【独自取材】「経済の先行き不透明感も物流施設需要は底堅い」

【独自取材】「経済の先行き不透明感も物流施設需要は底堅い」

ラサール不動産投資顧問・永井執行役員インタビュー(前編)

ラサール不動産投資顧問で物流施設開発を担う永井まり執行役員はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

永井氏は米中貿易摩擦などの影響で世界経済の先行きに不透明感が出ているものの、先進的な物流施設への需要は今後も底堅く続くと予測。首都圏や関西圏を中心に引き続き幅広く投資機会を探っていく考えを示した。

また、テナント企業の要望に沿って施設を造り込んでいく意向を強調するとともに、自動化・省人化のニーズにもきめ細かく目配りしていく姿勢を見せた。2回に分けて永井氏のインタビュー内容を紹介する。


インタビューに応じる永井氏

消費地エリアにtoC用倉庫整備が当社の使命

―今年5月末に川崎市の臨海エリアで、三菱地所やNIPPOと共同開発してきたマルチテナント型物流施設「ロジポート川崎ベイ」が完成しました。延べ床面積は東京ドーム6個余りに相当する29万6780平方メートルで1棟単独としては国内最大級の規模を誇ります。
「おかげさまでこれだけの規模にもかかわらず、完成当初から100%契約いただくことができました。今回は大型施設ということもあり建築工事も通常より期間が長めになっていたので、その分リーシングに時間をかけることができたこともプラスになったのかなと思います」

―共同開発ですが、御社にとって1つのメルクマールとなる施設になったのでは?
「そう思いますね。今回の施設に関しては臨海部に位置しているので40フィートや45フィートの大型コンテナを積載したトレーラーがスムーズにアクセスできるようにしようとか、一部は低床にして多様なオペレーションに対応できるようにしようとか、さまざまなことを検討してきました。そうした姿勢をご評価いただけた部分はあったのではないでしょうか」


「ロジポート川崎ベイ」の外観(ラサール不動産投資顧問プレスリリースより引用)

―2019年は物流施設への投資はどの程度進めていきますか。
「具体的な数字は申し上げられないのですが、物流施設に関しては19年も着実に投資は進んでおり、実績も順調に積み上がっています」

―メーンはやはり首都圏ですか。
「首都圏と関西圏がやはりニーズが大きいですし、情報も多く集まってきます。イメージとしては投資のうち首都圏が6割、関西圏が3割、それ以外のエリアが1割という感じですね。ただ、福岡などでも用地がありませんかといったご相談はよく頂戴しています」
「当社が手掛けている物流施設はほぼ消費に絡む物流向けです。その意味では消費が旺盛なエリアに立地することが重要ですし、少子高齢化もあって物流の量全体は今後も大きく伸びることは見込みづらいですが、配送の高頻度・小口化はeコマースの利用拡大でますます進むと思います。そうしたニーズに対応するには、前述のような都市部に物流施設を整備し、提供していくことが当社のミッションではないかと思っています」

―投資対象はやはり大型の物流施設が中心でしょうか。
「テナント企業の方々のニーズをうまく拾える物流施設への投資を細かく検討していきますので、やはり規模感としてはある程度大きくなければ開発の効率が悪くなってしまいます。用地としては4000~5000坪程度をめどとしていますので、仮に容積率が200%だとすると延べ床面積で1万坪くらいは目指したいですね」

―容積率を最大限活用し、大型の施設を開発するというイメージでしょうか。
「必ずしもそうではありません。例えば、当社が以前埼玉県狭山市で関東運輸さん向けの専用施設として手掛けた物流施設は3階建てで、容積率を全て使い切ってはいません。また、今年の8月に茨城県つくばみらい市で完成したばかりのOOCLロジスティクス・ジャパンさん向け専用施設『OOCLロジスティクス新守谷』も2階建てで、容積率は消化しきらず、お客さまの使いやすい施設とすることを最優先しています。大型が絶対ということではなく、ニーズがあれば中小型サイズの物流施設も検討します」

―規模は追いつつも、メーンはいかにテナントが利用しやすい施設にするかという点に置くということですね。
「そうですね。いくら規模を大きくできるとしても、お客さまのニーズがない施設を造るという判断はできません。もちろん先ほどもお話ししたように、お客さまのニーズがあれば5階建てでもいいと思いますが、そうした場合でも柱のスパンをどの程度に設定するのか、空調設備を事務所スペース以外にも導入していくのか、どのエリアを選定すれば労働力を確保できるのか、といったことを十分考えていく必要があります。規模を大きくするということに関しては強気にはなれません」

―首都圏で開発エリアは都心部を重視しますか。
「今後eコマース市場がますます成長していくと見込まれるのに加え、いわゆる中食(総菜や弁当など調理済み食品を自宅に持ち帰る食事の形態)も市場規模が拡大し続けていることを考えると、やはり配送拠点として重要になる国道16号より内側、あるいは外環道と国道16号の間のエリアには結構頑張ってでも投資していきたいなとの思いはあります」

―新たな物流施設開発が続いてきた圏央道エリアはいかがでしょうか?最近は空室率の上昇傾向が見られ、開発サイドも以前より慎重になってきているように思えます。
「当社としてはまだ全然投資可能なエリアだと思っていますが、どうしても他の幹線道路エリアに比べて人手確保が難しい面はあります。そういう意味では庫内作業の機械化を考えておられるテナント企業などのニーズはあると思いますので、投資するに当たってはそのあたりの動向をしっかりと見極めた上で規模などを検討していくことになるでしょう」


「OOCLロジスティクス新守谷」の外観(ラサール不動産投資顧問プレスリリースより引用)

景気後退リスク対応で契約長期化を推進

―需要、供給ともにハイレベルが続く物流施設ですが、米中貿易摩擦などの影響で景気の先行きに対する不透明感が強まっています。物流施設開発にとってもリスクでは?
「景気の先行きに関しては、そうしたことが言われて久しい気がしますが、現状では世界経済は基本的にゴルディロックス(適温)の状況が続いていますし、仮に景気減速があったとしても大きく崩れることはないのではないでしょうか。当社が手掛けている物流施設はtoCがメーンですので、消費が著しく落ち込まない限りは倉庫スペースががら空きで誰も使ってくれないという深刻な状況にはならないと思います」
「もちろん、もう少し長い時間軸で見ていけば人口減少などの影響は出てくると思いますが、その一方でeコマースはシニア層でも利用が広がっています。技術革新も追随していくことでより使いやすくなるでしょう。先ほどもお伝えした通り、物流の絶対量は増えていかなくても頻度はやはり拡大していく方向なのではないか。需要は引き続き見込まれると思いますので、場所や規模など、どういった倉庫スペースが必要とされるのかをきちんと把握していくことが重要です。一度物流施設を建設すれば数十年は使い続けることが前提となりますから」
「景気後退リスクへの対応としては、物流施設の賃貸借契約を長期化することが挙げられます。そうすればかつてのリーマンショックの時のように、資金供給が絞られて一斉に開発がストップしてしまうというような状況には陥らないでしょう。長期契約で安定的に収益を生み出すことができますし、施設運営の面でテナント企業の皆さまにもご負担やご心配をお掛けしなくて済みます」

―契約長期化はテナント企業にも受け入れてもらえる環境でしょうか。
「省人化、自動化への対応を強く考え、マテハン設備や情報システムに一定の投資を計画されているお客さまは長期で賃貸借契約を結ばれ、その期間中に償却を確実に終わらせたいとおっしゃる方もいらっしゃいます。そのニーズに合致すれば長期化は可能です。もちろん当社としても全ての契約を長期化するというわけではなく、お客さまのご要望に沿う形で進めていくのが基本です」

(藤原秀行)

後編:【独自取材】「使いやすい倉庫づくりは決して譲らず死守する」

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