【独自取材】「物流テック」で日本を変革する④CBcloud

【独自取材】「物流テック」で日本を変革する④CBcloud

迅速に届く“モノのMaaS”広めたい・松本隆一代表取締役CEO

人手不足をはじめ課題満載の物流業界を先端技術で変革しようとする動きが広がっている。ロジビズ・オンラインはそうした潮流を継続してウオッチし、プレーヤーたちの熱い思いを随時お伝えしている。

第4回は、軽貨物とトラックのマッチングサービス「PickGo」を展開するなど、ITを駆使し現場のドライバー目線で開発した業務支援サービスを次々とリリース、ユーザーの厚い信頼を集めている2015年発足のスタートアップ企業CBcloudにフォーカスを当てる。「運送業界を単なる足回りではなく、社会を支える重要なインフラとの認識を持ってもらえる存在にしたい」との思いが、数々のハードルを飛び越える原動力となっている。


インタビューに応える松本氏

現場の声積み上げた「ボトムアップ」で業界を変えたい

「社会のインフラとして機能しているトラック運送の意義を世の中に訴えていけるような魅力付けをしたい。そのために常にボトムアップで業界を変えていきたいと一貫して考えてきた」。CBcloudの松本隆一代表取締役CEO(最高経営責任者)は、自身もかつて運送業界に深く携わり、苦労を積み重ねてきた経験を踏まえ、現場のドライバーに寄り添ったサービス開発が不可欠との持論を展開する。

その代表的存在が、16年にスタートし、17年に現在の名称へ変更した軽貨物とトラックのマッチングサービス「PickGo」だ。単に仕事を仲介するだけでは「早い者勝ち」になってしまい、ドライバーのやる気を引き出すことにはつながらないとの思いから、サービスに登録しているドライバーが定時通り荷物を運べているかという速さに加え、礼儀正しさや荷扱いの丁寧さ、外見の清潔さなどを踏まえた仕事ぶりの評価も明示している。過去に仕事を発注した荷主サイドからの声で評価は決まる。

マッチングの際には仕事を引き受けたいとエントリーした各ドライバーの評価が同時に表示されるため、必然的に高評価のドライバーが選ばれるようになる。そこでドライバーはより自分の仕事ぶりを良くしようと努めるようになる。好循環を生み出す仕組みとなっているのだ。

「軽貨物を扱うドライバーは個人事業主が多く、安定的に仕事量を確保するのも大変。まずは基盤をしっかりと固めることをお手伝いしたかった。荷主企業にとってもプラスになる。加えて、一生懸命汗をかいているドライバーを評価できるプラットフォームを構築したかった」と松本氏は胸中を吐露する。


PickGoサービスを紹介するCBcloudウェブサイト

既にさまざまなメディアで伝えられている通り、松本氏は高校を卒業後、航空保安大学校を経て国土交通省に入り、航空管制官として羽田空港に勤務。その後、義父の運送会社を継承し、自らトラックのハンドルを握ることもあったというなかなかの波乱万丈なキャリアをたどっている。

「荷主の発言力が強く、下請けの運送会社に意思決定の権利がないに等しい」「一生懸命頑張っているドライバーを適正に評価し、運賃に反映する仕組みがない」…。日々の業務の中で味わってきた数々の理不尽が、個人ドライバーの待遇を抜本的に変革しなければ未来はないとの確信を生み、CBcloud誕生につながっていった。

PickGoは既に直近で登録ドライバーが1万5000人を突破。都市部だけではなく、地方エリアでも順調に登録者数を伸ばしている。松本氏ら同社メンバーたちの信念が現場に高く評価されている証と言えるだろう。

CBcloudは他にも、18年に一般貨物の領域を対象とし、AI(人工知能)やブロックチェーン技術を活用した動態管理システム「ichimana(イチマナ)」をリリース。車両とドライバーの位置情報や作業情報をリアルタイムで確認できるようにした。現在は運送事業者に初期費用無料でリリースしており、事業環境の厳しい事業者の経営健全化を後押ししていこうと意欲を見せている。

配達先の属性データを取ることで、不在で再配達を強いられる割合が下がる配送ルートを自動的に考案してくれる機能も有する。松本氏は「紙に手書きで計算して、というような旧来のやり方だけでは、事業者の方々も効率が良くないし、そもそもデジタルネイティブの若い人に『ここは自分たちが働く場ではない』と敬遠されてしまう」と指摘。経営効率化と雇用確保の両面から、こうしたデジタル化を進める必要があると力説する。

積極的に連携を実現

CBcloudの最近の特徴として、他企業と積極的に連携を実現していることが挙げられる。今年の7月には、ソフトバンクやイオン九州と協業し、国内で初めてインターネットスーパー向けの夜間配送を開始。ソフトバンクとは資本・業務提携も締結している。

8月には佐川急便とも資本・業務提携を発表。共同で独自の軽貨物チャーターのマッチングサービス「軽マッチング」に着手。CBcloudのPickGoも活用し、荷主とドライバーをより円滑に結び付けようとしている。佐川としても、優良なドライバーの協力を得て、宅配以外の輸配送サービスを拡充させていくことを展望している。

さらに大きな前進となりそうなのが、今年9月に始めた全日本空輸子会社のANA Cargo(カーゴ)との提携だ。同社の空輸網とPickGoで築いてきた全国の陸送網を接続。国内の羽田など主要7空港を利用可能な空陸一貫輸送ネットワークが立ち上がった。サービスサイトで発地と着地、荷物の種類などを必要最低限の情報を入力すれば、距離や所要時間、料金の見積もりをスピーディーに表示。利用者はリードタイムやコストをにらみながら、その時々で最適の輸送ルートを選べる仕組みだ。

全国にドライバーの協力関係を広められていることが、ANAカーゴとの連携実現にこぎ着ける大きな決め手となった。松本氏らの地道な努力が実を結んだといえる。

松本氏は「自分たちも新サービスに取り組んでみて初めて分かったことだが、空路と陸路を組み合わせれば、実は航空便がそこまで驚くほど料金が高くないと実感できた。ルートによっては料金が大幅に下がり、当社にとっては実は収益だけ見ればマイナスの部分もあるが、現場を変革したいとの思いが強い。今回のサービスは地方経済の活性化にもつなげられる」と意義を語る。

昨今はスマートフォンで鉄道やバスなどを最適に乗り継げるようサポートする次世代の交通サービス「MaaS(Mobility as a Service)」が脚光を浴びている。松本氏は「空陸一貫輸送を展開することで、われわれとしてはいかなる時も最適な条件で荷物を届けられる『モノのMaaS』を提供したい」との思いを説明してみせた。MaaSをより高い次元に持っていくために、航空便のほか、今後は船便やオートバイ、自転車といった他の輸送モードと連携していくことも視野に入っていきそうだ。


空陸一貫輸送サービスのサイトイメージ(CBcloud提供)※クリックで拡大

沖縄の“眠れる獅子”に期待

直近はJR東日本グループでスタートアップ企業支援を手掛けているJR東日本スタートアップと提携、11月にはJR東日本物流も加わり、東京駅の手荷物預かり所で受け取った観光客らの荷物を、当日中に指定されたホテルまで届ける「エキナカ次世代手荷物配送」の実証実験をスタートした。

今回もPickGoの登録ドライバーが手荷物を運ぶという“手ぶら観光”のラストワンマイルを担う。3社は増え続ける訪日外国人の負荷軽減による観光振興と同時に、ドライバーに仕事を提供するという狙いを両立できるかどうかを見極めていく考えだ。

今後の展開については松本氏もまだ明らかにしていないが、JR東グループは新幹線を使い新鮮な青果物などを輸送することを試行しており、“新幹線物流”のラストワンマイルを担い手としてCBcloudが活躍する可能性もありそうだ。

前述のJR東日本スタートアップに加え、沖縄の有力地銀、琉球銀行系ベンチャーキャピタルや地元紙の沖縄タイムスともタッグを組み、沖縄県経済にも貢献したいと意気込んでいる。自身の出身地でもある沖縄での取り組みについて、松本氏は「日本で人口が増えている数少ないエリアの1つが沖縄。“眠れる獅子”のような人材がたくさんいらっしゃると思うので、力を発揮できるような場を作りたい」と狙いを説明している。

「ドライバーが単なる足回りではなく、社会を支える重要インフラだと見てもらえるような存在にしたい。そのために、ドライバーの方々に“使わせる”のではなく、あくまで自発的に“使う”ことを選んでもらうサービスとなる必要がある」。繰り返し、ボトムアップ型の変革を志向する背景を力説する松本氏。その汗をかくことをいとわない手法は、物流業界の深刻な人手不足を救い、現場のドライバーたちの意識を変えていくための重要なヒントとなっている。


本社オフィスで撮影に応じる松本氏

(藤原秀行)

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