船級認証と最新設備で安全性担保
日本郵船は7月5日、保有する洋上風力向け作業員輸送船(CTV)「RERA AS」(レラアシ)が、北海道の石狩湾新港で洋上風力発電設備の建設・運転・保守を行う世界的な風力タービンメーカーSiemens Gamesa(シーメンスガメサ)と日本郵船の定期傭船契約に基づき、7月5日に同港でシーメンスガメサへの引き渡しが完了したと発表した。
今後、本船は日本郵船グループの北洋海運がシーメンスガメサとの契約に基づき、船舶管理と運航を担当、保守作業に関わる作業員輸送を7月中に開始する。本船は日本郵船グループとして保有・運航する初のCTVで、日本国内で現在運航中のCTVの中では最大の総トン数を備えているという。
本船は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)から、国際基準の船舶安全管理システムを構築したことを示すISMコード認証とともに、作業員の安全な輸送に必要な設備やマニュアルを完備したことを認めるノーテーション「Wind Farm Support Vessel – Crew Transfer Vessel (WFSV-CTV)」を国内のCTVとして初めて取得済み。
本船は4月にシンガポールで竣工し、日本郵船グループの京浜ドックの追浜工場(神奈川)を拠点に、フェンダー(クッション材)や無線機器など設備の換装・検査を経て日本籍船に変更した。日本郵船が提携する欧州最大手のCTV運航船社の1つ、Northern Offshore Group AB(NOG)の子会社Northern Offshore Service(NOS、スウェーデン)から技術・営業面でサポートを受け、6月からはNOSが派遣した船長の指導の下、北海道内で操船・座学などの教育訓練を重ねている。
本船は6月27日に石狩湾新港に到着した。
日本郵船グループは本事業を足掛かりとして、今後拡大が見込まれる日本の洋上風力発電事業で存在感を発揮していきたい考え。
本船は英国の船舶用機器メーカーReygar(レイガー)のCTVに特化した運航モニタリングシステム「BareFLEET」を日本で初めて採用した。本船の動静や燃料消費量、機器の状態などのデータを総合的に収集・分析し、船内と陸上で確認することが可能になる。
本船は海上でも「途切れない通信」環境の実現に向け、スカパーJSAT、NTTワールドエンジニアリングマリンの両社が提供する高速インターネットサービスを国内で初めて導入した。陸地に近いエリアでは4G通信、離れた海域では高速衛星通信の利用が可能で、船員の業務環境や福利厚生の向上に寄与できると見込む。
本船にはNOGが欧州の過酷な海域で運航するCTVで採用しているものと同型のフェンダーを搭載。フェンダーは本船が風車の支柱に船体を押し付ける際に摩擦力を増加させ、船体を安定させる効果があり、作業員の移乗時の安定性を高め、安全な作業員輸送に直結すると想定している。
石狩湾新港に入港する「RERA AS」
「RERA AS」に搭載されたフェンダー
本船概要
全長:27.10メートル
型幅: 9.00メートル
総トン数: 138トン
乗客定員数:12名
建造造船所:PT Kim Seah Shipyard Indonesia (Penguin Shipyard International子会社)
(藤原秀行)※いずれも日本郵船提供