帝国データ調査、全体では「約束手形支払い禁止」など理解広がる
帝国データバンクは7月25日、2026年1月1日施行の改正下請法と改正下請中小企業振興法に関する企業の意識調査結果を公表した。
有効回答数:3,845名
<規模の定義>
中小企業:中小企業基本法の定義(資本金と従業員数)に基づく
中堅企業:中小企業基本法における中小企業に該当せず、かつ従業員数が2,000人以下
大企業:従業員2,000人超

下請法の主な改正項目と内容
改正下請法の施行について57.4%が「知っている」と回答した一方、「知らない」は35.9%、「現在の下請法の内容も知らない」は6.8%だった。
「改正されることを知っている」と答えた割合を業種別に見ると、今回の改正で対象取引に加わる「運輸業」が71.2%で最も認知度が高く、「製造業」が59.4%と続いた。
規模別では、「大企業」が81.6%、『中堅企業』は85.6%と認知度が高い半面、「中小企業」は54.3%にとどまった。
地域別では、「近畿」が60.2%でトップだった。「北海道」は42.4%で全体と比較して認知度が15.0ポイント低かった。「北陸」「中国」「四国」も50%台前半にとどまり、地域差が見られた。

改正下請法の認知度

業種別・規模別・地域別の認知度
「改正されることを知っている」回答者に主な改正内容の認識を尋ねたところ、「知っている」と答えたのは「約束手形での支払いの禁止」(87.0%)、「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」(85.4%)が際立った。「従業員基準の追加」(65.7%)、「運送委託の対象取引への追加」(63.5%)、「面的執行の強化」(51.8%)も多かった。

主な改正内容の認識
「改正されることを知っている」回答者に法改正の影響を聞いた結果、発注者はマイナスの影響がプラスの影響を4.6ポイント上回った。受注者はプラスの影響が44.5%と過半には及ばなかったものの、マイナスの影響(6.6%)を大きく上回った。

改正下請法の影響
発注者が、プラスの影響を最も期待しているのは、「長期的なパートナーシップ」が51.5%とトップで、次いで、「コンプライアンス体制の強化によるリスク低減」が29.0%、「ブランド価値の向上」が11.5%となった。
マイナスの影響を最も懸念しているのは、適正価格で取引を進めることによる「利益の圧迫」が23.3%、次いで「社内でのコンプライアンス教育・研修負担の増大」が21.2%、「資金繰りの悪化」が19.4%、「システム対応」が12.8%だった。

発注者のプラス影響

発注者のマイナス影響
受注者の半数が「資金繰りの安定」「収益の安定化」を期待
受注者が、プラスの影響を最も期待しているのは、「資金繰りの安定」が29.8%とトップで、「収益の安定化」が21.9%と続いた。財務内容の改善につながる上位2項目の合計は51.7%となった。手形取引の減少や支払サイト短縮の先行実施や、価格転嫁の行動指針が出ていることが背景と考えられる。
マイナスの影響を最も懸念しているのは、「書類作成・監査対応など実務負担の増加」が23.3%で最多となり、「求められる価格と実際の原価が合わず、利益が出にくくなる」が21.1%、「手数料負担を強いられる」が14.3%と続いた。

受注者のプラス影響

受注者のマイナス影響
主要な取引先との価格見直しに関する協議の頻度については、年に1回以上実施している企業が42.4%を占めた。市場の変動に合わせて価格を見直す「受発注の都度」が35.1%となり、「年に1回以上」と合計すると77.5%に達した。
価格交渉が商習慣として定着しつつあるものの、「2~3年に1回程度」が10.7%、「3年以上実施していない」が3.5%と、労務費・原材料費・エネルギーコストが上昇する中、価格協議が適正頻度で行われていない企業もいることが判明した。

価格交渉の頻度
不公正だと感じる慣行や課題を聞くと、「一方的な価格の決定や据え置き」が42.0%で首位。「曖昧な納期設定や急な変更」(29.5%)、「手形による長期支払い・割引手数料の負担」(24.8%)、「不当な減額・返品」(20.8%)と続いた。
「一方的な価格の決定や据え置き」については、改正で対象取引に加わる「運輸業」が50.0%でトップ。帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(2025年2月)」で価格転嫁率は31.3%と対象業種の中で最低水準にとどまっており、課題をあらためて裏付けた。

不公正な慣行や課題
「改正されることを知っている」回答者に、改正が不公正な慣行の是正に寄与するか尋ねた結果、「寄与する」が62.1%(「非常に寄与する」6.8%+「ある程度寄与する」55.3%)に上った。帝国データは「本法の施行に対して、不公正な慣行の是正への期待がうかがわれる」と指摘している。

不公正な慣行の是正に寄与

法改正以外に必要なこと
企業からは下請法の適用対象拡大や、違反企業への罰則強化、監督官庁からの情報発信などを求める声があがった。

(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用



