8割の省人化と50%の作業時間短縮を実現
Terra Drone(テラドローン)は7月15日、アンゴラの総合エネルギー企業Azule Energy(アズール・エナジー)が運用する同国沖合のFPSO (Floating Production, Storage and Offloading system、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)で、ドローンによる原油貯蔵タンクの非破壊検査を実施したと発表した。
検査はオランダに拠点を置くテラドローン子会社のTerra Inspectioneering(テラ・インスペクショニアリング) を通じて実施。自社開発の「Terra UTドローン」を投入した。
(テラドローン提供)
FPSOは原油・ガスを安定的かつ継続的に生産するため、定期的な保守点検・検査が不可欠。一方、船上では限られた人員体制で、生産作業と並行して検査作業を実施する必要があり、安全かつ効率的に検査を行う手段が求められている。
従来は、作業員が高所や閉鎖空間に立ち入る必要があり、労働安全上の課題となっていた。点検時には設備の稼働を一時的に完全停止する必要があり、生産性を低下させてしまうことも難題だった。
諸課題の解決に向け、テラドローンは「Terra UTドローン」を活用し、従来の人手による作業をドローンに置き換え、検査を実施。1基のタンクを点検するために必要な乗船者数を従来比でおよそ8割削減し、作業効率と生産性の向上を果たした。点検期間も約半分に短縮し、設備の稼働停止時間を最小限に抑えられた。
今回の検査は作業員の訓練および測定機器のいずれも、国際的な安全・品質基準「ABSクラス認定」を満たした体制で充当した。
近年、世界各地の地政学的リスクや空路物流の制限で海上輸送の重要性が高まっており、造船需要が拡大している。世界のFPSOの市場規模も伸びており、各設備に対する点検・保守の重要性は一層高まっていることから、テラドローンは今後も同様のドローンを使った点検ニーズに対応していく方針。
2027年夏までアズール・エナジーとの連携を継続し、同社が運用するFPSOの原油貯蔵タンクや各種設備の点検を担う。事業に中長期で携わることにより、テラドローンは、FPSOの運用における安全性の向上、省人化、生産効率の最大化に寄与することを目指す。
海洋エネルギー分野における持続可能な運用体制の確立を視野に入れ、今回の事業で得るノウハウを汎用的に活用し、ドローン技術の活用拡大を推進していく考え。
(藤原秀行)