ニューデリー向け海上直行混載開始、現地の営業体制拡充図る
NVOCC(非船舶運航業者)のセイノーロジックスが、インド事業の強化に乗り出している。8月には新たに関東・関西発ニューデリー向けの海上直行混載サービスを始めた。インド向けでは3ルート目の開設で、これまでよりもトランジットタイムを大幅に短縮できる点などを売り物にしている。
インドは今後も経済成長が続くことが見込まれ、日系企業も自動車メーカーなどが多く進出しているため、定期的に運航している海上直行混載をアピールし、自動車関連部品などの輸出需要を確実に捉えていきたい考えだ。さらに、2024年中をめどに同社として初めてインドに駐在員を派遣、現地での営業体制を拡充することを準備している。
トランジットタイムを最大16日短縮見込む
セイノーロジックスは1986年、オランダの海運会社ファン・オメレンと西濃運輸の合弁会社「セイノー・ボテイナー」として発足、その後現社名に変更した。ファン・オメレンは世界初の海上混載輸送を手掛けたことで知られ、セイノーロジックスもその流れを継承、LCL(混載貨物)を得意としている。
同社のLCLの取り扱いは欧米向けがメーンだが、近年はそれ以外のエリアにも注力。インド向けは23年5月から本格的に取り組んでいる。現在はインド最大規模の港を持つ北部のナバシェバ、同国第2の港があるチェンナイの2カ所向けに海上直行混載サービスを提供している。ナバシェバのルートは危険物輸送にも対応している。
サービス開始から1年余りが経過し、インド向けの荷物取り扱いが順調に増えているため、第3のルートとして、これまでの海沿いのエリアに加えて内陸のニューデリー向けを開発した。ニューデリー向けは東京、横浜、名古屋、大阪などから出航する。インド国内の仕向け地はトータルで8カ所に上る。
貨物は日本を出てからニューデリーでインド国営の鉄道貨物最大手コンテナ・コーポレーション・オブ・インディア(CONCOR)が構えている旗艦ターミナルの倉庫(ICD、インランドコンテナデポ)まで、コンテナを開封せず輸送している。
旧来のニューデリー向け貨物は、ナバシェバなどでいったんデバンニングし、トラックや鉄道でニューデリーまで運んでいた。新たな海上直行混載はニューデリーまでのルートの途中でデバンニングやバンニングの作業がないため、貨物がダメージを受けるリスクを抑えられ、サービス品質を高められる上、輸送中の追跡も容易になるメリットを備えているという。
また、従来のサービスでは船の寄港順がインドのピパバブ→パキスタンのカラチ→インドのナバシェバだったため、海上輸送部分でもナバシェバで陸揚げするまで日数を要していた。そこを、先に寄港するピパバブで陸揚げするよう変更、海上輸送部分の日数大幅短縮を実現した。陸揚げ後はデバンニングせず、コンテナのまま鉄道に接続し、ニューデリーまで輸送している。
途中の積み替え作業をなくしたことなどから、トランジットタイムも横浜積みの場合はこれまでの約45日から29日まで、神戸積みの場合は40日から24日までと、現状から最大16日短縮できると想定している。大幅なスピードアップで、セイノーロジックスによれば、業界で最速のレベルという。
セイノーロジックスの今井啓裕執行役員VOTAINER部兼イノベーション推進部担当(名古屋支店長)は「新型コロナウイルス禍で海上輸送のコンテナスペースを押さえるのが非常に難しくなってきたが、当社の仕入れ部門がいろいろな船社にお声がけして、安定的に毎週スペースを供給できるようにしている。そうした姿勢がお客様にも評価されている」と自信を示す。
ニューデリー向けの海上直行混載は、自動車メーカーのニーズを意識し、関東では東京や横浜に加え、群馬県太田市の内陸CFS(コンテナフレートステーション)でも荷物を受け付けている。
今井氏は、昨年から現地の代理店GLOBELINK(グローブリンク)と定期的にオンラインでミーティングを重ね、日本側でも現地の状況把握に努めていると説明。「ニューデリーに続く4カ所目の直行混載はまだ具体的なことは考えていないが、しっかりとアンテナを張ってお客様のニーズを捉えていきたい」と意気込んでいる。トランジットタイムを大幅に減らせることから、顧客の荷主企業の物流変革に組み込まれることにも期待を寄せている。
(藤原秀行)