【独自】物流施設関連の政策要望、「2024年問題」考慮しトラックドライバー用設備導入への支援訴え

【独自】物流施設関連の政策要望、「2024年問題」考慮しトラックドライバー用設備導入への支援訴え

不動産協会、冷凍冷蔵倉庫や危険物倉庫も開発促進へ諸制度整備求める

主要な不動産会社などが参加する業界団体の不動産協会は7月24日の理事会で、政府に対する2023年度の不動産分野の政策要望を取りまとめた。物流施設の関連部分は例年通り、主な物流施設デベロッパー20社以上で構成する同協会内の専門組織「物流事業委員会」が中心となって検討した。

政策要望は、22年度と同じく「物流が直面する課題の解決に、デベロッパーの立場から貢献するため、人・環境・社会にやさしい物流施設の供給を行う」との理念を設定。「強い物流・新しい物流を支える」「SDGs(国連の持続可能な開発目標)を推進する」「地域に貢献する」の3点ごとに、要望を列挙している。

その一環として、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴い物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」を考慮し、初めて自動運転トラックの実用化を見据えた「中継物流拠点」の整備やトラックドライバーの働き方改革を促進する必要性に言及。

具体策として、自動運転トラックの受け入れが容易な高速道路IC直結の物流不動産の整備支援、待機スペースや専用休憩室といったトラックドライバー用設備の導入に対する支援措置創設などを求めている。

また、老朽化施設の機能更新を促進するため、物流施設の建て替えを容易にする諸制度の創設・拡充も訴えている。近年ニーズが高まっている冷凍冷蔵倉庫や危険物倉庫についても、独立して新設を促進するための支援制度創設・拡充など諸制度の整備を要望している。

22年度の政策要望よりも一段と、物流業界が抱える課題の解決に不動産領域からアプローチしていこうとする姿勢を強めている印象だ。不動産協会は今後、国土交通省など関係機関と調整を進め、盛り込んだ要望の実現を目指していく構え。


危険物倉庫の整備を重視(イメージ)

「関東大震災100年」を重視

政策要望は、各項目に共通する基本的な問題意識として「物流不動産を念頭に置いた規制・制度体系が不十分」と指摘。「老朽化施設の更新」「防災性の向上・BCP対応」「自動化・機械化・効率化対応」「ワーカーに配慮した物流施設」「GX(グリーントランスフォーメーション)に配慮した物流施設」「地域との共生」の6点ごとに具体策を整理している。「GXへの配慮」は23年度、新たに取り入れた。

まず、老朽化施設の更新は、防災・避難施設として機能させることができたり、ランプウェイや敷地内トラック待機場を整備することで周辺の待機車両解消を図ったりするような、周辺環境の改善に寄与する物流施設への支援措置(容積率割り増しなど)を創設するほか、東京臨海部における「国際競争流通業務拠点整備事業」への支援拡充(容積率割り増しなど)を表明。

特に冷凍・冷蔵倉庫については、脱フロン・脱炭素化推進事業の補助率拡充と要件緩和(通年受け付け、新築案件も利用容易に、など)、動物検疫所を臨港地区に隣接するエリアでも建設可能にするよう制度拡充、冷凍設備の日常点検の頻度・点検項目の緩和といった項目をそろえている。

防災・BCPの面では、1923年9月に発生した関東大震災から間もなく100年を迎えることを控え、「自然災害が激甚化・頻発化する中、物流機能の社会的影響も鑑みた対応が必須」と明言。併せて、ECの利用拡大などで近年ニーズが高まっている危険物倉庫について、不足と安全性確保が急務との認識を示した。

具体策として、政府が進めてきた「災害時拠点強靭化緊急促進事業」や「一時避難場所緊急促進事業」の延長と補助率拡大、緊急輸送道路や重要物流道路に面したり医薬品や支援物資を保管したりする倉庫を対象とした免震設備設置への支援措置、免震構造建築物の大臣認定手続きの審査機関縮減などを記している。


物流施設で採用が広がる免震設備(イメージ)

自動化・機械化・効率化については「物流効率化に資する立体自動倉庫の普及が途上」などと意義を強くアピール。その一環として、立体自動倉庫は現行の建築基準法では高さ5mごとに仮想の床があるとして容積率の計算に反映されるため、物流事業者らは5mを超えない機器の導入を迫られ、大型ラックを導入しづらい現状がある点を重視し、この参入の緩和を徹底するよう、22年度までに続いて強く求めている。

加えて、ロボットや自動倉庫など機器類を稼働させるのに不可欠な特別高圧受変電設備に対し、電気主任技術者の常駐・専任規制を緩和することも要請。今後、電気主任技術者は大きく不足することが見込まれており、現行規制のままでは特別高圧受変電設備の導入に支障をきたす恐れがある点を懸念している。

物効法の適用増へ立地要件緩和を

物流総合効率化法は物流不動産に対して適用がまだ少ないことを考慮し、同法の立地要件を現状の「高速IC周辺5km」から拡大するよう要請している。トラックバース予約システムなどの物流DXや標準化に貢献できるシステム・設備の導入支援措置も打ち出している。

ワーカーへの配慮は、中継物流拠点開発を後押しするため、高速IC直結型の整備支援策を講じることや、地域未来投資促進法に基づく支援措置に則った「市街化調整区域の開発許可の手続きに対する配慮」の対象要件を緩和し、物流不動産も含めるようにすることなどを列挙している。

GXへの配慮は、太陽光発電設備や次世代トラックの普及促進などを重視。太陽光発電設備の設置部分やトラック待機スペース、地域住民にも開放している敷地内公園をそれぞれ物流施設の緑地面積に参入できるようにしたり、「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」を使いやすくするよう、交付決定前の工事や複数年度の工事も要件に加えたりすることを提案している。22年度と同様、EV(電気自動車)充電インフラ設備(急速充電器)の設置支援などにも触れている。

地域との共生は、敷地内に住民が利用できる公園や緑地、防災広場を作った場合の支援などを取り入れており、22年度までのスタンスを堅持している。

(藤原秀行)

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