ライオンとNTTデータ、熟練者の生産技術継承へ生成AI活用した暗黙知伝承をスタート

ライオンとNTTデータ、熟練者の生産技術継承へ生成AI活用した暗黙知伝承をスタート

新規参画者も容易に検索・活用可能に

ライオンとNTTデータは6月3日、ライオンの衣料用粉末洗剤の生産技術領域で、国内熟練技術者の暗黙知となっている技術や知識・ノウハウを、生成AIを用いて形式知化する取り組みを始めると発表した。

近年、少子高齢化、労働力人口減少により、熟練技術者の技術継承や人材確保が困難になりつつあり、新規参画者への技術継承にはスキルと時間を要し、特に暗黙知化された情報の文章化と共有に課題があった。

そのため、両者は衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発で、熟練者へのインタビューや幅広い役職の社員間でのワークショップから情報を収集し、暗黙知化している技術や知識・ノウハウなどを抽出して「勘所集」として文書化。

さらに、生成AIを活用した検索サービス「知識伝承AIシステム」に「勘所集」を取り込むことで、新たに衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発を行うメンバーが、熟練者の技術や知識・ノウハウを容易に検索・活用できるようになり、効率的に担当業務を遂行することが可能になるよう支援する。

ライオンは効率的な技術の継承を実現することで、国内・海外拠点の技術力やグローバルECM()などを強化していきたい考え。NTTデータは形式知化された情報と暗黙知化された情報を掛け合わせ、知識伝承と活用のユースケースを確立、製造業界をはじめとして労働力人口不足に対応していくことを目指す。

アジアでの需要が堅調で、製造プロセスの開発で熟練者の暗黙知が必要とされる「衣料用粉末洗剤」を対象テーマとして選定した。

ライオンとNTTデータは2022年1月、新たなビジネスの創出を目指して業務提携した。NTTデータはライオンに対して、主にマーケティング領域におけるデータの分析や活用基盤構築を支援し、データ活用の高度化による顧客理解の深化やDX推進に向けた戦略策定、新規ビジネスの検討や技術検証などを後押ししてきた。

また、これまでNTTグループとして暗黙知を抽出し文書化するサービスや生成AI活用のサービスを幅広い顧客に提供し、ナレッジ活用に取り組んできた。

ライオンはこれまで、社内のデータベースにある形式知化された情報を、効率的に集めて提供する技術開発を推進。生産技術領域では熟練者の知識・技能を伝承するため、OJTやマニュアル・手順書を活用してきた。しかしながら、衣料用粉末洗剤の製造プロセスを開発する際、効率的に検討を進めたり、工場での生産時に原料の性状などを考慮した運転条件を設定したりするノウハウといった暗黙知を学ぶのに、時間を要していた。


取り組みのスコープ(プレスリリースより引用)

将来的はよりセキュアで専門的な内容を取り込むことが可能な生成AI、特にNTT版大規模言語モデル「tsuzumi」の活用も検討する。

(藤原秀行)

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