バリューチェーン全体カバー、課題解決へ包括的なアプローチ目指す
セイノーホールディングス(HD)は7月11日、アンカーLPを務める投資ファンド「Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合(LIF)」を承継した新ファンド「Value Chain Innovation Fund(VIF)」を70億円で設立、運用を開始したと発表した。
スタートアップ2社とベンチャーキャピタル1社に投資した。他にも1件について投資の意思決定を済ませている。具体的な社名は開示していない。
セイノーHDなどは2019年12月、物流業界でイノベーション創出を促進するため、セイノーHDをアンカーLP(リミテッドパートナー)、ベンチャーキャピタルのSpiral Innovation Partners(スパイラル・イノベーション・パートナーズ)をGP(ゼネラルパートナー)としてLIFを設立。スタートアップへの投資に取り組んできた。
その後、人手不足などの課題解決には物流領域にとどまらず、バリューチェーン全体をカバーする必要があると判断。承継ファンドのVIFの組成に踏み切った。
VIFは引き続き、物流領域を投資対象の中心に置いた上で、川上・川下にも投資領域を拡大。現状の課題に対してより広範で包括的なアプローチを取ることを目指す。セイノーHDとスパイラルは他の投資家からも資金を募り、VIFの規模を100億円まで拡大したい考え。
6月30日のファンド設立記念撮影。前列左から岡洋氏(Spiral Innovation Partners代表パートナー)、奥野友和氏(Spiral Capital代表パートナー)、田口義隆氏(セイノーHD代表取締役社長)、河合秀治氏(セイノーHDオープンイノベーション推進室室長)
後列左から松本泰拓氏(Spiral Innovation Partnersプリンシパル)、前田信一郎氏(Spiral Innovation Partnersシニアアソシエイト)、鎌田和博氏(Spiral Innovation Partnersパートナー)、髙橋一馬氏(セイノーHDオープンイノベーション推進室主任)、山根彰夫氏(セイノーHDオープンイノベーション推進室課長)
VIFにおける投資領域のイメージ
ファンド名 |
Valuechain Innovation Fund 投資事業有限責任組合
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無限責任組合員(GP) | Spiral Innovation Partners LLP |
有限責任組合員(LP) |
セイノーホールディングス株式会社(アンカーLP)
金融機関(予定)
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ファンド規模 | 100億円(予定) |
投資領域 |
物流周辺領域を中心としつつ、荷主企業のバリューチェーン全体への
価値提供を行うスタートアップ
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投資ステージ | アーリーステージ中心に投資 |
投資ポートフォリオ | 個別企業投資、一部FoF(Fund of Funds)投資 |
ホームページURL | https://seinocvc.com/vif |
Logistics Innovation Fundについて
Spiral Innovation Partners が手掛けるSector-focused Venture Capital(特定の領域に絞り込んだファンド)の第1弾として組成。物流周辺領域のスタートアップへの投資をメーンとしており、投資テーマは①物流周辺領域における新たなプラットフォーム②既存物流業務のプロセス改善③物流オペレーション領域の拡大――と設定。設立から現在までに個別企業投資は17件、FoF(複数のファンドなど向け)投資は5件それぞれ実行済みで、新規の組み入れを完了した。
Logistics Innovation Fundの主な協業実績
①物流周辺領域における新たなプラットフォーム構築(オープンロジ)
・関東運輸等の拠点をオープンロジの倉庫ネットワークに追加
・両社でEC事業を行うクライアントへの共同提案を行いオープンロジのシステムを活用した
フルフィルメント案件を獲得
②既存物流業務のプロセス改善(エアロネクスト)
・セイノーHDラストワンマイル推進チームと密に連携
・共同で新たな配送ソリューション「SkyHub®」を立ち上げ、他社が踏み込めていない
「ドローンを活用した新スマート物流事業」へ参入
・複数の地方自治体と「内閣官房 デジタル田園都市国家構想」における連携協定を締結済み
③物流オペレーション領域の拡大(ミナカラ)
・西濃運輸の拠点に「ミナカラ薬局」を立ち上げ、医薬品のサプライチェーン短縮に取り組み、
医薬品ECにおける配送時間の短縮を実現
(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用