エア・ウォーター、北海道・幌加内町でそば殻原料の低コストバイオコークス製造技術の実証開始

エア・ウォーター、北海道・幌加内町でそば殻原料の低コストバイオコークス製造技術の実証開始

JFE条鋼なども協力、脱炭素に期待

エア・ウォーターは11月27日、北海道幌加内町、きたそらち農業協同組合、JFE条鋼、巴商会と連携し、そば殻を使ってバイオマス燃料を生み出す「幌加内町バイオマス有効活用コンソーシアム」を立ち上げたと発表した。

近畿大学の井田民男教授が開発したバイオマス固体燃料「バイオコークス」の技術普及を目指す。2026年度以降の商用化を念頭に置いている。

北海道庁「ゼロカーボン・イノベーション導入支援事業」補助金に「そば殻を原料に用いた低コストバイオコークス製造技術の実証事業」を応募、11月8日付で採択された。商用化を前提としたバイオコークス実証事業は道内初という。

バイオコークスは原料にあらゆるバイオマスを用いることができる上、密度や圧縮強度が高いため鉄やスラグも溶融できる温度で燃焼させられるため、石炭コークスにも代替できるのが特徴。自然発火、風化、吸湿のリスクが非常に低く、災害用保管燃料にも最適との期待が関係者の間で高まっている。

幌加内町は日本最大のそば作付面積・生産量を誇り、全国1等の格付けを受けたそばのうち96.4%が幌加内町で生産されている。年間2900tを超えるそばを生産、そばの加工に伴いそば殻やそば残渣(未熟種子、茎など)といったバイオマスが町内で大量に発生しているが、処理・再資源化に対する有効な手段がなく、現在は大部分が農業廃棄物や堆肥として処理されている。

一方で、そばの殻をむいた「丸抜き」の製品に対するニーズの高まりを受け、今後さらにそば殻の発生量が拡大すると見込まれている。

2021年度には北海道庁の補助金「エネルギー地産地消事業化モデル支援事業(新エネ有効活用モデル)」を受け、「BIC(バイオコークス)燃料への変換によるそば殻・そば残渣の有効活用」のテーマの下、町内のそば殻とそば残渣を主体に、生ゴミや下水汚泥も加えたバイオマス原料をバイオコークス化し、町内で消費される化石燃料への代替を検討する調査事業を実施。

その結果、そば殻を中心としたバイオコークス化がコスト的に有効でエネルギー利用による脱炭素効果が見込めることが判明したという。

これまでにバイオコークス事業は既存の化石燃料(灯油、天然ガス、A重油、石炭コークスなど)の発熱量当たりの単価に対し、バイオコークスの発熱量当たりの製造単価が高いことが課題だった。製造原価の主な要因はバイオマス原料乾燥用化石燃料のコストが占めている。

さらに、既存のバイオコークは単位時間当たりの製造量を増やすために直径100mm×長さ150~200mmで製造しているため、利用事業者からは石炭コークスや木質チップなどと比べると大き過ぎて取り扱いが難しく、供給装置内で閉塞してしまうトラブルが発生しやすいこと、比表面積が小さく着火性が悪いことなどが指摘されている。

加えて、直径が大きいために中心部と外周部に密度の差が発生し、全体的な均質が図れていない問題も抱えている。商用販売されるバイオコークスの大きさは石炭コークス程度の大きさが望まれている。

本実証事業はバイオコークス技術を利用した実事業を想定し、低コストでバイオコークスを製造するプロセスを実証。まず第1段階で乾燥を必要としない「そば殻」「そば残渣」「籾殻」を原料とし、乾燥プロセスを経由しない製造コストミニマムなバイオコークス製造プロセスを検討する。

次の第2段階では水分を含むバイオマスを原料に製造したバイオコークスの一部を乾燥熱源として使用するバイオコークス製造プロセスを検討する。

加えて、製造するバイオコークスは直径60mm×長さ60mmと石炭コークスと同等の大きさとしながらも、製造能力は1日1tを実現するプロセスを目指す。

さらに、利用実証として本事業で試作したバイオコークスサンプルを用いて、幌加内町公共施設にバイオコークス温水ボイラを設置して温水供給の実証を行い、JFE条鋼豊平製造所の電気炉で石炭コークス代替の実証を進める。


実証事業の概略


実証事業の全体スケジュール

(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用

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