帝国データバンク調査、深刻な企業ほど「賃上げ」実施予定目立つ
帝国データバンクは2月26日、企業の人手不足に関する動向調査結果を公表した。
2024年1月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員の人手が不足していると回答した企業の割合は52.6%に達した。前年比0.9ポイント上昇した。業種別では、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」が77.0%でトップとなり、過去最高を更新。「2024年問題」が懸念されている建設/物流/医療業はそれぞれ約7割と高率を記録した。
非正社員の人手不足割合は29.9%で前年同月から1.1ポイント減少したものの、水準自体は高さが目立った。
正社員が「不足」と感じている企業は、1月としてはこれまで最も高かった2019年(53.0%)に次ぐレベルに到達した。
「2024年問題」を抱える建設/物流/医療業の3業種は、正社員で物流業(道路貨物運送業)が72.0%、医療業が71.0%、建設業が69.2%でそれぞれ人手不足を感じていた。2024年問題の先行きに不安を感じさせる結果となった。
非正社員の人手不足割合を業種別に見ると、「飲食店」が72.2%で前年同月から8.2ポイント減少したものの、依然トップだった。次いで「人材派遣・紹介」(62.0%)がランクイン。人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が目立っている。正社員でも上位となった「旅館・ホテル」(59.6%)など、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に名を連ねた。
24年度における正社員の賃上げ実施見込みについて尋ねたところ、人手不足を感じている企業は65.9%となり、「適正」(55.7%)と「過剰」(51.6%)を大きく上回って賃上げに積極的である傾向がうかがえた。
しかし、企業からは「労働力不足は顕著であり、賃金を上げないと人員の確保は厳しい」(一般貨物自動車運送、茨城県)などの声に加え、「賃金を上げたいが、材料値上げ分の価格転嫁もできない上に人件費分の価格転嫁を認めてくれない取引先があり、なかなか難しい」(メッキ板等製品製造、山口県)、「大手を中心にベースアップが相次いでいるが、中小企業には逆風」(鉄骨工事、茨城県)など、賃上げの実施に難しさを感じている声が多く聞かれた。
(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供