トランプ関税日米合意の評価、企業の半数超が「判断できず」

トランプ関税日米合意の評価、企業の半数超が「判断できず」

帝国データ調査、自社への短期的な影響「ない」が36.9%

帝国データバンクは8月7日、米トランプ大統領による関税引き上げ(相互関税15%等)による影響と、日米間における関税交渉の合意に対する評価について、企業を対象に実施したアンケート調査結果を公表した。

日本政府が米国と「15%」で合意したと公表、8月7日に発動した「トランプ関税」に対し、短期的には「マイナス影響がある」と「影響なし」がほぼ拮抗しており、企業の間で見方が分かれていることを浮き彫りにした。

中長期的では「影響なし」が短期的な影響の見方より低くなった半面、「マイナス影響」や「分からない」の割合が上昇した。

今回のトランプ関税に関する日米合意を「評価しない」が28.1%で、「評価する」(16.0%)を10ポイント超上回った。合意内容に不明な点が残っていることから、「どちらともいえない」が半数を超えた。

調査は8月1~5日、インターネットを利用して実施し、1184社から有効回答を獲た。

トランプ関税が自社の事業活動へ与える短期的な影響(今後1年以内)について尋ねたところ、「マイナス影響がある」が37.7%、「影響はない」が36.9%となった。他方、「プラス影響がある」は0.9%にとどまった。「分からない」は24.5%だった。

さらに、中長期的な影響(今後5年程度)については「マイナス影響がある」が42.9%、「影響はない」が18.2%、「プラス影響がある」が1.6%で、「分からない」は37.2%だった。短期的な影響と比べると、中長期的には、「影響はない」が18.7ポイント下回る一方、「マイナス影響がある」が5.2ポイント、「分からない」が12.7ポイント高くなった。帝国データは「徐々にマイナスの影響や不透明感が強まると考える企業が増えている」とみている。

25年6月時点(相互関税10%で、上乗せ分は90日間の猶予中)に同様の設問で行った調査結果と比べると、今回の関税率15%の合意を受けて、短期的には「影響はない」企業が増え、「マイナス影響がある」「分からない」は減少しており、先行きに対する不安感が若干緩和されているという。

企業からは具体的なマイナス影響として「関税対策でアメリカ生産への移転傾向が出てくると、必然的に国内生産が減少する。設備投資計画について既に見合わせる会社も出てきた」(機械・器具卸売)との声が聞かれた。また、「直接の影響はないが、当社の顧客やその先で影響が大きかった場合は、ボディブローのように後から効いてくるかもしれない」と、影響はないとしながらも、間接的な影響が今後徐々に広がる可能性を上げる声も多く出ていた。

今回のトランプ関税に関する日米合意について自社として評価するか尋ねたところ、「評価しない」は28.1%で、「評価する」(16.0%)を12.1ポイント上回った。「どちらともいえない」は54.3%と半数を超えた。

「評価する」企業からは、「早期の妥結を評価」(専門サービス)、「よくやったと思う。結果だけみれば同じ率で合意した国は他にもあるが、途中で機嫌を損ねればもっと悪い結果も有り得たはず」(飲食料品・飼料製造)と、政府の粘り強い交渉による早期の合意を評価する声があった。

一方で、「評価しない」企業からは、「関税の15%という数字自体は仕方ないが、投資部分の詳細や、プラス条件の内容が不明確で、本当にこれで良いのか疑問が残る」(飲食店)、「もともと自動車は2.5%だったものをトランプ大統領が独断で25%という数値を出し追加してきた。それが15%になるからといって評価はできない」(家電・情報機器小売)と、不明確な合意内容や関税率自体への不満が示された。

「どちらともいえない」企業からは、「明文化されていない合意は評価自体ができない」(不動産)、「二転、三転があるかもしれず油断ができない」(電気機械製造)と、将来的に不明な部分が残っていたことを指摘する意見が見られた。

<参考> 企業からの声
「マイナス影響」
・アメリカの商社を通じて各国の製品を輸入しているため、大幅なコスト上昇のリスク要因となる(機械・器具卸売)
・国内生産が減り海外製品が輸入されると、中小の製造業者は打撃を受ける(鉄鋼・非鉄・鉱業)
・北米工場のアッセンブリー製品について、構成部品が日本など海外から供給されるものがあり、影響を受ける。顧客との交渉でどうなるのか不透明(輸送用機械・器具製造)
・自動車関連企業であるため影響は大きい(機械製造)
・自社は物流会社のため関税15%が直接は影響しないが、顧客が15%の関税をアメリカで課せられると、物量が確実に減る(運輸・倉庫)
・政府には関税の影響を押し止めるべく、減税や優遇税制、助成金・補助金の提供など、内需拡大策を取ってほしい(情報サービス)

「影響はない」
・関税に関係ない業種なので特段影響はない(建材・家具、窯業・ 土石製品卸売)
・現状アメリカに輸出する物、輸入する物はともにないので直接的な影響はない。しかし、一次卸などに影響があれば、次第に値上げなどの話が来るかもしれない(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)
・関税が15%になったことで、円安が継続、もしくは円安傾向が加速すれば、物価高騰につながり、国内景気の停滞が懸念される(飲食店)
・各国間の輸送が混乱し欠品が発生するなど、目にみえにくい現象がボディブロー のように各社の業績へ悪影響を与える(飲食料品・飼料製造)
・アメリカの関税措置で、アメリカ国内の物価が上昇し景気後退の局面になると、それが全世界に波及する懸念がある(メンテナンス・警備・検査)

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

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