転居情報を自治体に提供する対象拡大、26年度開始へ準備
日本郵便は、建物の一部が壊れたまま放置するなど適切な管理が成されていない空き家の持ち主を自治体が追跡し、対策を求められるよう支援するため、2026年度から転居情報を自治体へ提供することを始める方向で準備している。
国内で持ち主が分からない物件は約4万7000件に上り、倒壊の危険があって周囲の住民の安全を脅かしたり、ごみが散乱して不衛生になったりと社会問題化している。日本郵便は自治体の対応を後押しし、より安全な住環境の整備に貢献したい考え。
ただ、郵便法は郵便物の内容や差出人・受取人の住所などの個人情報を保護するよう義務化している。そのため、提供に際しては情報提供する利益が秘密補助の利益を上回ることが明らかなことなどを条件にする予定。
日本郵便は、2015年施行の空き家対策特別措置法に基づき、自治体がそのまま放置すると倒壊や著しい衛生上の問題、景観の著しい損害を引き起こす恐れのある空き家と認定した「特定空き家」の物件について、既に2020年から自治体に持ち主の転居情報を提供している。
特定空き家の持ち主は自治体からの勧告や命令に従わないと罰金を科されたり、行政代執行による解体の費用を請求されたりすることがある。日本郵便はこの特定空き家について、自治体から照会があれば無償で対応している。
政府は23年に同法を改正し、適切な管理が行き届いておらず放置すれば特定空き家になる恐れがある空き家を自治体が「管理不全空き家」に認定、早期の対策を促せる制度を導入した。自治体からの適切な管理の指導・勧告に持ち主が応じなければ、固定資産税の軽減措置対象外となる。
日本郵便は26年度から、この管理不全空き家についても、転居情報の提供対象に加えることを念頭に置いている。空き家の持ち主が住民票や不動産登記は変更していなくても、郵便局への転居手続きは済ませている場合があるため、全国の郵便ネットワークを通じて管理している情報を活かせるとみている。
管理不全空き家は壁や屋根、塀などが壊れたり腐食していたり、雑草や枯れ草が大量にあって病害虫が発生する危険性があったり、敷地内にごみが散乱・放置されていたりする状態を指す。日本郵便は管理不全空き家については、自治体からの照会に対して1件当たり手数料を設定することを検討している。
(藤原秀行)