荷待ち・荷役時間短縮図る改正法の規制的措置詰める政府合同会議が初会合★続報

荷待ち・荷役時間短縮図る改正法の規制的措置詰める政府合同会議が初会合★続報

特定事業者の指定条件やCLOの業務内容など検討、10月めどに方針案策定へ

経済産業、国土交通、農林水産の3省は6月28日、東京・霞が関の農水省内で、「2024年問題」対策のため荷主企業や物流事業者にトラックの荷待ち・荷役時間短縮を図るよう義務付けることなどを柱とした改正物流総合効率化法(施行後は名称を物資流通効率化法に変更)に関し、業務効率化推進に関する基本方針などの詳細を議論する3省関係審議会の合同会議を開始した。

改正法は今年4月、通常国会で可決、成立した。国交など主務大臣がトラックドライバーの負荷軽減に向けた施策の方向性などを明記する「基本方針」を策定した上で、全ての荷主企業や物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課すことを打ち出している。

さらに、一定規模以上の荷主や物流事業者を「特定事業者」に指定し、荷待ち・荷役時間短縮に関する中長期計画の作成や定期報告を義務付けたり、特定事業者の荷主には中長期計画推進の責任を担う「物流統括管理者」(CLO)を配置するよう義務化したりすることなどが柱となっている。

合同会議は基本方針に加え、荷主や物流事業者が物流効率化の施策を進める上で考慮する「判断基準」の中身や、特定事業者に指定する具体的な条件などを検討。業界団体からのヒアリングなどを経て、次回会合を開く今年8月ごろをめどに骨子案をまとめ、パブリックコメント(一般からの意見募集)も実施。10月ごろに方針案を策定し、2025年の初めをめどに政省令の交付などを順次進める予定。


会議の様子


(3省資料より引用)

会議の冒頭、国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は「物流は(荷主と物流事業者らの)Win-Winが成立すればすぐに“三方良し”につながると思っている。これを形にしたのが改正法だ。基本は連携、協力だと思っている。こういう場を通じてさらに連携を深めていきたい」とあいさつ。

経産省の南亮総括審議官は「物流2024年問題はこの数年にわたり、しっかり取り組んできたところであり、今回1つの節目として法律が成立した。2030年、40年とどんどん事態は厳しくなると思うので、この機会を捉えて、今後長きにわたって物流がしっかりと回る土台を作っていきたい」と強調した。

農水省の小林大樹新事業・食品産業部長は「4月以降、今のところ大きな混乱が生じていることはないが、継続的に対応していかないといけない。すぐに解決するほど簡単な問題ではないので、しっかりとやっていかなければいけない」と語った。

合同会議の座長に就いた根本敏則敬愛大学特任教授は「この法律に対する社会の期待は非常に大きいと思う。従って実効性のある規制、制度にしていく必要があり、そのためには判断基準などを分かりやすく説明していくことが重要になる。それぞれの専門の立場から助言いただきたい」と決意を述べた。

「28年度までにドライバー1人当たり年125時間荷待ち・荷役削減」

この日の会議で国交省の担当者らは、基本方針はドライバーの業務効率化の目標として、2028年度までに全トラック輸送のうち5割の運行で荷待ち・荷役などの時間を1時間短縮することでドライバー1人当たり年間125時間削減することや、全トラック輸送のうち5割の車両で積載率を50%まで高め、全体の車両で平均44%まで改善することなどを提案。

判断基準の案としては、荷主向けには適切なリードタイム確保、標準仕様パレットの導入、出荷時の順序や荷姿を想定した生産・荷造りなどを列挙。小売などフランチャイズチェーン事業者向けには繁閑差の平準化や納品日の集約を通じた納入量適正化などを示した。

トラック運送事業者には複数の荷主の貨物積み合わせによる輸送網集約、ドライバーが不足している地域での配送共同化、実車率向上、配車・運行計画最適化に資するシステム導入などを並べた。

特定事業者の指定基準は、荷主やフランチャイズチェーン事業者は、取扱量が多い順番に、日本全体でトラック運送事業者が扱った貨物量の半分程度まで事業者を指定していくことなどを提示した。

中長期計画・定期報告に関しては、毎年度の提出を基本としながらも、計画内容に変更がなければ5年に1度とすることなどを示した。


(3省資料より引用)

改正法の大きなテーマとなっている「荷待ち時間」と「荷役時間」の算定方法は、前者は荷主の指定時間より前に着いた場合は指示された時刻や時間帯から荷役を始める時刻までとすることなどを表明。後者はトラック事業に付帯する業務の開始から終了までなどとする案を明示した。

CLOの業務内容は定期報告の作成、社内の関係部門間の連携体制構築、設備投資やデジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成などを並べた。

出席した委員からは、CLOは部門をまたいだ調整がしやすくなるよう役員が選任される仕組みを考案すべきだといった意見や、定期報告は毎年度提出とするよう求める声などが上がった。

合同会議を構成しているのは国交省の交通政策審議会 交通体系分科会物流部会、経産省の産業構造審議会 商務流通情報分科会流通小委員会、農水省の食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会物流小委員会。

(藤原秀行)

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