NTTグループ、東京・港南エリアで高層ビル内のロボット配送実験

NTTグループ、東京・港南エリアで高層ビル内のロボット配送実験

最適な経路生成や電波品質加味した制御機能を実現

NTTとNTTコミュニケーションズ、NTTアーバンソリューションズの3社は3月26日、東京都港区港南の高層ビル「品川シーズンテラス」敷地内で2月5日~3月15日にかけ、ビル内ロボット配送実験を実施したと発表した。

NTTグループが保有するロボット最適制御技術やマルチ無線プロアクティブ制御技術を適用し、到着時間の正確性向上、配送時間短縮、早期異常検知など、より効率的かつ安全なマルチロボット運用を実現した。

ロボットはZMPの「DeliRo(デリロ)」とアスラテックの「RICE」を2台ずつ投入した。

配送や警備、移動手段などでロボットの活用が一層広がると見込まれる一方、複数のロボットが同時に走行する際の衝突や、走行中の通信断による稼働停止など、効率的かつ安全にロボットを活用していくためには多くの課題がある。3社は実証実験で課題解決のための知見蓄積を図る。

本実証の概要

時期 2024年2月5日~3月15日
実証場所 「品川シーズンテラス」(東京都港区港南1丁目2番70号)
使用ロボット 株式会社ZMP「DeliRo(デリロ)」2台、アスラテック株式会社「RICE」2台
実証内容 オフィス入居者がオーダーアプリを用いて注文した商品について、ビル内のコンビニ店舗(デイ・ナイト株式会社による運営)からの配達作業を自律走行型サービスロボットが代行し、注文者へ商品を配達
各社の役割
  • NTT Com:Smart Data Platform for City(以下、SDPF for City)/マルチロボット最適化ソリューションの提供
  • NTT:オーダーアプリと「街づくりDTC」技術を活用したロボット最適制御技術、マルチ無線プロアクティブ技術Cradio(以下 Cradio)の開発・提供
  • NTTアーバンソリューションズ:ロボットが走行する実証環境の提供ならびに運営管理、店舗やテナントとの交渉・調整

実証の結果、ロボットの有用性を確認できたという 。

①ロボット最適制御技術を用いた効率的なロボット配送
  • ロボットによる配送時間を約30%削減
  • 注文者に事前提示する到着時間の誤差を約15%削減
Cradioを用いた安全なロボット走行
  • 弱電界エリア(75dBm以下)の走行を完全回避(0m)
  • 電波品質MAPと実測値の誤差はRMSEで約5dB
③SDPF for City/マルチロボット最適化ソリューションを用いたロボット運用
  • 複数ロボットを統合した管理画面により異常を検出

これまで、ビル内の混雑状況を基にした走行経路の設定および所要時間の見積もりの有効性について実証実験を通して確認してきた。本実証では、ロボット最適制御技術を用いて異種・複数のロボットが競合を回避しつつビル内の最短経路を選ぶことで、固定的にルート設定する従来手法に比べて配送時間を約30%削減できた。また、走行時間に加え店舗での作業時間も予測することで、注文者に事前提示する到着時間の誤差を、過去実績平均値を用いる場合よりも約15%減らせたという。


ロボット競合回避の様子(左:競合回避なし、右:競合回避あり)

併せて、高度な無線技術「Cradio(クラディオ)」で無線基地局の運用状況と連携するとともに高精細な建物情報や無線装置の特性を考慮した精緻な電波品質MAPの作成を可能にできる見通し。今回作成した電波品質MAPと実測値の誤差はRMSEで約5dB。ロボットの走行経路選定に十分な精度であることを確認した。

作成した電波品質MAPの情報をロボット最適制御技術と連携させることで、-75dBm以下の弱電界エリアの走行距離を0mにでき、ロボットが制御不可になるリスクを低減。無線通信品質の予測技術をロボットの走行制御に連携させることで、無線通信品質の劣化前にロボットの速度制御・停止制御を実施し、安全なロボット走行への有用性も確認した。


Cradioのシミュレーション結果

それぞれの技術をNTTグループの「SDPF for City/マルチロボット最適化ソリューション」に適用することで、異なるロボットプラットフォームを統合的に管理し、複数・異種のロボットを一元的に運用できる。複数ロボットの現在地や稼働状況の可視化、遠隔からの管理・操作を一元的な管理画面上で担えるため、より効率的な運用・管理が実現できる見通しとなった。


複数ロボットの管理画面(いずれもプレスリリースより引用)

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事