内部調査委が中間報告書、支店で不適切な会計処理も発覚
鴻池運輸は3月14日、従業員が架空請求・横領を行っていた件に関し、内部調整調査委員会(委員長・山田庸男弁護士)からの中間報告書を受け取ったと発表した。
不正額はこの従業員が所属していた支店での不適切な会計処理を合わせて2020~23年度で計5億4900万円に上ると説明。過大な売り上げ原価を取り消すなどの対応を進めるが、業績への影響は軽微のため、過年度の有価証券報告書など財務資料の訂正は行わないという。
同委は今後、詳細な再発防止策を盛り込んだ最終報告書をあらためて提出する予定。同社は提言内容を踏まえ、4月中旬をめどに具体的な対策を発表する。
中間報告書によると、23年11月に大阪国税局の税務調査を受けている過程で不正の可能性があることが判明。同社のある支店の課長が21年10月から23年10月までの2年間にわたり、部下の副長と組み、取引業者計7社の協力を得て実態のない架空の業務を発注したと偽り、請求書などを作成、不正に自社の資金を流出させていた。
併せて、課長らは7社から現金でキックバックを受け、私的に着服していた。
さらに、同支店では帳簿上、過大に計上していた「貯蔵品」を、出庫していないにもかかわらず、出庫(払い出し)したことにしていたり、取引業者から人員派遣を受けた際、派遣費用を水増しして請求したりといった会計処理を行っていたことも発覚した。
同支店で一連の不適切な行為に関与したのは、当該の課長や副長を含めて計6人に上った。
同委は中間報告書の中で「予算に対する過剰の統制意識を引き金にして業績を作為的に調整し、特に関与者の中の首謀者の両名は自己の利益を図るために取引業者とともに本件架空請求を行うとともに、他の関与者と共に、複数の手口で本件不正会計処理に及んだ」と指摘。
法令順守(コンプライアンス)や倫理の意識不足・欠如、内部管理体制やけん制機能の不適正な運用と形骸化、業績に偏重した支店特有の「閉鎖型」の企業風土などを背景に挙げている。
(藤原秀行)