軽井沢で渋滞・防災などの課題解決へドローン物流の実証実験

軽井沢で渋滞・防災などの課題解決へドローン物流の実証実験

アルピコHDやエアロネクスト、セイノーHDなど参加、災害時も使える「フェーズフリー」実現目指す

長野県を中心に交通や観光、小売などの事業を展開するアルピコホールディングス(HD、長野県松本市)と傘下で食品スーパーを運営しているデリシア(同)、セイノーホールディングス、同社グループで宅配事業を担うココネット、エアロネクスト、同社傘下でドローン物流などを手掛けるNEXT DELIVERYの6社は12月18日、長野県軽井沢町で12月16日に、新スマート物流「SkyHub」(スカイハブ)の仕組みを活用した物流ドローンによる輸送の実証実験を共同で実施したと発表した。

アルピコHD、セイノーHD系のセイノーラストワンマイル、エアロネクスト、NEXT DELIVERYは今年2月、新スマート物流を長野県全域へ拡大し地域課題の解決や地域経済の活性化を図ることを目的とした業務提携を締結した。今回の実証実験もその一環。




実証実験に使用するドローン「PF4」を前に撮影に応じる(左から)エアロネクスト・田路圭輔社長グループCEO(NEXT DELIVERY代表取締役兼務)、アルピコHD・佐藤裕一社長、セイノーHD・河合秀治専務執行役員


「PF4」にデリシアネットスーパーの信州牛の肉や信州みそ、生鮮食品などの荷物の入った専用箱を取り付けるココネットのスタッフ(デリシア軽井沢店駐車場)


デリシア軽井沢店からライジングフィールド軽井沢に向かって飛行する「PF4」


ライジングフィールド軽井沢で荷物の入った箱を切り離し、置き配する「PF4」


荷物を受け取ったライジングフィールド軽井沢スタッフの池田佳史氏。「夏季の活用はもちろん、大雪など災害時に支援物資の拠点ともなり得る」とコメントした

目的と内容

長野県におけるドローンを活用した新スマート物流の事業展開の中でも、次世代物流インフラの構築を推進する目的。軽井沢町における交通渋滞対策、少子高齢化による買物困難への対応、防災力強化などの地域課題の解決に貢献することを目指してドローンを活用した新スマート物流の本実証を実施。
 具体的には、物流専用ドローンを活用し、地域のスーパーを拠点として位置付け、災害発生を想定し老人福祉施設、キャンプ場に食料品を配送。新スマート物流の地域における社会実装を目指し、平時・有事に備えたドローン配送ルート構築、ドローン配送運航体制構築、ドローン配送の住民受容性の向上などに資する取り組みを実施。

実施日

2025年12月16日(火)

飛行ルート数と飛行回数

以下の2ルートに各1回往復の配送飛行を実施。
 ・デリシア軽井沢店から軽井沢町老人福祉センター間
 ・デリシア軽井沢店からライジングフィールド軽井沢間(当日メディア公開)

使用機体

物流専用ドローンPF4*3。

ドローン運航方法と体制

現地での機体管理と補助者業務、遠隔運航管理(山梨県小菅村)はNEXT DELIVERYが実施。運航管理システムを使った配送予約と荷物の搭載はデリシア軽井沢店のネットスーパー配送を担当するココネットの配送スタッフが実施。両者が連携し、自動遠隔運航による飛行を行う。

配送物

デリシアネットスーパーで扱う商品の中から、食料品を配送

各社の役割

アルピコHD:実証実験全体のプロジェクトマネジメント

デリシア:商品提供、ネットスーパー業務、運航補助

セイノーHD:ラストワンマイル物流サービス・配送ノウハウの提供

ココネット:ネットスーパーで注文を受けた商品の配送を担当

エアロネクスト:新スマート物流SkyHub®︎の仕組み提供
NEXT DELIVERY:運航オペレーションにおける遠隔運航と全体管理


2025年2月の業務提携時に発表した新スマート物流の事業展開イメージ図。今回の実証は赤枠の部分に該当



実証実験の結果、観光シーズンに深刻化する交通渋滞に対し、食品や日用品をドローン配送することで、買物による車移動を減らし、渋滞緩和とCO2削減に寄与することなど、効果を確認した。

今回の結果を踏まえ、新たな配送チャネルとして物流ドローンを活用し、買物困難者の利便性向上とラストワンマイルの最適化を図るほか、デリシア軽井沢店を防災拠点(支援物資供給倉庫)として活用し、災害時の物資輸送や避難所支援にドローンを活用することで、平時と災害時の両方でドローンを生かす「フェーズフリー型物流基盤」の構築を目指す。

今後はインターネットスーパーで受け付けた商品を、顧客の要望に応じて空路で配送する仕組みを実現させていきたい考え。現在、ネットスーパーで注文を受けた商品は軽貨物自動車で配送しているが、山間部を遠回りして時間を要し、有料道路を使う経路もあり、確保できる配送リソースが限られたり、コストが追加で発生したりするため、注文口数を増やせずにいるのが課題だった。

空路を活用しドローンで商品を届けることにより、省人化に加えて、買物に行けない人や渋滞で買物を断念せざるを得ない人にも商品を届けられる体制を構築し、日常時は生活利便性向上、災害時は緊急物流プラットフォームとして機能するフェーズフリー型の物流体制を軽井沢町に実装することを目指す。

(藤原秀行)※いずれも6社提供

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