【現地取材】ALFALINK、「オープンハブ」など新たな物流施設の在り方を形成

【現地取材】ALFALINK、「オープンハブ」など新たな物流施設の在り方を形成

日本GLP・帖佐氏らがイベントで成果強調

日本GLPは10月17日、神奈川県相模原市で開発した大規模物流施設「GLP ALFALINK(サルファリンク)相模原」で、計画していた4棟全てが完成したのを受け、グランドオープンイベントを開催した。

同社の帖佐義之社長は、先進的な物流施設を同一エリアに集中して複数開発し、技術開発や企業間連携を促進するプロジェクト「GLP ALFALINK」の第1弾として展開してきた「GLP ALFALINK相模原」の歩みを回顧。

「これまでにない物流施設を作ろうという思いで長い旅が始まった。われわれの手を離れて、皆様方の手で育てられる段階に来ている」と述べ、入居企業間で物流を共同化したり、新たなビジネスに踏み出したり、地域住民と連携したりといった、ALFALINKのコンセプトに込めている「オープンハブ」(新たなビジネスの創出起点)など新たな物流施設の在り方を形成することができたとの見方を示し、今後のALFALINK開発にも意欲をにじませた。

ALFALINK相模原のプロジェクト全体のコンセプト開発やトータルのブランディングなどを手掛けてきた著名なクリエイティブデザイナー、アートディレクターの佐藤可士和氏は「このプロジェクトは社会に物流施設を開いていくことができた」と意義を強調した。


イベントであいさつする帖佐氏


佐藤氏

テナントや地域住民の自発的な動きを引き出す

帖佐氏はALFALINK相模原に関し、2016年にキャタピラージャパン相模原事業所の跡地約29万5000㎡を取得した当時を振り返り「これだけの土地を一括で買うのに当たり、半分目をつぶって決済した。本当にうまく行くんだろうかという不安の方が大きかった」と語った。

「その時にみんなで集まり、腹をくくったのが、これまでにない物流施設を作ろうということ。なんとも雲をつかむような中で長い旅が始まった。われわれで抱えていた課題観を洗いざらい出して、答えを探しに行こうということになった」と述べた。

さらに、「大きな意味で物流を変えていきたい、大事な社会インフラである物流の大切さをもっと理解してもらいたい、物流業界の方々への敬意をみなさんに持ってもらいたい、業界を盛り上げていきたいとの思いでやっていくうちに少しずつプロジェクトが研ぎ澄まされていった。ある時、うまく歯車が絡み始めた」と明かした。

プロジェクトの展開について「全て読み通り、計算通りにお膳立てされた施設ではなく、皆様方が作り上げたGLP LFALINK相模原だと申し上げられる。既にわれわれの手を離れて、皆様方の手で育ててこられる段階に来ている。この動きはわれわれに止められない。エネルギー、力が普遍的なものになってきた」と説明。ALFALINK相模原が入居テナントや地域住民らの自発的な動きを引き出しているとの見方を示した。

ドイツデザイン評議会「German Design Council」が主催する国際的な建築デザインアワード「ICONIC AWARDS 2023」の建築部門で、GLP ALFALINK相模原が最高位に相当する「Best of Best」を物流施設として世界で初めて受賞したことに触れ、「地域に開かれ、どういうふうに人々の暮らし、入居企業のビジネスに役立っているかというコンセプトが評価されたと聞いて、非常にうれしかった」の思いを吐露。

「皆様があってのALFALINKであり、今後どういうステージが広がっていくか、一傍観者として楽しみにしている」と締めくくった。


約140人が集まったイベント会場

物流施設を社会に開いて理解を得る

佐藤氏は「5年ちょっと前に物流の仕事をやらないかという話が来た。それまではBtoCのブランディングが多かったが、物流は初めてで、当時は再配達の問題など注目が集まっていた。なんとなく自分の中では、大事なインフラ(の改善)にクリエイティブな力で貢献できれば、と思っていた。時代の最先端の仕事が来たと思った」とプロジェクトを引き受けた当時を回顧。

「すごく広大な敷地なので、市民の方々もばかでかいところで、周りが覆われて中で何をやっているか分からないとなると、不安に思ったりするかなと感じた。もし自分が相模原で働いていたら、などとイメージして(プランを)作っていった。そこでオープンハブという、これまであまり中を見せていなかった施設を社会に開いていくことによって、より理解を得ていこうとした」と説明した。

「今は利己的なことだけでやっていっても誰も共感してくれない、やはり利他的なことが非常に重要になっている世の中。まさにプロジェクトはそういう視点で、社会に開いていくことができたと思っている。10年後に10周年でこういうイベントを再び開催した時に、今ここでは想像もできなかったようなことが起きていたら最高だ。ここにおられる皆さんがALFALINKを作っていただけると思うので楽しみにしている」と述べ、テナント企業などの進化の歩みにエールを送った。

イベントには地元相模原市の本村賢太郎市長も登壇し、ALFALINK相模原が物流の変革や地域活性化により寄与できるよう市としても支援を継続していく姿勢をアピールした。

このほか、ALFALINK相模原を活用している大網副社長兼あみあみ事業代表の金坂瑞樹氏、佐川急便営業開発部の吉田誠明部長、佐川グローバルロジスティクスの山本将典社長が帖佐氏とともに、「これからの物流」をテーマにトークセッションを開催。広大な規模を持つALFALINK相模原を利用することで拠点再編・統合や業務集約が可能になるなどと説明した。

西濃運輸相模原支店の宇野靖章支店長とJPロジスティクス相模原物流センターの平川一夫センター長の2人、富士ロジテックホールディングス アルファリンク相模原物流センター長の河合陽之介氏、ヤマト運輸輸配送コントロール部の水谷悦子マネージャー、サンリツ村山事業所長代行の今野郁司氏の3人がそれぞれクロストークに参加。テナント企業による事業連携、地元住民と触れ合うイベントの開催などが事業を進める上でプラスの効果を生み出せていると実態を紹介した。

(藤原秀行)

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