製造業変える「ファクトリーテック」は有望分野

製造業変える「ファクトリーテック」は有望分野

Coral Capital・澤山氏が展望、カミナシとKOSKAのスタートアップ2社も登場

日本の有望なスタートアップ企業に投資する独立系ベンチャーキャピタルのCoral Capital(コーラル・キャピタル)は7月1日、東京都内で、製造業の抱えるさまざまな課題を先進技術で解決しようとする「ファクトリーテック」の動向に関するプレスセミナーを開催した。

Coral Capitalの澤山陽平創業パートナーは、製造業でIoT(モノのインターネット)活用を図る「インダストリー4・0」の動きが盛んなことに言及し、最近はスタートアップ企業も独自技術を駆使して製造業の省人化・業務効率化を支援しようと積極的に取り組んでいると指摘。今後も発展が見込める有望な分野との見方を示した。

併せて、Coral Capitalが投資したファクトリーテックの担い手として、クラウド経由で工場の帳票類をデジタル化するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を提供しているカミナシ(東京)、IoTで原価計算を自動化するサービスを手掛けるKOSKA(コスカ、同)のスタートアップ2社創業者が登壇。それぞれ独自のスタンスで製造業の生産性向上に貢献していくことへの強い意気込みをアピールした。

川上から川下まで多様な変革担い手が相次ぎ登場

澤山氏は、製造業のIoT領域への投資額は四半期ごとに500億~1000億円規模に上っていると指摘。業務を変革しようとする動きが活発なのを受け、ファクトリーテックという観点で見ても、設計や、製品のモデルを未完成でも迅速に製作して課題をフィードバックし、より精度を高めていく「プロトタイピング」、ロボティクス、メンテナンスなど川上から川下まで多様な過程で変革を目指すスタートアップ企業が相次いで出ていると説明した。

海外の実例として
・ドイツのリフレクト
AR(拡張現実)を生かし作業員への指示・教育をより効率的に行えるようサポート
・カナダのヴェンション
オンラインで工場に必要な機械の設計・発注ができるサービスを提供
・米国のサイトマシーン
IoTとダッシュボードを使い、機械の故障予測や業務効率化を実現
・米国のチューリップ
工場の稼働状況に関するデータ収集と分析、作業員へのトレーニングソフト開発など展開
・米国のデスクトップメタル
ステンレスや銅などさまざまな金属加工が可能な3Dプリンターを製造・販売
――といったスタートアップ企業の取り組みを紹介した。

「品質管理は数十年テクノロジーが入っていない」

続いて、カミナシの諸岡裕人代表取締役、KOSKAの曽根健一朗代表取締役が登場。それぞれ自社のサービス内容などを説明した。

諸岡氏は帳票のデジタル化を志向した背景として、自身が製造工場で働いた時に書類チェックの抜けや漏れが頻繁に起きていたことなどを挙げ、「品質管理の業務はここ数十年テクノロジーが入っていない。書いたものを人がチェックしている。管理の仕事が増え相当苦しい現場になりつつある。現場を楽にしたいとの思いから起業した」と指摘。現場のペーパーレス化を進めることで外国人労働者もオペレーションしやすくなるなどの利点があると強調した。

成果として、日本から出発する国際線で出される機内食の半分弱は同社サービスを生かして管理されていることなどを明かした。今後の展開として「いまどの製造がどの工程にあって、どんなステータスなのか、リアルタイムに現場の責任者がスマートフォンを見て把握し、その場で改善対応できる世界を目指したい」と力説した。


プレゼンテーションする諸岡氏

曽根氏は大学院でも管理会計を学び、日本原価計算研究学会でIoTによりどのように原価管理を簡易化・精緻化していくかを考察するプロジェクトに2年間携わるなどしてきた経歴を報告。そこから現サービスのプロトタイプ開発につなげたことを明かした。

そうした深い“原価管理愛”から「現場にいない経営者や営業の担当にとって製造現場の現状が見えるようになっていない。もっと言えば金額で見えるようになっていないというのがポイント」と実感。これまではストップウォッチで時間を図ってデータ化するといったように、現場のデータ取得に時間とコストが非常に掛かっていたと課題を分析。


自社サービスをPRする曽根氏

日本発技術のグローバル展開にも意欲

最期に両氏と進行役としてCoral Capital代表兼創業パートナーのジェームズ・ライニー氏が参加したパネルディスカッションを実施。諸岡氏は食品業界以外にも横展開していきたいとの意向を表明するとともに、外食企業の海外工場で採用する動きがあることを明らかにし、グローバル展開にも意欲を見せた。

曽根氏も日本企業の海外工場向けにリアルタイムの原価管理採用を訴えていく考えを示し、実際に中国でトライアルが決定している点に言及、海外展開の可能性に期待をのぞかせた。

日本のファクトリーテックへの取り組みについては、諸岡氏は「ペーパーレスという文脈では(海外より)遅れていると思う。大企業の工場でもいまだに紙が残っている」、曽根氏は「日本は製造業が強く、自分たちで(業務改善を)進めるという意味では意外と強く、取り組んでいるところも多い。ただドイツに比べれば遅れている点はある」との見解を示した。


パネルディスカッションの様子


セミナー後の記念撮影に応じる(左から)諸岡氏、ライニー氏、曽根氏、澤山氏

(藤原秀行)

月刊ロジスティクス・ビジネス

CTA-IMAGE ロジスティクスの実務家たちのニーズに応える“濃い”情報が本誌の売りです。本誌は書店では販売しておりません。1年12冊19,800円、1ヶ月当たり1,650円で、弊社があなたのお手元に直接お届けします。バックナンバーを無料で公開していますので、その価値をご判断下さい

その他(その他企業・団体)カテゴリの最新記事