自動化技術利用拡大へ業界団体の自主行動計画策定促進も
政府の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)は6月11日の会合で、来年度予算編成の基本的な方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024」の原案を提示した。
この中で、賃上げの定着と戦略的な投資による所得・生産性の向上を引き続き推し進めていく方針を強調。サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図る姿勢を明示した。
そのために、独占禁止法や下請け法の執行強化、転嫁の取り組みが進んでいない業界への自主行動計画策定・改訂の要請などを図ることを打ち出した。
このほか、運輸業や宿泊業、飲食業など人手不足感が強い業種を対象に、AIやロボットなど自動化技術の利用拡大に向け、業界団体による自主行動計画を策定を促すことを表明した。
同会議は6月中をめどに骨太の方針を取りまとめ、政府が閣議決定。予算編成を本格化させる。
岸田首相は同会議の席上、「あらゆる政策を総動員して賃上げを後押しし、来年以降、物価上昇を上回る賃上げを定着させていく」との決意を示した。
会議で発言する岸田文雄首相(首相官邸ホームページより引用)
高速道路の新料金体系導入へ検討開始
原案は、高速道路の渋滞緩和や地域活性化などを進めるため、2025年度から段階的に高速道路で柔軟な料金体系に転換するとのスケジュールを設定。まず8月をめどに、最大半額となる料金体系の導入へ検討を始めることを記した。変動料金制の採用などを念頭に置いている。
また、高速道路の自動運転専用レーンやドローン航路の設定を進め、今後10年で全国展開していくことを設定。一般道でも25年度に全都道府県で、通年運行の計画・実施を目指すと明記した。
物流効率化のため、ダブル連結トラックの利用可能路線拡充、自動運転トラックや自動配送ロボット、自動倉庫などの実装、各種手続きの電子化を図っていくことを提示。
既存の高速道路を活用し、荷物輸送専用の新たなルートを設ける「自動物流道路」は東京~大阪間を念頭に置き、夏ごろをめどに政府の会議で基本的な枠組みを取りまとめ、10年後をめどに先行ルートで運用を実現するとの方針をあらためて表明した。自動運航船も2030年ごろまでの実現を目指す方向性を堅持した。
脱炭素に向け、燃料電池トラックなどの普及を集中的に支援するとともに、非化石エネルギー自動車の保有や使用に関する目標を拡大する方向で検討することにも言及した。
宇宙利用に関し、民間企業による新たな宇宙への物資輸送などを実現可能にするため、宇宙活動法の改正を視野に入れ、24年度中に制度見直しの考え方を取りまとめることを記述した。
スタートアップを担う人材の育成や国内外のネットワーク構築を目指し、若手人材の発掘・育成、女性起業家の支援、アントレプレナーシップ教育の充実、起業家の海外派遣などを図ることを列挙した。
さらに貿易の領域で、貿易関連情報を関係者が迅速に共有できるシステムなどを活用し、DXを推進していくことを明示した。
(藤原秀行)