【物流展・独自】物流施設は就労環境改善や地域社会との交流など“SDGs推進拠点”に

【物流展・独自】物流施設は就労環境改善や地域社会との交流など“SDGs推進拠点”に

主要デベロッパーが軒並み出展、独自の取り組み紹介競う

9月10日に東京・有明の東京ビッグサイトで開幕した「国際物流総合展2024」(主催・日本ロジスティクスシステム協会=JILS、日本能率協会など7団体)は、主要な物流施設デベロッパーが軒並み参加し、自社開発物件の高機能ぶりをアピールしている。

近年の物流現場の人手不足や求められる物流機能の向上などを受け、デベロッパーとしても物流施設の就労環境を改善して労働力を確保しやすくしたり、地域社会との交流を重視したり、入居する荷主企業や物流事業者が抱える事業上の課題解決を後押ししたりと、独自の取り組みを競って紹介。物流施設がまさに“SDGs推進拠点”として存在価値を高めていることを強く感じさせた。


初日の来場登録者数が1万4000人を超えた会場

“オンデマンド冷凍・冷蔵倉庫”サービスも登場

プロロジスはテナント企業が抱える「2024年問題」などの解決支援の取り組みを全面に紹介、ソリューションプロバイダーとしての存在感を示していた。その具体策として、同問題解決に向け期待が高まっている共同輸送を促進するためのコミュニティ形成、KURANDO(クランド)の庫内業務可視化・効率化支援ツールの提供、タイミーのワークシェアリングサービス紹介による労働力確保支援などを列挙していた。


プロロジスのブース

日本GLPは、近年需要が伸びてきている冷凍・冷蔵物流施設をマルチテナント型として開発するなどラインアップの拡充を図っていることを強調。併せて、グループのモノフルによる物流施設などのトラック受付・予約サービス「トラック簿」といった「2024年問題」対応をデベロッパーの立場から積極的に進めていることも紹介していた。


日本GLPのブース

野村不動産は、荷主企業などと最適な自動化技術の開発などを進める自発的な活動「Techrum(テクラム)」のメンバーのさまざまな技術やソリューションを一斉に展示。ピッキングアシストのAMR(自律移動ロボット)や全自動製函機、段ボール自動開梱機などを紹介し、現場に即した導入しやすいソリューションの確立に尽力している姿勢を訴えていた。


野村不動産のブース

三井不動産は、物流施設開発のノウハウを十二分に生かして築古・低利用敷地倉庫の建て替えをサポートするソリューションを発表。今年4月に提供をスタートした、千葉県船橋市の物流施設内の「EC自動化物流センター」をEC事業者が活用、入出荷業務の効率化などを後押しする「MFLP &LOGI Sharing」のメリットをPRしていた。


三井不動産のブース

大和ハウス工業は、物流施設や工場といった事業・商業施設を買い取り再販やリノベーションなどで再生、価値を高める「BIZ Livness(ビズリブネス)」の成果を強調、利用を働き掛けていた。Hacobuのトラックバース予約システム「MOVO Berth(ムーボバース)」など、2024年問題を考慮し、スタートアップを含む様々な企業と連携して荷待ち・荷役時間短縮のソリューションを提唱していることにも触れていた。


大和ハウス工業のブース

東急不動産は、グループの学生情報センターを介して入居テナント向けに求人サイトへの情報掲載など人材確保を後押ししていることを解説。大阪府茨木市の物流施設内に、地域の企業や自治体などが柔軟に高速大容量通信の環境を構築・保有できるローカル5G(高速通信規格)の実証実験を行う「R&Dセンター」を本格稼働させ、ロボット開発のPhoxter(フォクスター)やNTTコミュニケーションズと連携して様々な自動化機器と通信の実証実験に取り組むことも訴えていた。


東急不動産のブース

三菱商事都市開発は、シェア型産業創出・支援施設「innoba(イノーバ)」を東京都大田区に続き、川崎市でも整備、2027年秋に竣工する予定となっていることに言及。製造業のサプライチェーン運営効率化も後押しできる可能性があることを示していた。CRE(企業不動産)の有効活用として物流施設開発を実現した成果も強調していた。


三菱商事都市開発のブース

住友商事は、注力している取り組みとして、倉庫運営高度化システム「スマイルボードコネクト」を大々的に展示。物流センターで従業員ごとの作業進捗を可視化し、実績データを収集・蓄積・分析することで運営効率化が可能な点をアピールポイントにし、セミナーも開催して利点を強調していた。


住友商事のブース

東京建物は、次世代に向けた環境配慮型物流施設を展開していることを報告。太陽光発電設備の導入などで、建物からの温室効果ガス排出を実質ゼロとする「ZEB物流」を標ぼうしていた。併せて、マルチテナント型の特殊倉庫(冷凍・冷蔵倉庫および危険物倉庫)の開発事業に参入したこともPRし、テナント企業の多様なニーズにより強力に応えていく決意を示していた。


東京建物のブース

シーアールイー(CRE)はグループのAPTが展開している自動倉庫リニューアルのソリューションなどを出展。さらに、CREグループとして注力しているベトナムやインドネシアでの倉庫開発の実績も紹介、デベロッパーとして企業の海外進出をサポートしていく姿勢を鮮明に打ち出していた。一般社団法人日本倉庫マスターリース協会が倉庫マスターリース業を解説する展示も行っていた。


CREのブース

霞ヶ関キャピタルは、中核としている環境配慮型の冷凍・冷蔵倉庫の開発の狙いを説明。パレットで保管することで労働人口減少下でも入出庫業務を持続可能にし、1日単位・ケース1個単位で預かる“オンデマンド冷凍・冷蔵倉庫”サービス「COLD X NETWORK(コールド・クロス・ネットワーク)」を今年秋以降、積極的に展開していくことを説明していた。


霞ヶ関キャピタルのブース

オリックス不動産は、今後首都圏で竣工予定の物流施設を紹介する中で、自家消費型の太陽光発電設備やEV(電気自動車)充電スタンドの設置、作業用空調の導入、従業員がリフレッシュできるラウンジやカフェの採用などを基本的に実施していることをアピール。日系物流施設デベロッパーの先駆けとして、物流施設のスペックの高さへのこだわりをにじませていた。


オリックス不動産のブース

アライプロバンスは、今年8月に東京都江戸川区東葛西で竣工した「アライプロバンス葛西A棟」の概要を説明。都内湾岸エリアという立地の良さに加え、著名な建築家の菅原大輔氏によるアート庭園「葛西アートの森」を設けるなど、地域共生や就労環境向上のために独自のアイデアを多数取り入れている“挑戦的な施設”ぶりを来場者に訴えていた。


アライプロバンスのブース

(藤原秀行)

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