米国のプロジェクトへの参加も、サプライチェーン構築目指す
出光興産と三菱商事の両社は10月23日、アンモニアの輸入に向け、協業の可能性について共同で検討を開始したと発表した。
温室効果ガス排出量が少ないアンモニアを輸入する際の運搬船や受け入れ拠点を効率的に運用できるかどうかなどを検証する。
両社は併せて、米エクソンモービルがテキサス州ベイタウンで推進しているクリーン水素・アンモニア製造プロジェクトへの参加についても検討を開始する。両社の拠点を連携させ、海外から調達するクリーンアンモニアの最適なサプライチェーン構築を図る。
プロジェクトは製造時に出るCO2の約98%を回収し、カーボンフリーに極めて近い低炭素水素と低炭素アンモニアを製造することを目的に掲げている。2025年の最終投資決定、29年までのクリーン水素(年間約90万tン)とクリーンアンモニア(年間100万t以上)の生産開始を目指しており、実現すれば世界最大規模の生産量になると見込んでいる。
出光は徳山事業所(山口県周南市)の既設インフラを活用したアンモニア輸入受け入れ拠点を設置し、周南コンビナート各社を含む周辺の事業所と、2030年までに100万t超のアンモニアを燃料や原料として共同で導入することを目指している。
今年2月には国内初となる商業用ナフサ分解炉でのアンモニア燃焼の実証を徳山事業所で行うとともに、5月には「水素等供給基盤整備事業」として周南コンビナートの3社とともに「周南地区アンモニア広域供給拠点、域内パイプライン整備及び燃焼設備検討事業」が採択されるなど、国内コンビナート競争力強化の先駆けとなるため、産官学と連携して地域全体のカーボンニュートラル化に取り組んでいる。
三菱商事は、保有している愛媛県今治市のLPG(液化石油ガス)ターミナル(波方ターミナル)をアンモニアターミナルに一部転換することを検討している。30年までに年間約100万tのアンモニアを、電力/運輸/化学など様々な産業用途向けに供給するハブターミナルとするため、拠点整備の準備を推進している。昨年4月には四国・中国地域の潜在需要家と「波方ターミナルを拠点とした燃料アンモニア導入・利活用協議会」の設置で合意、アンモニアの取り扱いやターミナルの効率運用・需要拡大策等について協議を重ねている。
アンモニアは燃焼時にCO2を排出せず、既存の輸送手段・貯蔵設備を有効活用できることから、様々な産業での低炭素化・脱炭素化への貢献が期待されている。両社はプロジェクトで生産されるクリーンアンモニアを各受け入れ拠点経由で日本国内に供給していくことを想定している。
(藤原秀行)※プレスリリースより引用