インボイス制度、「業務負担増えるから発行事業者に登録せず」は運輸・輸送業が最多

インボイス制度、「業務負担増えるから発行事業者に登録せず」は運輸・輸送業が最多

エヌエヌ生保が中小企業経営者の意識調査、「具体的内容まで知っている」は全体の2割にとどまる

オランダに本拠を置く外資系のエヌエヌ生命保険は8月17日、今年10月に始まるインボイス(適格請求書)制度の準備状況に関する全国の中小企業経営者の意識調査結果を公表した。

調査は従業員300人未満の企業の「会社経営者(社長、会長、取締役)」または「従業員のいる自営業者」を中小企業経営者と定義。7月中旬に7225人を対象に実施した。

その結果、インボイス制度について「具体的な内容まで知っている」中小企業経営者は23.9%にとどまり、5.1%が「全く知らない」と回答。約4人に1人が適格請求書発行事業者として登録しない予定になっていることが明らかになった。

適格請求書発行事業者へ登録していない理由は「業務負担が増えるから」や「対応できる人材がいないから」の回答が目立ち、「業務負担が増えるから」の業種別の回答率は運送・輸送業(56.3%)が最多だった。

【調査概要】
調査対象:日本全国の中小企業経営者
※従業員300名未満の規模の会社経営者(社長、会長、取締役)または従業員のいる自営業者
サンプル:全国7,225名
調査方法:インターネット調査
調査会社:株式会社マクロミル
実施時期:2023年7月14~18日
※回答結果はパーセント表示で、小数点以下第2位を四捨五入して算出しているため、各回答の合計が100%にならない場合がある
※上位5業種の算出には小数点第3位以下を含めた数値を反映している

インボイス制度についてどの程度知っているか聞いたところ、「概要を知っている」は43.8%、「名前は聞いたことがある」は27.2%で、「具体的な内容まで知っている」は23.9%にとどまった。「全く知らない」も5.1%あった。制度開始が近いにもかかわらず、内容を理解できている経営者は決して多いとは言えない状況がうかがえた。

インボイス発行のために「適格請求書発行事業者」として登録しているかどうかについては、「登録している」が41.4%、「制度開始までに登録予定」が11.1%と、10月からの制度開始までに半数近くが登録することが判明。一方、24.7%が「登録する予定はない」と答えた。

各項目の回答率を業種別に見ると、「登録している」は「出版・印刷関連産業」(69.1%)、「登録する予定はない」は「病院・医療機関・福祉業」(54.0%)が最も高い割合となった。

適格請求書発行事業者として「登録している」「制度開始までに登録予定」と回答した3794人に登録する理由を尋ねた結果、「登録した方がメリットが大きいと思うから」(42.5%)が最多で、「取引を打ち切られる可能性があるから」(33.4%)、「新規の取引を敬遠される可能性があるから」(26.8%)と続いた。取引への影響に関する項目が上位を占めた。

各項目の回答率を業種別に見ると、「取引を打ち切られる可能性があるから」は「出版・印刷関連産業」(53.7%)、「新規の取引を敬遠される可能性があるから」は「電気・ガス・熱供給・水道業」(41.3%)、「売上が減ってしまう可能性があるから」は「飲食店」(26.2%)がトップだった。

適格請求書発行事業者として「登録する予定はない」「検討中」と回答した2648人にその理由を聞くと、首位は「登録しない方がメリットが大きいと思うから」(32.4%)で、次いで「業務負担が増えるから」(26.8%)、「対応できる人材がいないから」(18.1%)となった。また、「制度の内容や手続き方法が分からないから」という回答が16.6%で、エヌエヌ生命保険は「制度に対応できる人材が居らず手続き方法が分からないことも登録していない理由の一つだと考えられる」と説明している。

さらに、業務負担が増えるから適格請求書発行事業者に登録していないという業種別の回答率は「運送・輸送業」(56.3%)の割合が最も高かった。

中小企業経営者7225人に、顧客企業から自身が経営している会社が適格請求書発行事業者として登録したか確認されたか聞いたところ、「はい」は39.2%で、約6割(60.8%)が現時点で確認されていなかった。

インボイス制度に向けて準備していることはあるか聞いたところ、「税理士への相談」(32.4%)や「取引先への説明・交渉」(16.7%)が目立った。半面、「何もしない・何をしたらいいか分からない」は41.4%に上った。

さらに、インボイス制度に向けて導入・改修したシステムはあるか聞いたところ、75.4%が「特にない」を選択。導入・改修したシステムで最も多かったのは「経理・会計システム」で20.2%だった。

中小企業経営者7225人に、仕入れ先の適格請求書発行事業者への登録状況を確認したか聞いたところ、54.9%が「いいえ」を選び、半数以上が未確認であることが判明した。

仕入れ先に対して適格請求書発行事業者への登録状況を確認したという回答率を業種別に見ると、最も多いのは「製造業(医薬品・化粧品)」(44.4%)で、次いで「卸売・小売業(自動車・輸送機器・金属加工・精密機械)」(39.4%)、「運送・輸送業」(37.2%)となった。

仕入れ先が適格請求書発行事業者ではない場合はどのように対応するか聞いたところ、「これまで通り取引を継続する」という回答が半数近く(45.6%)で、「取引条件の変更を相談する」は2割未満(18.6%)にとどまった。

仕入れ先が適格請求書発行事業者ではない場合も「これまで通り取引を継続する」という回答を業種別に見ると、「製造業(家電・電気機械器具・IT関連)」(54.4%)が最も高い割合となり、「出版・印刷関連産業」(52.9%)、「電気通信業・ソフトウェア・情報サービス業」(51.9%)と続いた。

(藤原秀行)※いずれもエヌエヌ生命保険提供

経営/業界動向カテゴリの最新記事