【独自取材】荷主企業で高まる内航船の常用志向と物流BCP

【独自取材】荷主企業で高まる内航船の常用志向と物流BCP

トラック・鉄道との3輸送モードで安定供給を担保

新年度に入り多くの企業で事業計画が策定・公表される中、ここに来て一部の荷主企業で輸送モードとして内航船を常態的・恒常的な形で運用しようとする動きが見られるもようだ。昨夏に相次いだ自然災害でサプライチェーンが途絶したことを踏まえ、とりわけ消費者の生活に密接な食品や日用雑貨を取り扱うメーカーにその意識が強いと伝えられる。

昨夏は中国地区での西日本豪雨、関西地区で相次いだ大型台風が社会インフラに多くの被害をもたらし、JR貨物や関西国際空港などで稼働に支障を来したことは記憶に新しい。この影響で東日本~西日本、関西~九州、中四国~九州など広範囲にわたって物流がストップする事態となった。

日本では今後も巨大地震・台風・火山など自然災害の発生リスクが高いと予測されているだけに、荷主企業はトラックや鉄道に加えて内航船も常用化した輸送体制でBCP(事業継続計画)対応を強化する狙いがあるようだ。

物流関係筋によると食品や日雑品などの業界で内航船を組み込んだ輸送体制の転換・構築が具体化しているという。ロジビズ・オンラインの取材に応じたメーカー系物流子会社関係者は「製品では納期の調整や配送先の理解が前提になると思うが、製造拠点向けの原材料・資機材などを中心に内航船を活用することで相応のメリットはあるだろう」と展望する。

ただ内航船事業者には昨夏の自然災害以降も多くの引き合いが寄せられているとされる。首都圏の総合物流事業者は「新規で内航船の枠を取ることは容易ではない。トラック運送事業者の中でも(内航船の枠を)持っているところは営業活動でも有利に働く」と指摘。特に北海道や九州など遠方への輸送では「法令順守の観点からも彼らに頼らざるを得ない」と輸送の現場では内航船の存在感が高まっていることを示唆する。

こうした動きについて物流業界の動向に詳しい事情通は「今まで補完的に起用していた内航船を輸送体制に常時組み込むことになれば、オペレーションやリードタイムはもちろんコスト面も考慮しなければならない」と言及。その上で「裏を返せば荷主企業が物流BCPに向けて本格的な対策に乗り出すとともに、安定供給を維持する上で応分のリスクコストを払う必要性があることを明確に認識したともいえるだろう」と分析している。

これまで内航船は船員不足や限られた航路・便数、リードタイムなどの観点からトラックや鉄道の補完・代替、またトラックドライバー不足ならびにCO2削減など社会・環境への配慮を意図した輸送手段と見られてきた。その一方で今年に入り商船三井フェリー、近海郵船が新造船を相次いで投入するなど積極的な展開を見せている。

荷主企業の内航船に対する注目・期待が増すと目される現在、モーダルシフトやグリーン物流といった従来の視点に加えて輸送需給における効果・影響も考察していく必要がありそうだ。

(鳥羽俊一)

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