ウイングアーク1stが中小物流企業の運送業務関連者対象調査
ウイングアーク1stは11月22日、従業員300人未満の中小物流企業で運送業務に携わる配車担当者ら513人を対象とした、物流業界におけるデジタル化の推進実態調査結果を初めて取りまとめた。トラックドライバーは対象に含めていない。
政府が2025年度から順次施行する改正物流総合効率化法(施行後は名称を物資流通効率化法に変更)で、荷待ち・荷役時間の短縮を荷主企業や物流事業者に義務付けることを受け、強く求められている荷待ち・荷役作業時間の完全可視化を達成できている割合は1割にとどまった。法施行を前に、デジタルツールの普及などが急務となっていることをうかがわせた。
調査名称:物流業界におけるデジタル化の推進実態調査
調査方法:オンラインアンケート
調査期間:2024年10月22~23日
有効回答:中小企業(従業員数300名未満)で運送業務に携わる513人
※合計を100%とするため、一部の数値について端数の切り上げ処理を行っている。実際の計算値とは若干の差異が生じている場合がある
物流業界の見積り・受注・請求の懸念・障壁を聞いたところ(複数回答可、n=513)、「人手不足・人員体制」が61.2%で断トツのトップとなった。「アナログ作業が中心のため作業ミスが起こりやすい」が26.5%、「やりとりが紙や電話が中心のため伝達ミスが起こりやすい」が22.0%と続き、業務のDXが遅れていることが具体的な弊害になっている様子が見られた。
配車・運行計画に関する懸念・障壁(同)についても、「人手不足・人員体制」が61.4%、「アナログ作業が中心のため作業ミスが起こりやすい」が20.1%、「計画作業や帳票作成がアナログ中心で負担が多い」が18.7%と同様の傾向が示された。
集荷・輸送・検収の懸念・障壁(同)に関しても「人手不足・人員体制」が59.6%が首位。次に多かったのが「ドライバーが荷待ちや荷役にどのくらい時間がかかっているか不明なこと」で32.0%、「目視確認が多く積込時の検品ミスが多い」が23.8%に上った。少なくない企業でドライバーの具体的な作業時間を十分把握できていない姿が浮かび上がった。
上記の3問のいずれかで「人手不足・人員体制」と回答した人に対し、「人手不足・人員体制が不足していることから、退職を視野に入れたことはありますか」(n=358)と尋ねたところ、「はい」が41.4%、「いいえ」が49.7%と分かれた。人手不足や人員体制の不備を改善できないと定着率低下につながりかねないことを示唆した。
同じ人に「具体的に行われているアナログ作業」を教えてもらったところ(複数回答、n=358)、「ドライバーとの電話」が51.1%、「運転日報の作成」が48.0%、「労働時間の管理」が46.6%だった。
荷待ち・荷役作業時間をどの程度可視化できているかとの設問(n=513)には、「完全に可視化されている」が10.4%、「一部のみ可視化されている」が30.4%にとどまった。半数以上が十分可視化できていないことが分かった。
「完全に可視化されている」「一部のみ可視化されている」と回答した人に、具体的にどのような方法で計測しているかを聞くと(複数回答可、n=209)、「デジタルシステムを利用した自動計測(GPSや電子タコグラフなど)」が50.7%、「手動での記録」が31.1%、「ドライバーによる報告(スマートフォンアプリなど)」が31.1%となった。
荷待ち・荷役作業時間を可視化する上での課題を聞いたところ(複数回答可、n=513)、「ドライバーからの報告の不正確さ」が27.3%、「手作業が多いことによるデータの正確性・即時性の欠如」が25.3%、「荷主側の情報共有や設備面での協力不足」が23.0%で目立った。
荷待ち・荷役作業時間の短縮のために、効果的だと考える対策を選んでもらった結果(同)、「ドライバーの待機時間を削減する計画の見直し」が42.1%、「荷役作業の効率化(作業手順の改善、機器の導入など)」が28.5%、「バース予約システムの導入による待機時間の削減」が20.3%と続いた。
荷待ち・荷役作業時間の可視化が進むことで、期待される効果を尋ねると(同)、「ドライバーの労働時間管理と負担軽減」が64.1%、「作業効率の向上」が48.0%、「配車・運行計画の最適化」が42.1%となった。
自社の見積り・受注・請求/配車・運行計画/集荷・輸送・検収業務におけるデジタル化はどの程度進んでいるか評価してもらった(シングルマトリクス、n=513)結果は、見積り・受注・請求は「10%未満」が15.0%、配車・運行計画は「10%未満」が16.6%、集荷・輸送・検収業務は「10%未満」が15.2%。いずれの業務も1割ほどにとどまっていることが浮き彫りとなった。
物流業界の人手不足問題に対して、デジタル化での解決はどの程度期待できるか聞くと(n=513)、「非常に期待できる」、「やや期待できる」の回答が36.7%だったのに対し、「あまり期待できない」、「全く期待できない」の回答は48.7%に達し、期待感の低さを示唆した。
この設問で「非常に期待できる」「やや期待できる」と回答した人に、期待できる理由を追加で答えてもらったところ(複数回答可、n=188)、「アナログ作業が減ることでミスが減るから」が59.6%、「働きやすい職場となり働く人が増えるから」が39.9%、「業務の工数が削減できるから」が38.3%で、ミス削減に大きな期待が寄せられていることを感じさせた。
同社物流プラットフォーム事業開発部の加藤由貢部長は「多くの人がデジタル化をあきらめているとの印象を受けるが、業界全体をデジタル化しない限り、今後の物流業界の進化は見込めず、人手不足やアナログ管理も解決できない。オンラインサービスの利用などをぜひ検討してほしい」と強調している。
(藤原秀行)※いずれもウイングアーク1st提供