ヤマトロジ・小菅社長はグループの各機能と連携した「新3PL」構築へ
ヤマト運輸の栗栖利蔵社長は4月11日、宅配など物流事業の中軸を成す幹線輸送がトラックドライバー不足の深刻化で継続が危ぶまれていることを受け、ダブル連結トラックによる他の運送事業者との共同輸送の拡大を目指す考えを示した。併せて、トラック以外の輸送モードを活用、代替していくことにも意欲を見せた。
ヤマトホールディングス(HD)が東京・大田区の中核施設「羽田クロノゲート」で開いた物流・流通業界メディアとの懇談会で説明した。
栗栖社長は幹線輸送について「今後も厳しい状況にあるのは間違いないと思う。そもそも若い人が(長距離の)ドライバーになろうとしない」と指摘。ダブル連結トラック投入のほか、国やトラックメーカーなどが実現に取り組んでいる高速での隊列走行にも早期の実用化へ期待感を表明した。
意気込みを語る栗栖社長
働き方改革「まだまだやるべきことがある」
栗栖社長は「19年度が現行のグループ中期経営計画の最終年度であり、成果を出していく年だと認識している。宅配便事業と法人向け事業、ネットワークを全体最適で考えていった時にどうあるべきかを、考え方をきちんと整理した上で事業を進めていきたい」と強調。企業向けソリューションの強化へ同じヤマトグループのヤマトロジスティクスなどと連携を深めていく姿勢を鮮明にした。
中計の柱の1つに位置付けている働き方改革の進捗に関しては「全体を平均すれば(就労環境が)良くなってきているとは間違いなく言えると思うが、従業員1人1人で見ていけばまだまだやるべきことがある。単に労働時間だけを見るのではなく仕事のやり方や内容をいかに変えて働きやすい環境をつくっていくことが非常に大事だ」との決意を示した。
今月1日の社長就任に際し、ヤマト運輸社内には社員同士や顧客、協力企業とのコミュニケーションを一層促進することと、経営層や支社長、主管支店長らに3年後、5年後どうあるべきかを考えた上で何をしていくかを意識していくことを求めたと明らかにした。
効率化・省人化の“実験装置”として積極的に取り組む
懇談会に同席したヤマトロジスティクスの小菅泰治社長は「ヤマトグループの総力を結集し、『新3PL』と呼べるサービスを構築できれば、事業の柱になっていけるのではないか」と語り、ヤマトグループが持つデリバリーや保管などの多様な機能と組み合わせて、法人向け事業を差別化していくことに強い意気込みを示した。
中計でも重点的に取り組む事柄の1つに挙げている「アカウントマネジメント」に関連し「1社1社のお客さまに深く入り込み、個々に異なる状況を知り、最適なソリューションを提供していくことに邁進したい。私自身、営業担当者と一緒になってお客さまに向き合っていきたい。法人向け事業の領域では同業他社ももろもろの取り組みをしており、われわれは非常に後発だとの認識をしっかり持った上で土台を作り上げていきたい」と述べた。
併せて、グループの働き方改革に関連し「当社はロジスティクスの会社なので庫内オペレーションの効率化、省人化についてはグループの中でも率先して推進していかなければいけない。いわばその“実験装置”になっていく」と語り、先進的な省人化技術を積極的に活用、成果をグループ全体に波及させていく姿勢を強くアピールした。
3PL事業の差別化への意気込みを語る小菅社長
(藤原秀行)