物流関連主要団体・企業の2023年頭所感・あいさつ その2(抜粋・完)
温室効果ガス45%削減に向け、どんな小さな事柄でも実現を
日本郵船・曽我貴也社長
昨年3月初旬に発表した中期経営計画も本年4月から2年目に入ります。北米・欧州・アジアの各地域ならびにインドでもタウンホールミーティングを開催し、私自身も加わって中計の骨子を説明し、質疑応答の機会を持ちました。日本でも経営企画本部が旗振り役となって、各本部で中計策定の準備に関わった執行役員による同様の説明会を開催しています。先日のNYK Group Global Weekでも中計を題材としたワークショップでディスカッションの時間を設け、質疑を受けました。私たちが目指す方向性、そしてそれを実現するためのABCDE-Xそれぞれの意図するものはかなり浸透したと思います。
さらに昨年11月には、NYKグループESGストーリー2023とNYK Group Decarbonization Storyを公表し、ESG経営を実装化していく具体的な道筋とともに、より高い脱炭素目標値を設定し、そのために取り組まねばならないことを整理しました。
とりわけ、温室効果ガス排出削減の中間目標では、スコープ1~2を合わせて2030年で45%というのは、これまでの30%という目標に比べてもかなり大胆な設定です。できること・できそうなことを集積して達成する30%ではなく、45%を達成するためには何をやらねばならないか、それを全てリスト化し、一つ一つ達成していこうという全く逆の発想で取り組もうとしています。営業部門、オペレーション部門、管理部門を問わず、一人一人が考え、どんなに小さな事柄でもリストに加えてそれを実現していく、そんな気構えでしっかりと一緒に取り組んでいきましょう。
また、脱炭素に限らず、皆さん一人一人の業務上の課題や取り組みが、中計でうたっているAXからEXまでの5つのトランスフォーメーションのどこに関わっているのかを確認しながら進めてみて下さい。自身の貢献をよりはっきりと認識できると思います。
建設業界の「2024年問題」に対応
大和ハウス工業・芳井敬一社長
年頭に当たり、皆さんにお伝えしたいことが三点あります。一つ目は「2024 年問題への対応」です。本年4月より建設業にも「残業の上限規制」が適用されます。昨年から、現場で起きている厳しい職場環境の状況や、効率的な働き方に対する意見・アイデアを、社員の皆さんから直接私に寄せていただく場所を設け、また、皆さん個々の時間外労働時間の見える化も実施しています。そして建設現場においては、DXを活用した新しい働き方にも挑戦しています。4月まで待ったなしです。業務実態の把握と抜本的な対策を最優先にお願いします。仕事は一人でしているわけではありません。自分自身の時間管理はもとより、同僚のリードタイムも意識して、業務に励んでください。
二つ目は、私の今年の一文字「伸」です。長く力強く発展していく一年にしたいと思います。また、この「伸」という字が名前に入っている石橋伸康元社長は、在任中の1996~99年当時から、今に通ずる先進的な取り組みを実践しており、環境貢献においても、他社よりもいち早く着手していました。そのおかげもあり2023年度には当社グループ全体での購入電力の100%再生可能エネルギー化を達成する見込みです。さらに、木造・木質建築を重点成長領域に設定し、サーキュラーエコノミーを目指すプロジェクトも始動しています。皆さん一人ひとりが自分事として環境問題を捉え、2050年のカーボンニュートラル実現に向け進んでいきましょう。
三つ目は「新たな挑戦」です。近年、世界情勢や国内の事業環境は大きく変化を続けており、年々そのスピードを増しています。その変化を捉え、新たなチャンスとするために、当社はコーポレート・ベンチャー・キャピタルとして「大和ハウスグループ“将来の夢”ファンド」を創設しました。スタートアップ企業とともに、将来の成長の源泉となる新たな事業創出に向け、本年から本格始動します。皆さんも広い視野・視点で世の中の変化を捉え次のビジネスを創造できるよう、積極的に新たな取り組みに挑戦してください。
最後に、当社において変わらないものは創業の原点である「社会の役に立つ事業の展開」です。この創業者精神を行動の規範とし、当社グループの”将来の夢”(パーパス)「生きる歓びを分かち合える世界の実現」を目指して、「伸」びのある一年にしていきましょう。
地球の恵みを活かしたものづくりと物流サービスを提供し続けよう
ニチレイ・大櫛顕也社長
私たちニチレイグループは、⾧期経営目標「2030年の姿」の実現を目指し、さらなる成⾧を続けていきます。そのためには、ニチレイグループの総合力を発揮し、社会的価値と経済的価値の向上を実現していくことが求められています。皆さんには、昨年制作した企業CMのキーメッセージ、SustainableとTransformationを意識して日々の仕事を進めてください。
1つ目はSustainableです。ニチレイグループの持続的な成⾧を実現するためには、豊かな食生活と健康を支える企業として、社会にどのような価値を提供できるか、それが重要な要素になります。サステナブルな取り組みを推進し、豊かな自然環境や食資源を大切に守りながら、地球の恵みを活かしたものづくりと物流サービスを提供し続けていきましょう。そのために、カーボンニュートラルの実現に向けた再生エネルギーの調達、持続可能な食の調達に向けた環境・人権に配慮したサプライチェーンの構築、グループ横断でのサステナビリティ教育などを引き続き積極的に行っていきます。
2つ目はTransformationです。私たちは人々や社会のニーズを見極め、その時代に必要とされる商品・サービスを生み出し、人々にこころの満足を提供してきました。こうして築き上げたお客様の信頼は、当社の大きな強みになっています。コロナ渦を経て、食の本来持つ機能を超えた、人と人とをつなぐという役割を改めて実感された方もいるのではないでしょうか。このニチレイらしい発想を大切にし、お客様が生活をより豊かに感じていただけるよう、時代に合わせて食と健康のあり方をトランスフォーメーションさせ、新しい価値をつくり続けていきましょう。
ニチレイグループのコールドチェーンは海外にも広がっています。創業以来つないできた冷凍のチカラで、世界のお客様の豊かな食生活と健康を支えていきます。文化的な違いや価値観を尊重し、寄り添いながら、多様なニーズに沿った価値を提供していくことで、地域の人々にとってかけがえのない存在になることを目指していきます。
このためには、社会課題の解決に向けて自分たちはどういう貢献ができるのか、何をすべきか、何をしたいのか、新しい発想で機会を捉え、行動に移してください。多様な人財が働きやすく、活躍できる環境の整備や、様々なアイディア、新しい価値観を認め、チャレンジを促す安全安心な企業文化の醸成にグループ全体で取り組んでいきましょう。
人を惹きつける魅力的な企業グループになる
鈴与・鈴木健一郎社長
人手不足がさらに深刻化する中で、われわれが最も注力すべきことは、人を惹きつける魅力的な企業グループになることです。そして、われわれが身を置く業界がそもそも報われる業界になることを目指していくことです。そのためにWell-beingを追求し続けていきます。
Well-being の実現は、鈴与グループの経営の拠り所である「共生(ともいき)」の精神そのものと言えます。まずは、さらなる賃上げを行い、実質賃金を上げていくことが最優先となります。引き続き働きやすさ、働きがいをより感じることができるように制度面の充実や仕組みの整備、そして企業文化の醸成に取り組んでいきます。
運賃条件改善などでしっかりと利益を確保
第一貨物・米田総一郎社長
昨年は厳しい中ではありましたが、やるべき事はしっかりと取り組めたと思います。本年も厳しいことは多々あるとは思いますが、それに対してもやるべきことをしっかりやっていきましょう。
2024年は辰年。キーワードは「変革(転機)」。これまでの努力が実って夢が叶いやすい年、とのこと。われわれはここ数年にわたり、やるべきことをしっかりやり、努力を積み重ねて来ました。引き続き粘り強く、全事業でコスト構造改革、コストの抑制に取り組みつつ、輸送事業では運賃条件改善・物量の確保・貸切事業の拡大に取り組み、ロジ事業では条件改善や新規拠点での業容拡大に取り組むことで、しっかりと利益を確保していきましょう。
お客様のニーズヒアリングの中から出てきた新規案件に加え、昨年新たに資本業務提携した三菱倉庫とのシナジーも発揮し、総合物流サービス提案力を強化し、業容拡大につなげて行きましょう。2024年3月には中央研修所も竣工稼働します。より一層採用競争力を高めると同時に、離職率の低減につなげましょう。
やるべきことは盛りだくさんですが、昨年の苦労を乗り越え、今年はこれまでの努力を結実させ、V字回復する年にして参りましょう。
安全・安定&効率物流で業界をリード
三菱ケミカル物流・相川幹治社長
われわれのような製造業のサプライチェーンを支える物流会社は、伸びていく産業に積極的にビジネスを展開し成長していかなければなりません。半導体の製造過程では、EL薬品や特殊ガス、レジスト、研磨剤、高純度シリケートなど、さまざまなケミカル品が使われますし、バッテリー材料の多くも、ケミカル品になります。同分野の物流に強くなることは、戦略面、収益面につながりますので、デジタル、EV(電気自動車)/モビリティ関係のケミカル品物流ビジネスを積極的に伸ばして行きましょう。
また、デジタル技術に関わっている会社が注目されているのは、それだけイノベーションが進み、新しい技術が広く普及しているからです。われわれも新しいデジタル技術を十分活用できるようにリスキリングを習慣化して、どんどん新しい技術をビジネスに取り入れていくことが必要です。
皆さんに頑張っていただき、既に約200人の社員がITパスポートを取得、昨年は約70人の方がDX勉強会に参加され、全社的・多角的にDXを推進できる体制が整いつつあります。今年は、この流れをさらに加速、DX推進による業務の効率化・自動化、事故・トラブル削減への活用を広げるとともに、輸送・倉庫実務管理システムの構築の推進を図り、安全・安定&効率物流で業界をリードしていきたいと思います。
一方、安全QAに関しては、トラブル件数の数字を見ると昨年よりは改善がみられるものの、いまだ目標を大きく超えているのが現実で、残念ながら、重大労災もいくつか発生させてしまいました。重大な労災、コンプライアンス問題、環境トラブルの発生は、できる限りゼロに近づけたいと考えておりますので、それに向けた社内・パートナー会社との取り組みをお願いいたします。
最後に、安全・コンプライアンスを徹底すること、ケミカル品物流分野で安全・安定&効率物流を提供するリーディングカンパニーになることは、われわれ一人一人がリスキリングに努め、個々の能力を生かし合い、現場力を高め、業務変革を推進し、さらには、パートナー会社の課題解決を支援し、顧客ニーズをつかみソリューションを提案していくことで、実現が可能になります。みんなで協力し合って、個々人が、そして組織が成長を実感できる1年にしましょう。
(藤原秀行)