「連携するところという意味であれば、今後の展開の可能性でいろんなところがあると思う。構造改革のところで言えば、構造改革に寄れるだけのいい影響があるかというところだが、やはり今の既存の施設の中では、2つのことをやっている。箱の作業と投函の作業。仕分けも別だし、配送組みも別。なので、1つの屋根の下で2つの作業をやっているということなので、そういう意味だとシフトの体制とか、いろいろな対応ということであると、すごく簡素化されて、現場はすごくやりやすい形が作れているのかなと思っているので、オペレーション的には構造改革ということでやると、すごくプラスの影響が出ていると思う。それプラス展開の可能性ということで、これから例えば、冷凍・冷蔵の話であるとか、あるいは今回の商品のところのポストの利用であるとか、そういうところも含めると、非常にいろんな意味で、今、日本に存在するリソースをすごく有効に活用するというところでは、非常にみんなにとってはいいことなのかなと思っている。非常にプラスだと思っている」

――今までサービスクオリティを競い合ってきた日本郵便のサービスをどう見ていたか。業務を託す相手として今どう見ているか。
ヤマトHD・長尾社長
「当社の強みとするところは、ご承知の通りラストワンマイル領域で、かつ宅配としての箱の領域だと理解している。片や、日本郵便が保有している、ポストに投函するビジネスの精度の高さや、作業の安定性だったり、この辺りは正直申し上げて、当社が一生懸命まねしてもなかなかたどり着けない領域だなというのは常々、オペレーションをやりながら感じていたところだ。まさに投函領域の見本とすべきお相手とご一緒できるというのは、非常に強い安心感を持って、当社としては受け止めている。非常に期待をしている」

(藤原秀行、安藤照乃)

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