6月下旬に国内4航路で船上切り替え作業をテスト実施
国土交通省は7月8日、2020 年1月1日から世界で実施される船舶の硫黄分濃度規制(SOx規制)強化に向け、規制適合油を用いて船舶を運航するトライアル事業の第1弾を6月27日から約1週間にわたって実施したと発表した。国内4航路で鋼材運搬船、セメント運搬船の4隻による船上での規制適合油への切り替え作業は円滑に行われ、いずれの船舶でも正常な運航ができることを確認した。
SOx規制は船舶の排出ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)やSOxから生成される粒子状物質による人・環境への悪影響を防止するため、世界の船舶は今年末までに現在使用している硫黄分が3.5%以下の高硫黄燃料油から0.5%以下の低硫黄燃料油に切り替えることが決まっている。
その一方で規制適合油は硫黄分や動粘度などの性状がこれまでとは異なることが想定されるため、国交省では安全運航を主眼に船舶設備などの調査、燃料油の配管内移送・混合安定性などの確認試験に加え、これらを取りまとめた規制適合油の使用に関する手引書の作成など行ってきた。
トライアルに参加した船舶(国交省資料より引用)
トライアル事業では国内石油元売り企業が供給するサンプル燃料を内航船に補油して実運航を実施。エンジンへの燃料油の移送供給、燃焼に至るまでの船舶の状態などを計測する。事業受託機関は海上・港湾・航空技術研究所(海上技術安全研究所)と日本海洋科学。
今回は「東京湾~太平洋~阪神~瀬戸内」「東京湾~太平洋~阪神~九州東部」「東京湾~太平洋~阪神~九州北部」「東京湾~太平洋~伊勢湾~阪神~九州東部」の各航路で4隻の内航船を使用。少量の高硫黄C重油が残るタンク内に規制適合油を注ぎ足しても性状は安定しており、船体・設備の改造を行う必要もないことが分かった。
国交省では今年秋ごろからの本格的な供給開始を目指すとともに、トライアル事業で得られた知見を「2020年SOx規制適合舶用燃料油使用手引書」の改訂に反映するなど公表していく方針。
(鳥羽俊一)