【独自取材】「BTS型で最大限の強みを発揮する」

【独自取材】「BTS型で最大限の強みを発揮する」

プロロジス日本法人20周年・山田社長特別インタビュー(前編)

関連記事:「最適な技術を提案できるデベロッパーに進化する」 プロロジス日本進出20年・山田社長特別インタビュー(後編)

日本の先進的な物流施設開発を常にリードしてきたプロロジスが、日本法人を設立して日本に本格進出してから今年で20年。その間、eコマースの成長などで物流施設に求められる機能は大きく様変わりし、同社が手掛ける案件もさまざまな進化を遂げてきた。

市場は右肩上がりで推移してきたが、首都圏を中心にハイスピードの新規開発が続き、供給過多の懸念がくすぶる。平成が終わりを迎えて新たな時代が始まろうとする中、同社を率いる山田御酒社長に、今後の市場展望と経営方針について尋ねた。特別インタビューの模様を2回に分けて紹介する。


インタビューに応じる山田社長(撮影・中島祐)

既にピークアウトの準備はできている

―物流施設は2019年も積極的な開発が続きそうですが、マーケットをどう展望されますか。

「16年からずっと供給過多と言われてきましたが、16~18年を振り返ってみれば東京の空室率は全体の平均でおおむね10%を下回る水準で推移してきました。大量供給されているスペースは旺盛な需要で安定的に吸収されており、大方の予想よりも健闘しているというのが正しい表現かもしれません。19年に供給が予定されているスペースの半分超で既に契約が済んでいるとも聞きますし、今年もうまく行くのではないかと期待しています」

―プロロジスの手掛ける施設についてはいかがですか。

「現時点で完成してスペースに空きがあるのは埼玉県川越市で三井不動産さんと共同開発した『MFLPプロロジスパーク川越』くらいだと思いますが、そこも半分は入居が確定しており、今年の夏くらいまでには残りの部分が決まればいいかなと思っています。他は出来上がったものは全国いずれの地域でも基本的に全てお客さまが決まっていて、稼働率は非常に高い。今開発中の案件についても想定より早くスペースが埋まっている感じです」

―景気動向については米中貿易摩擦などで先行きの不透明感が増しています。成長減速が現実となれば物流施設開発にも影響が出てきそうです。

「不動産マーケットに関しては物流施設を含めて17~18年と非常に順調で、特に市況はとても好調でした。投資家の期待利回りはかなり下がっており、それは物件の価格が上昇していることを意味しているので、開発する立場としては非常に良いマーケットだったと感じています」

「ただ昨年末から為替や株価が極端な動きを見せていますし、貿易の量が減って物が動くスピードが落ちれば日本の経済も影響を受けるはずですから、いつ何が起きても不思議ではないという状況だとは思います。物流施設に関しても、今後も同じペースでお客さまが次々と出てきてくださるのか、ということに関してははなはだ疑問ですね。間違いなく市場の盛り上がりはピークに達してきているので、いつピークアウトして下がり始めるのかをきちんと見極める必要がある」

「今年中に必ず下がり始めるということではありませんが、いつでもそうした事態が起こり得るとの認識を持って準備を進めておくことが重要でしょう。当社は2年ほど前から準備はできていますから、仮にそうした状況になってもあわてることは全くありません」


プロロジス日本法人20周年のロゴ(同社提供)

開発は積極的かつ慎重に

―開発のペースはどの程度を想定していますか。

「例年と同じく、19年も500億~600億円程度を開発していきたいと思っています。決して開発のボリュームを意図して減らすわけではありません。しかし、何でもかんでも手を出すのではなく、良い場所に良い物流施設を開発したい。積極的ではあるけれども慎重さを失わないということです」

―準備とは、具体的にはかねて進めているBTS型への注力ですか。

「そうですね。プロロジスのグローバル全体でBTS型の比率を高めていこうと話をしていて、日本に関してもお客さまを先に決めた上で開発を始めるという手堅い手法を取り続けています。2年くらい前からそうした方針を打ち出しています。それはつまり、施設のサイズを追うよりも確実にニーズをつかんでいく方を重視するということです」

「BTSはお客さまときちんとお話をしてどのような建物にするか、どのような機能を入れるのか、ニーズを全て押さえた上で全部決定するので時間は掛かりますが、逆に言えば着工までこぎ着けた段階でほとんどプロジェクトは完了したも同然、とも言えます。現状では全体の4割程度となっているBTS型の比率をもう少し上げていきたい」

「ただ、BTS型はマルチテナント型に比べればリスクが少ないですが、どうしてもある程度のサイズが必要になります。2000坪、3000坪といった規模のニーズにBTS型でお応えするのは厳しいので、大規模なマルチテナント型も関東、関西でそれぞれ毎年最低1件ずつくらいは手掛けていきたいところです」

―先日発表した茨城県古河市でBTS型施設5棟を擁するインダストリアルパークを開発する計画もそうした取り組みの一環ですか。

「現地ではフェーズ1として既に3棟が稼働しており、今回開発するのはその隣接地です。以前から用地をお持ちの方に開発のお話をいただいていたのですが、おかげさまで3棟は順調に立ち上げることができたのでフェーズ2に進むことにしました。過去数年間現地でマーケティングを行い、どの程度の需要が存在するかある程度把握していましたので、成功する可能性が十分あると判断しました」

―荷主企業や物流事業者からは需要の変動に対応できるマルチ型を求める声も根強く聞きます。

「マルチ、BTSともに一長一短があります。当社がなぜBTSにより注力しているかといえば、これだけ競争が激しくなるとマルチではなかなか特徴を出すのが難しくなっているからです。今は各社でほぼスペックが一緒になってきましたし、建物の形状も似ていますからロゴマークを見なければどの企業が建設したのか分からないような状況です。そうなると結局、賃料の安さだけで勝負するということになりかねない」

「当社の強みはやはり、お客さまとずっと協議をし、ニーズに合った設計で開発することができる点ですし、そう簡単には新規参入された企業にはまねされないと自負しています。BTSに軸足を少し移していくとは、そうした当社の強みを最大限発揮するということなのです」


茨城県古河市の「プロロジス古河プロジェクト」フェーズ2完成予想図(手前側、プロロジス提供)。奥側は稼働中のフェーズ1。フェーズ2の敷地面積は約17万5200平方メートル※クリックで拡大

施設利用の準備に一から寄り添う

―差別化という意味では、昨年から本格的に開始したコンサルティングも該当しますね。

「おかげさまで今ずいぶんと問い合わせを頂戴しており、具体的に検討しているプロジェクトもいくつか進行しています。お客さまがこんなに強く興味を持たれるとは正直予想していませんでした。当社を信頼していただき、本当にありがたいですね。効率化のニーズがあったことをあらためて実感しています」

「コンサルティングは庫内の最適なレイアウトといった建物の領域にとどまらず、ロボットやマテハン設備の選択、作業フローの見直しなど現場の物流業務にまで踏み込もうとしています。お客さまは人手不足を非常に心配されており、どうすれば庫内の生産性を上げられるかということに大変強い関心をお持ちです。既存の施設に後からさまざまな設備を導入していくケースに加えて、当社の施設を新規でお借りいただくお客さまに、その準備を一から進めていこうというお話も頂いています」

「信頼関係を構築できていなければ、デベロッパーがそこまでお客さまに寄り添い、現場業務の領域まで踏み込んでいくことはなかなかできないでしょう。少なくとも新規で参入されたところには難しいと思います」

―構想はかなり以前から温めていたのですか。

「実は米国で昔、プロロジスは同様のことを手掛けていました。全米のどこに工場を構えていて、製品の最終的な配送先はどこなのか、という情報をお客さまから頂戴できれば、どのエリアに物流施設を置くのがいいのかということを提案できます。米国のプロロジスはこの先も不動産をお客さまに提供しているだけで本当にいいのかという問題意識があり、現在はさまざまなベンチャービジネスと連携や出資を行い、新たなテクノロジーを現場に生かそうと努めています。そうしたバックグラウンドがありますから、日本としても新たなことに取り組みやすいといいますか、取り組んでいかなければならないとの思いを新たにしています」

(藤原秀行)

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