ビッグデータやIoT活用推進で“選ばれる物流施設”に

ビッグデータやIoT活用推進で“選ばれる物流施設”に

プロロジス・山田社長が差別化へ強い決意表明

プロロジスの山田御酒社長は7月5日、茨城県つくば市で開催した「プロロジスパークつくば2」の起工式終了後、ロジビズ・オンラインなど報道陣の取材に応じた。

山田氏はECの発展などを背景として、今後も「つくば2」のような先進的機能を持つ物流施設が必要とされ続けると前向きな見方を堅持。同時に開発競争が激化する中、利便性の高い物流施設を供給するだけでは差別化が難しいとして、庫内オペレーションに関するビッグデータを収集・分析して業務効率化を助言するなど、テナント企業の収益改善に直結する新たなサービスを創出・提供していく決意を重ねて示した。

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山田社長

山田社長はプロロジスを含めたデベロッパーが軒並み力を入れているカフェテリアなどのアメニティー設備、ソーラー発電やLED照明などの環境配慮、BCP(事業継続計画)対応を目的とした免震・制震装置や非常用発電機の導入について、継続して取り組む必要性は認めながらも「既に標準スペックとなっており、ハード面での差別化は頭打ちと捉えていいだろう」と指摘。デベロッパーとしてもソフト面の対応に本腰を入れることが重要と明言した。

その一例として、テナント企業の負荷になっている膨大・煩雑な労務管理業務をデジタル化し、迅速かつ正確な庫内マネジメントを実現することを挙げた。具体的にはプロロジスの物流施設で働くスタッフにスマートフォン向けの勤怠アプリを提供し、出勤予定を事前に労務管理担当者へ送ってもらうことで作業の割り振りを適正に行えるようサポート。併せてアプリに登録された年齢や居住地などのデータを匿名化した上で、物流施設に勤める人の傾向をつかみ採用活動に反映させることも手掛けている。

山田社長は「ITを活用したスマートバースやスマートレセプション(自動入館受け付けシステム)の導入を検討している。トラックの待機時間短縮やスタッフの採用サポートなど(テナント企業の)ビジネスに活用可能なデータ提供を当社独自の付加価値と位置付け差別化を図りたい」と語り、物流施設がビッグデータやIoT(モノのインターネット)と親和性が高いとの見方を示した。

プロロジスが物流施設の機能をハードとソフトの両面で深化させる背景には、高齢化社会に伴う労働生産人口の減少といった外部環境に左右されない“選ばれる物流施設”を開発・提供していく意図が反映されているようだ。


入居企業向けサポートの一環として「雇用課題解決セミナー」を開催。テガラミルのHRソリューション部マネージャー・安藤信幸氏が「雇用定着」をテーマにプレゼンテーションした(今年5月、プロロジス提供)

EC拡大が開発ルールを劇的に変える?

今後の先進物流施設市場については「古い物流施設はスピードが最優先のECには対応できない。ECが増えていく限り大型の物流施設ニーズも拡大する」と需要の底堅さを重ねて強調。その一方でロボットなどによる庫内作業の省力化・省人化が進めば、主要なユーザーであるEC事業者や3PL事業者が人手確保の制約から開放され立地の選定も変わってくると見通した。

一つの仮説として「これまでは労働力を確保しやすい住宅地に近い所が中心だったが、無人化倉庫が実現すれば立地の選定は消費者に荷物を届ける運送事業者が利用しやすいことが最優先事項となるだろう。中長期的に立地はもとよりプロジェクト開発のルールも変わっていくと思う」との持論を展開し、EC市場の拡大が物流施設開発に劇的な変化をもたらす可能性にも言及した。

物流施設市場はプロロジスをはじめとする既存の専業プレーヤーや大手不動産に加え、近年は総合商社や生命保険会社など異業種による新規参入が相次ぎ、複数のユーザーに対応できるマルチテナント型施設の新設プロジェクトが数多く計画されている。特に関東圏はECを中心とする旺盛な需要から空室率は5%以下と全体的には満床に近い水準で推移している。

その半面、早期にプロジェクトを立ち上げて実績を挙げたい一部プレーヤーが相場を大幅に上回る価格で用地を落札するケースも見られる。

物流施設に詳しい不動産業界関係者は「独自性の高い魅力ある案件で優良顧客を獲得するプレーヤーがいる一方、過剰な価格競争を繰り広げているグループもある。その意味で物流不動産マーケットは前者のようなブルーオーシャン、後者に見られるレッドオーシャンに二極化しているといっても過言ではない」と分析する。

こうした見方について山田社長は「各社の戦略なのでどれが正しいかは判断が付きかねる。ただ事業性や相場観を無視したアクションによってマーケット全体が崩れてしまう危険性は否定できない。物流不動産ビジネスの健全・継続的な発展に向けてプレーヤーが正しい相場観と事業戦略を持つことが必要」と警鐘を鳴らした。

その上で「足元のマーケットは活況を呈しているが、個人的は東京オリンピックが終わるのを一つのきっかけに落ち着きを取り戻すのではないかとみている。プレーヤーはいずれ質を問われることになるだろう。当社としては引き続きテナント企業のニーズに密着したソリューション提供と計画の初期段階からプロジェクトに参画するリレーションシップを重視する」と語り、専用施設のBTS型開発にかじを切っていく戦略を継続する姿勢を鮮明にした。


「プロロジスパークつくば2」の完成イメージ(プロロジス提供)。同社はこれまでに全国で完成済みと着工済みのものを合わせて40棟のBTS型物流施設を手掛けてきた

(鳥羽俊一)

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