ヤフーとプラスが反対、EC赤字で事実上の解任
※12時すぎに配信した記事を大幅に差し替えました
アスクルは8月2日、東京都内で定時株主総会を開いた。
会社側が提出した議案のうち、岩田彰一郎社長と独立社外取締役の戸田一雄、宮田秀明、斉藤惇の3氏の再任について、約45%のアスクル株式を所有し資本・業務提携しているヤフーと約1割の株主を握る第2位株主のプラスがそろって反対の議決権を行使、賛成少数で否決された。
アスクルが展開している個人向けインターネット通販「LOHACO(ロハコ)」で赤字が続いていることを問題視したヤフーによる事実上の解任となった。
総会後、岩田氏は報道陣に対して自らコメントし、同氏を含む4人の再任反対は大変遺憾としながらも、株主の決定を重く受け止めると表明。「本日をもってアスクルの経営から離れる」と明言し、社長退任後は少数株主としてアスクルの経営を注視していく姿勢を強調した。
株主総会の会場となった都内ホテル
ヤフー出身の社外取締役「再任反対は苦渋の選択、赤字はゆゆしき緊急事態」
総会ではヤフーとアスクルの対立に関して株主からの質問が相次ぎ、終了まで約2時間を要した。アスクルの小澤隆生社外取締役(ヤフー常務執行役員)は株主からの質問に回答し、ヤフーが岩田氏らの再任に反対した背景として「苦渋の選択であり、アスクルの企業価値最大化のために今はやむにやまれずやっている。LOHACO(ロハコ)事業が90億円の赤字になっておりゆゆしき緊急事態と考えている」と説明。今後もアスクルの経営の独立性に配慮しながら収益改善を後押しする姿勢を強調した。
これに対し、岩田氏は「ロハコはヤフーとの共同事業として行っており、情報も共有している。なぜそこまで緊急なのかは私も疑問」と不快感を示した。社長を退任した後のアスクルに対しては「アスクルは22年間、お客さまを向いて進化していこうと努めてきた。これはアスクルの遺伝子であり企業文化。一朝一夕では壊れない。私がいなくなっても企業の風土、文化は変わらないと思っている」と述べ、エールを送った。
岩田氏は総会の前に、ヤフーとの資本・業務提携契約は著しい契約違反があった場合にはヤフーにアスクル株式の売り渡しを請求できる権利が明記されていると主張していた。8月2日午後に選出される見通しの新社長がヤフーとの提携解消に向け権利を行使して対立を深めるのか、それともヤフーと何らかの歩み寄りを見せるのかが焦点となる。
(藤原秀行)