JLLとラサール調査、サステナビリティ領域で躍進目立つ
米不動産サービス大手ジョーンズ ラング ラサール(JLL)とラサール インベストメント マネジメントは9月5日、世界の主要国・地域で商業用不動産市場がどの程度情報開示に積極的で投資判断しやすいかを比較した「2024年版グローバル不動産透明度調査」の結果を公表した。
調査は1999年から2年ごとに実施しており、今回が第13版となる。24年の日本の透明度は世界89カ国・地域の中で11位にランクインし、前回の2022年調査時の12位から1つ順位を上げた。22年と同じく、透明度が「高」の市場グループのメンバーの地位を維持し、アジア地域の中では2回続けてトップとなった。
評価の項目別では、特に不動産の「サステナビリティ」に関する透明度が22年の6位から24年は2位に躍進。建物からの温室効果ガス排出量の削減や省エネ促進などに関する情報開示が進み、不動産の環境性能に関する認証の取得も増えていることがランクアップに貢献した。
JLLは半面、先進技術を活用して不動産関連業務の効率化を図る「不動産テック」の普及が欧米よりまだ遅れていることや、日本独自の慣習「共益費」の根拠や内訳が借り主に示されておらず実態が不透明なことなどが課題と指摘。改善を図るよう呼び掛けた。22年の調査でも不動産テックの導入遅れや共益費の存在について言及しており、状況の改善が進んでいないことを示唆した。
24年のランキング(JLL資料より引用)
JLL日本法人が東京都内で同日開催した、調査結果に関するメディア向け説明会で、JLL日本法人の赤城威志リサーチ事業部長は「物流施設は屋上緑化から始まり太陽光発電を入れるなどいろんな形で環境に配慮したものが作られてきている。(日本の市場透明度の)サステナビリティ向上の1つの要因として物流施設があると考えてよいと思う」と解説。投資対象として国内外で注目されている物流施設で環境対策などの情報開示を積極的に行っていることが22年に続いて日本の順位押し上げに貢献したとの見解を示した。
赤城氏
同じくJLL日本法人リサーチの大東雄人ディレクターは日本の透明度ランクアップに関連し「日本はサステナビリティに関する透明度でグローバルリーダーの1つになっている」と強調。
「もはや物流セクターはこれまでのオルタナティブ(オフィスビルなどの伝統的アセットの代替的存在)に近い位置付けから、過去数年で充実してきて、グローバルで見ると既にオフィスより投資割合が大きくなっている」と説明。「冷凍・冷蔵倉庫の重要性も高まっており、より深堀りしたデータが求められることで、全体としての透明度への貢献(の度合い)も上がってきていると認識している」と語り、冷凍・冷蔵倉庫に関する市場動向データの積極的な開示が市場の透明度向上に不可欠との見方を明らかにした。
大東氏
調査は各市場の不動産取引や物件、上場企業の財務などに関する情報開示の度合い、法規制の現状といった256要素を「パフォーマンス測定」「市場ファンダメンタルズ(基礎的条件)」「上場法人のガバナンス」「規制と法制度」「取引プロセス」「サステナビリティ」の6項目に分けて独自に分析、数値化している。
グローバル全体では20年から3回連続で英国が1位となり、22年は3位だったフランスが2位に浮上。逆に22年に2位だった米国が3位となった。4位以下はオーストラリア、カナダ、オランダ、ニュージーランド、アイルランド、スウェーデン、ドイツと続いた。アジアでは香港が15位、台湾が26位、韓国が27位、中国(上海・北京)は30位などとなった。
(藤原秀行)