国交省が中間取りまとめの構成案、実験線設定も
国土交通省は5月14日、既存の道路インフラを活用し、自動で荷物を輸送する「自動物流道路」の実現に向け、必要な機能や克服すべき課題などを議論する有識者らの検討会(座長・羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授)を開催した。
国交省は今夏ごろをめどに策定する予定の中間取りまとめに関し、構成案を提示。この中で、物流量の多さなどを考慮し、東京~大阪間を念頭に、長距離幹線輸送に活用する方針を盛り込むことを提案した。
併せて、先行して実験線を設け、必要な技術開発などを進めることも提唱した。
国交省は今後10年で実際に自動物流道路を使って荷物を運べるようにしたい考え。検討会で引き続き議論し、中間取りまとめにどの程度反映させるかを検討する。
自動物流道路は主要都市間を結ぶ地下トンネルに自動運転カートを走らせる物流システムを計画しているスイスや、低コストのリニアモーターを使って完全自動運転の物流システムを検討している英国などの事例を参考にしている。国交省などは日本で高速道路の中央分離帯や路肩、地下などを使うイメージを持っているようだ。
この日の会合で国交省は、実験線の基本的な考え方について「将来的な完成系のる路線の一部や物流拠点間を結ぶ路線など、実際の輸送を見据え、区間設定を行う」と例示。各工程の自動化、物流標準化、ロジスティクスの最適化など物流の省人化・効率
化と脱炭素を最大限実現していくことを目標として打ち出している。
国交省はまた、工事期間の参考として試算を公表。地上に設けることを想定し、2000年3月に発表した高速道路の中央分離帯などを使う「新物流システム」は当時で10km当たりの工費が254億円、施工期間は13年などと見積もったことに触れた。
地下の場合は、建設会社などへのヒアリング調査の結果、道路から40mほど地下に6m程度を開けると仮定した場合、トンネル開発の施工期間が10km当たり2.3~4.8年、概算工費は70億~80億円などと試算している。
運営主体の例として、宇都宮ライトレールは軌道整備事業者の宇都宮市と芳賀町が資金を調達、設備や車両を営業主体の運営会社に貸し付け、その代わりに宇都宮市と芳賀町に利用料などを受け取っている構造を引用した。
海外の自動物流道路のイメージ(国交省資料より引用)
(藤原秀行)