空港の大規模自然災害対策、国交省がBCP再構築の指針策定へ

空港の大規模自然災害対策、国交省がBCP再構築の指針策定へ

有識者検討委の最終取りまとめ公表

国土交通省は4月10日、有識者による「全国主要空港における大規模自然災害対策に関する検討委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大教授)が進めてきた議論の最終取りまとめを公表した。

昨年9月の台風21号で関西国際空港の滑走路が冠水して機能不全に陥るなど、各地の空港が災害の被害を受けるケースが相次いでいるのを懸念。空港運営者らに対し、これまでに経験したことのないレベルの災害を念頭に置き、全ての関係者が滑走路やターミナルビルなどにどのような被害が生じ、空港の機能や利用者へどのような影響をもたらすかを十分想定する「災害イマジネーション」の重要性を強調した。

その上で、緊急に着手すべき課題として、現場の意思決定者を本部長として全ての空港関係者が参加する「総合対策本部」を置いたり、電源喪失や外部とつながる交通ルートの途絶といった機能ごとの有事対応をあらかじめ想定しておいたりする空港の事業継続計画「A2(Advanced/Airport)-BCP」の再構築を求めた。

特に物流機能については「貨物施設などの被災による影響が長期に及ぶことにも留意」する必要性を指摘した。

国交省は最終取りまとめを基に、各空港が「A2-BCP」の策定や見直しを進める上で参考となるガイドライン(指針)を策定するなど、大規模自然災害の対策を後押しする。

「3日以内に民間機運航可能な状態へ復旧」が目標

最終取りまとめは、現場の意思決定者が全関係者を統括できる災害マネジメント体制を平素から準備しておくことを提言。さらに「地震以外の災害時でも警報解除後など復旧作業が開始でき次第、3日以内に民間航空機の運航が可能となる状態まで空港機能を復旧させることを目標とする」と明記した。羽田、成田など特に重要な空港はさらに短期間でのリカバリーを目指す方向性を示した。

「A2-BCP」策定においては、国の出先機関や警察、地方自治体、交通事業者らと情報共有し、調整を進める機能を重視するよう提言。民間事業者がターミナルの運営などを担っているコンセッション空港は、設置管理者と運営権者の役割を明確化しておくことを要望した。

有事の際に、国交省が空港運用や各種施設の専門的知見・経験を持つ「TEC-FORCE職員」を派遣して現場の意思決定が円滑に行われるようサポートするシナリオも描いた。

ハード面では、電源設備への水密性扉設置、護岸のかさ上げ、滑走路の液状化防止、旅客ターミナルビルの耐震化、非常時の発電設備確保などを各空港で早急に進めるよう強く求めた。

(藤原秀行)

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