過去のデータ4000件を可視化・要約、専門知識や経験に依存せず直感的操作で情報収集効率化
日本精工(NSK)は6月23日、生成AIを活用した品質トラブル参照アプリケーションの運用を6月に始めたと発表した。生成AIを本格的に使った社内向けアプリを開発したのはNSKとして初めてという。
アプリはNSK製品に関して蓄積してきた過去の品質トラブルに関するデータの可視化と生成AIによる要約機能を備えており、製品に関わるさまざまな分野の社員が迅速に情報を収集・把握して活用できる環境を整備することで、迅速かつ高品質な製品の提供につなげていきたい考え。
アプリの概要図(プレスリリースより引用)
従来の品質トラブルデータは、専用のデータベースやレポート形式で管理してきたが、データ自体が定まった形式を持たず専門性が高く、因果関係を読み解くことが難しい状況だった。
2022年度にスタートした現行の中期経営計画でデジタル技術の活用を通じた経営資源の強化を掲げており、競争力の源泉となる品質・技術の一層の強化を進めている。その一環として、製品開発時や工程設計時、その検証の際に生じた品質トラブルやノウハウに関するデータをテーブル構造で蓄積する取り組みを推進してきた。
新たなアプリは、例えば製品開発時のリスク要因を社員が調べる際、グラフによる可視化と生成AIによる要約文を提示。個々の社員の製品や業界に関する専門用語の知識レベルに依存することなく、誰もが調べたいデータへ容易に到達し、かつ情報要約の生成まで約30秒で完了できるよう設計している。
運用のスタートに際し、今年6月から約4000件の品質トラブルデータを詰め込んだアプリを、設計・製造・品証メンバーを中心とした国内5000人以上の社員に提供した。今後、営業・物流メンバーなどNSK製品のライフサイクルに関わる多様な分野の社員にも提供・利用者を拡大し、NSKの品質マネジメントの強化推進を目指す。
また、国内に加えて海外拠点も含めた活用を予定している。社員のニーズに応じた形で、顧客により迅速で高品質な製品が提供できるよう、回答精度の向上や調べたいデータの検索性向上などの機能拡充も想定している。
(藤原秀行)