冷凍・冷蔵倉庫はマルチ型賃貸物件が浸透へ、首都圏と近畿圏で26年までに20棟規模竣工

冷凍・冷蔵倉庫はマルチ型賃貸物件が浸透へ、首都圏と近畿圏で26年までに20棟規模竣工

CBREがリポート、既存物件の収容能力低下や老朽化など背景に

シービーアールイー(CBRE)は4月16日、コールドストレージ(冷凍・冷蔵倉庫)市場の動向に関するリポートを公表した。

「コールドストレージの不足感は年々強まり、開発に取り組むデベロッパーや投資家も増えてきた。企業の間で、賃貸型コールドストレージの利用は今後少しずつ浸透するだろう」と展望。自社開発やBTS型物件に加え、不特定のテナントが使えるマルチテナント型の賃貸冷凍・冷蔵倉庫の普及を想定していることを明らかにした。

その背景として、既存のコールドストレージの収容能力に余裕がなくなっていることや、老朽化が進んでいることなどを列挙した。

開発参入は10社超える見通し

リポートはコールドストレージ市場展望の前提として、冷凍食品の消費量が2000年以降、年平均1.1%のペースで拡大していると指摘。食品ECが伸びていることにも言及した。

ただ、「現状の食品類ECの成長ペースは(新型コロナウイルスの)パンデミック(世界的感染流行)前と比較しても鈍い」と解説。冷凍食品を含む食品類のEC利用拡大には「過度な期待はできないようだ」と述べ、コールドストレージ需要を力強く牽引する役割を担うことには消極的な見解を示した。

一方、コールドストレージの絶対量が不足していることや、老朽化が深刻になっていること、機械化のニーズが高まっていることから供給が求められているとの見方を表明。

その根拠として、収容可能なスペースに対して貨物量がどの程度占めているかを表す「庫腹占有率」は、日本冷蔵倉庫協会の昨年12月の調査では横浜が104.1%と既に溢れている状況になっているほか、東京(99.1%)、神戸(94.8%)など、大型港湾を抱える主要都市でひっ迫していることを引用。

「国際的な価格変動や政情不安による物流の停滞など、近年は保管量の増加を促すような事情も多く、コールドストレージの利用増につながっているとみられる」と推測した。

また、同じく同協会の調査から、既存のコールドストレージの容積が大きい上位10都道府県を見た場合、築40年以上の物件が1~4割程度に上っているが、庫腹占有率の上昇で荷物の移管先が限られ、建て替えが進んでいないと解説。「設備に支障はなくとも、建物が適切に更新されないことには、耐震性能やBCPの観点から問題となる可能性がある」と懸念を表明した。

さらに、厚生労働省の調査を基に、運輸業・郵便業の人手不足の度合いが常に全産業平均を上回っていることにも触れ、「建物の老朽化対策とも相まって、機械化に適した新しいコールドストレージへのニーズは少しずつ高まるだろう」と言明した。

厳しい環境を考慮し、マルチテナント型コールドストレージは首都圏と近畿圏で2026年までにトータル20棟規模まで増えると展望、開発が増えていることを紹介した。その一因として「物流施設の運用利回りが圧縮される中で、コールドストレージは通常の物流施設(ドライストレージ)に比べて高めの賃料が期待できるとして、デベロッパーや投資家の関心が高まった」と分析。

マルチテナント型のコールドストレージ開発に参画する企業は26年竣工物件まで含めると10社を超える見通しと明らかにした。テナントのニーズが見込める機能は可変温度帯仕様や柔軟性の高い賃借面積など、利用条件の自由度・柔軟度が高く使い勝手の良いことを挙げており、「普通(ドライ)倉庫の場合と変わらないと言えるだろう」と主張している。

最後に、普通(ドライ)倉庫もマルチテナント型が日本国内で登場してから市場が拡大期に入るまで10年程度を要したと回顧。コールドストレージも賃貸型の普及は相応の時間が掛かるとの見通しを示した。

「コールドストレージへのニーズは潜在的に高まっていることから、賃貸型の認知度を高めるためにもデベロッパーが粘り強く開発、投資を継続することが必要だと考える」と総括、デベロッパーの取り組みに期待を示した。

(藤原秀行)※いずれもCBREリポートより引用

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