羽田事故対策の有識者検討委が初会合、パイロットと管制官への注意喚起システム強化など議題★続報

羽田事故対策の有識者検討委が初会合、パイロットと管制官への注意喚起システム強化など議題★続報

今夏に中間取りまとめ、提言へ

国土交通省は1月19日、羽田空港の滑走路で日本航空(JAL)機と海上保安庁の機体が衝突・炎上した事故を受け、有識者らが抜本的な再発防止策を協議する検討委員会の初会合を同省内で開催した。

検討委はヒューマンエラーの防止技術に詳しい早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科の小松原明哲教授が座長を務め、大学教授ら学識者と定期航空協会、日本航空機操縦士協会が参加。

パイロットと管制官に対する注意喚起システム強化やパイロットと管制官の交信見直しの必要性などについて検討、今年夏ごろをめどに中間取りまとめを策定する予定。

国交省は中間取りまとめの提言内容や事故調査委員会の調査結果を基に、抜本的な再発防止策を講じる。


初会合

初会合の冒頭、斉藤鉄夫国交相は「国交省の総力を挙げて航空の安全・安心対策に取り組んでいく決意だ。ハード、ソフトの両面から議論をお願いしたい。今回のような痛ましい事故を二度と起こさないためにも、忌憚のないご意見を賜りたい」と語った。

小松原座長は「この委員会は現在の管制運用や滑走路誤進入などについてリスク評価を行い、安全性をより一層向上させるための方策について議論することを目的としている。委員の皆様には専門家の立場から忌憚なきご意見をいただきたい」と述べた。


あいさつする斉藤国交相(上)と小松原座長

初会合では、検討委の事務局を務める国交省航空局が主な論点の案を提示。注意喚起システム強化については、管制官の配置や業務分担の見直しの必要性、地上設備によるパイロットへの視覚面からの操縦支援策、航空機側の改良などを列挙した。

交信の見直しは、管制用語の検証、パイロットへの教育訓練、デジタル技術の活用などを挙げた。出席者からは特段、異論は出ず、今後この論点を軸に具体策の検討が進む見通し。具体的には滑走路に設置し照明で誤進入をパイロットに知らせる「ストップバーライト(停止線灯)」の導入拡大、管制官への音声を使った異常警告の仕組み採用などが議題になりそうだ。

航空局によると、出席者からは「目視からレーダー技術をベースとする管制に切り替えるべきではないか」「管制の通常業務の中に自動化システムを取り入れ、リスクを低減する必要がある」「管制官の負荷が高まっている 多くの情報を扱っており、情報の集約化が必要ではないか」といった意見が出たという。

航空局幹部は「管制官の人員が不足しているとは考えていないが、検討の過程・結果で増員や役割分担見直しが必要となれば、われわれとしても検討していきたい」と語った。

国交省では2007年にも空港で滑走路への誤進入が相次ぎ、対策検討会議を開催、08年に対策を取りまとめ、管制官とパイロットの交流促進、視覚的な支援システムの整備などを図ってきた。今回、再び深刻な事故が発生したのを受け、旧来の対策が適切なものだったかや、対策の進捗に問題がなかったかについて検証が強く求められそうだ。

前出の航空局幹部は「(前回の取りまとめから)15年が経過しており、追加的な対策が必要なのは間違いない。(前回取りまとめた)対策が現在でも最適解なのかどうかは分からない。知見を基に検証する必要がある」と話した。

(藤原秀行)

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