世界初の安全な脱出措置対象ノーテーション新設も
一般財団法人日本海事協会(ClassNK)は12月6日、自動車運搬船の貨物倉火災時における船舶からの安全な脱出を確保するための指針を公表した。
併せて、船員が安全に脱出するための追加措置を備えている船舶であることを対外的に示す世界初のノーテーション(船級符号の付記)「AMEVC(EV)」を新たに規定したことも発表した。
自動車運搬船は、貨物倉の上に居住区や救命設備が配置されることが多く、貨物倉の通風装置が居住区回りにも配置されることが一般的なため、貨物倉の火災時には居住区や救命設備、救命設備への動線が貨物倉からの炎や煙の影響を受けやすく、船員が船舶から脱出する際の妨げとなり、人命の安全確保に大きな影響を及ぼす可能性がある。
同協会はそうした事情を考慮し、船会社や造船所の協力を得て、船舶からの脱出時に存在するリスクと対策を「自動車運搬船から安全に脱出するためのリスク評価」としてまとめた。
熱の影響をはじめとした多岐にわたるリスクを検討。その対策の一例として、暴露甲板への散水や救命艇下に対する防熱施工、船首部の係船甲板への海上脱出用設備の追加などを盛り込んでいる。
さらに、火災時における船員の安全な脱出のため、各船の構造に応じて有効な追加措置が講じられた船舶に対しノーテーションを付与できるよう「電気自動車安全輸送ガイドライン」を改正し、第2.0版として公表した。
ガイドライン初版は電気自動車火災の特徴の解説や、早期発見・延焼防止といった火災対応策を講じた船舶へのノーテーション付与の規定などを取りまとめていました。それに対し、今般脱出に関する新たな検討を盛り込んだことで、より包括的な指針になったとみている。
居住区や救命設備、救命設備への動線が貨物倉からの炎や煙の影響を受けるイメージ
(藤原秀行)※いずれも日本海事協会提供