日本郵便、ヤマトの配達委託見直し提案で120億円の損害賠償求め提訴★続報

日本郵便、ヤマトの配達委託見直し提案で120億円の損害賠償求め提訴★続報

小型薄型荷物めぐり対立、今後の成長戦略に狂いも

日本郵便は12月23日、ヤマト運輸が日本郵便に対して小型の薄型荷物配達の委託方針見直しを一方的に提案してきたと主張し、ヤマトを相手取り、損害賠償などを求めて同日、東京地方裁判所に提訴したと発表した。

日本郵便は「ヤマトが当社に一方的な停止を通知し、(協業の)合意に基づく義務の存在自体を争う状況となった 」と説明。ヤマトが当初予定通り、2025年2月1日から26年1月31日まで小型薄物荷物の運送を顧客から受託した場合は運送業務を日本郵便へ委託する義務があることを確認するとともに、義務を履行しない場合は逸失利益が発生するとして、120億円を賠償するよう要求している。

両社は2023年6月、「物流2024年問題」や人手不足などの課題に対応するため、協業する方針を発表。住戸のポストに直接投函できる小型の薄型荷物やメール便は両社がそれぞれ集荷した上で、配達は日本郵便が担う方針を示していた。不採算の事業を見直して収益を立て直したいヤマトと、配達を受託して売り上げを伸ばし、配達業務の効率化にもつなげたい日本郵便の思惑が一致していた。

両社はこのうち、小型の薄型荷物に関してはヤマトの「ネコポス」から23年10月に発売した「クロネコゆうパケット」へ順次切り替え、25年2月から全ての地域で「クロネコゆうパケット」を利用できるよう、配達業務を日本郵便に全て移す計画を立てている。

しかし、日本郵便によると、ヤマトは今年10月、小型薄型荷物について「ヤマト側の一方的な事情で」、25年1月から当面の間、日本郵便への運送委託を停止するよう計画を変更することを申し入れてきたという。

日本郵便は提訴の発表の中で、「この申し入れについて当社は承諾していないが、ヤマト側は合意に基づく運送業務の委託義務の存在自体を争い、一方的に当社への委託の停止を進めるべく、既に当社への運送委託の停止に向けたアナウンスや準備作業を進めているものと承知している」と反発している。

25年2月を予定していた小型薄型荷物の全国展開開始はずれ込む公算が大きくなった。協業を踏まえたヤマトと日本郵便それぞれの事業成長の戦略にも狂いが生じるのは避けられず、立て直しを迫られる。両社は裁判の場で争うのと合わせて、水面下で交渉を続けるとみられる。

ヤマトは12月18日、日本郵便に配達委託の見直しを交渉していることを認めた上で、配達が当初想定より遅れていることを理由に挙げていた。それに対し、日本郵便親会社の日本郵政の増田寛也社長は定例記者会見で、荷物の配達スピードに両社間で差が生じることは合意済みだったと説明、ヤマトに反論していた。

(藤原秀行)

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