アイ・グリッド・ソリューションズ
物流業界にサステナビリティを
再エネが導く物流と地域との共生
Interview 中村 宏 執行役員 ソリューション営業部 部長
物流施設などの屋上スペースに太陽光発電設備を設置し、施設側事業者にグリーン電力を供給する「オンサイトPPA」の事業モデルで国内シェアをリードする。導入リスクに対する踏み込んだサポートで不安を払拭し、物流事業者が経済合理性を超え、「グリーンエネルギーがめぐる地域」の旗振り役となる世界を描く。(本誌編集部)
太陽光の“自給率”を高める
━━アイ・グリッド・ソリューションズの事業内容を説明してください。
「事業の一つに、商業施設や物流施設などの屋上スペースに太陽光発電設備を設置、発電した電気を施設へと直接供給し、消費分の電力料金をお支払いいただくオンサイトPPAによる事業モデルがあります。2025年4月末現在で約320社超と契約し、北海道を除く46都府県1141施設で275メガワット(MW)の電力を供給しています。年間発電量は約3億キロワット時(kWh)です」
「森林開発などを伴わずに発電施設を設置するため、環境負荷をかけない再生可能エネルギー(以下、再エネ)を生み出します。AIを活用した独自開発のプラットフォームで、使い切れなかった余剰電力を蓄電池にためて必要な時に放電したり、他施設や家庭に電力を融通したりしています」
━━事業モデルの軸となっている「オンサイトPPA」の特徴とメリットは。
「発電設備は当社の資産になりますので、施設側の事業者に初期費用や保守管理費用が発生しませんし、投資回収リスクもありません。大手電力会社で上乗せされる託送料金や再エネ賦課金がない上、当社はオンサイトPPAと余剰電力の活用を組み合わせ、単価を引き下げる工夫をしています」
「施設側負担で太陽光発電設備を設置しようとすると、余剰電力が出ないよう屋上の一部分だけにパネルを設置しようとしがちですが、全消費電力量のうち太陽光発電が賄える〝自給率〟は低くなります。当社のオンサイトPPAなら余剰電力も運用できますので、屋上全面への設置をご提案できます。狭面積の施設をいくつも作るよりコスト効率が良いので料金単価を引き下げられますし、余剰電力を施設側事業者のグループ内で融通し合う選択肢も生まれ、“自給率”を高めることができます」
━━太陽光発電の〝自給率〟を高めることに経済合理性があるなら、屋上面積の広い物流施設とはかなり親和性がありそうです。
「経済合理性の面だけでなく、物流業界を取り巻く現状とも響き合う気がします。運輸部門は二酸化炭素の排出割合が全業種の2割前後を占めるなど、とりわけ脱炭素化の取り組みが求められる分野です。ただ車両の燃料などは再エネへの置き換えが難しい。施設で消費する電力に再エネを取り込むことは、最初に着手すべきオプションの一つと言えます」
━━ニーズの高さゆえ競合も多そうですが、どのように差別化へとつなげていますか。
「いいことずくめに聞こえるオンサイトPPAですが、いくつか導入のハードルがあり、踏み込んだサポートが不可欠です。一つが契約期間です。発電設備がPPA事業者の資産となることから、契約期間も20年程度と長期になりがちです。そうなると定借で施設を借りている物流事業者の場合、契約に二の足を踏みがちです。当社は条件次第で『解約フリー』というオプションがあり、移転や建て替えによる解約で施設側が通常なら請求される『残存簿価』を支払う必要がありません」
「もう一つは物理的ハードルです。発電設備を設置する際には屋根の耐荷重がポイントになりますが、ほとんどの物流施設はこのデータを持っていません。当社は構造検査書を基に見解書を作成でき、通常なら1施設当たり数十万~150万円かかる費用も当社負担です」
━━余剰電力の活用に向けて蓄電池の導入サービスも手掛けています。
「太陽光発電設備とセットで施設内に設置するサービスを展開しています。導入メリットの一つは『ピークカット』です。施設側は再エネで賄えない消費分を大手電力会社から調達しますが、その基本料金は過去1年で電力使用量が最も多かった30 分間の平均使用電力(デマンド)で決まります。夏場のピークのタイミングを見計らって電力を放出し、デマンドを下げることで基本料金をかなり抑えられます」
「もう一つは、貯めた電力を夜間に放出する『タイムシフト』です。太陽光発電設備だけを導入したケースと比較して、200kWhバッテリーの場合で再エネの自家消費量を1~3%増やせます。2MWhバッテリーでは13~15%増です。最近ではBCPの観点から導入する企業も増えています」
蓄電池導入によるデマンド削減効果
太陽光発電による日中の系統電力削減に加えて、夕方に蓄電池の放電を組み合わせることで、電力ピークを大幅に削減することが可能
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━━ピークカットやタイムシフトのタイミングはどう判断するのですか。
「蓄電池自身が勝手に作動してはくれませんので、夏場ではピークカット、それ以外はタイムシフトと判断できるシステムとの連動が不可欠になります。当社はAIが過去の実績や大手気象会社のデータを基に時期ごとの需要を予測。電力使用量に応じた蓄電池の充放電を可能にしています」
━━環境に対する意識や再エネの導入意義をどう説明されていますか。
「再エネの“自給率”を高めることは、化石燃料を使った発電とは不可分の為替影響や燃料調達リスクを最小化し、財務基盤の安定化にも寄与します。そういった経営戦略上のメリットについてお伝えしています」
「加えて、最近はサステナビリティを強く意識する物流事業者も少なくありません。例えばセンコー様には、サプライチェーン全体での『脱炭素』を目指し、再エネの“自給率”を最大化するため、オンサイトPPAと併せて蓄電池を採用いただきました」
蓄電池導入によるタイムシフト効果
太陽光発電の余剰電力を蓄電池に充電し、別の時間帯に放電することで、 安価な再エネ電力の自家消費量を増加することが可能
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「24/7CFE」のロジスティクスを
━━今後の事業展開については。
「最近、『24/7CFE(カーボン・フリー・エナジー)』と称し、24時間7日間、再エネをリアルタイムで事業活動に取り入れる機運が高まっています。ただ物流施設の年間消費エネルギーのうち、オンサイトPPAで自給できる割合はせいぜい約5~6割。当社が環境負荷をかけずに開発してきた全国46都府県のオフサイト電源が、残り4~5割の再エネ調達に寄与できると考えています」
「また、当社の再エネプラットフォームを通じて、物流施設が再エネで地域とつながる仕組みを構築できるとも考えています。近年は住宅地と物流用地の近接が進み、働き手確保の必要性とも相まって、『地域共生』が物流における競争軸のキーワードとなっています。余剰電力を地域に循環させたり、災害時の避難場所や環境学習の舞台として施設を開放したり、当社サービスを導入した物流施設が、そんな役割を地域で担うことができたらうれしいですね」
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