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【再録!ロジイベント】国交省が「運輸事業の安全に関するシンポジウム2019」を開催(10月1日)

【再録!ロジイベント】国交省が「運輸事業の安全に関するシンポジウム2019」を開催(10月1日)

頻発する自然災害、平時の対応が重要との認識を共有

国土交通省は10月1日、東京・世田谷の昭和女子大人見記念講堂で「運輸事業の安全に関するシンポジウム2019」を開催した。

シンポジウムは国交省がJR西日本の福知山線脱線事故などを受け、2006年に「運輸安全マネジメント制度」を導入して以降、事業者が主体的に安全対策を推進する機運を醸成するため、毎年行っている。

今回は「運輸安全マネジメントによるリスク管理の強化~自然災害にどう向き合うか~」をテーマに据え、事業者が近年頻発する大規模災害への対応に腐心していることを報告。組織内に安全重視の精神を根付かせておくことや、関係機関との関係を強化しておくことなど平時の対応が重要との認識を示した(登壇者の役職などはいずれもシンポジウム開催当時のものです)。


1000人超が集まったシンポジウム会場

経験と知恵を社会で共有する「災害文化」復活を

シンポジウムでは、主催者を代表して冒頭に国交省の青木一彦副大臣があいさつ。運輸安全マネジメント制度が円滑に機能するために民間の運輸事業者らが協力していることへの謝意を表明した。

続いて、国交省の内山正人運輸安全管理官が同制度の現況を報告。19年度の事業者の取り組みを評価する際の重点確認項目に自然災害やテロへの対応、人材不足に伴う従業員の高齢化や厳しい経営環境に起因する設備の老朽化への配慮などが含まれていると指摘した。

自然災害への対応を促すため、取り組みが進捗している運輸事業者の事例を国交省のホームページに掲載していることにも触れ、対策を拡充するよう聴衆に呼び掛けた。

中央防災会議防災対策実行会議の委員も務める関西大の河田惠昭社会安全学部特別任命教授は「災害多発・激化時代における運輸事業者への期待」をテーマに基調講演した。繰り返し災害に見舞われてきた経験から派生した知恵を社会で広く共有し、対応する技術を生み出していく「災害文化」が衰退していると指摘。災害の被害を減らす「縮災」を図るため、災害文化の復活を重視していくべきだとの考えを訴えた。

グループ討議で災害時の運行の在り方を再検証

運輸事業者を代表して陸、空、海の各分野から計4社の幹部が登場、自社の対応をプレゼンテーションした。JR西日本の緒方文人副社長(執行役員鉄道本部長)は、18年7月に西日本を襲った豪雨の際、甚大な被害が発生したものの、早期に運休したため駅間の列車停車が起きず、駅で大きな混乱は見られなかったと説明。自治体や地元企業などの支援を得て当初予定より早く線路の復旧と運転再開にこぎつけられた点にも触れ、早期の対応とともに、各地域や関係箇所との連携を強化しておく必要性をアピールした。

また、乗務員がトラブルに直面した場合、現地で迅速かつ的確な対応を講じられるよう、さまざまな緊急事態をVR(仮想現実)で疑似体験するなどの訓練を進めていることも明かした。

西日本鉄道の清水信彦取締役常務執行役員(自動車事業本部長)は、17年7月に九州北部で起こった豪雨に言及。高速バスが冠水するなどの事態に見舞われた当時の状況を紹介した上で、「予想以上の短時間で冠水したため、マニュアル通りの対応ができなかった」と明らかにした。

そのため、乗務員と管理員がグループ討議で災害時の運行の在り方を再検証。IP電話を導入し広範囲で連絡を取り合える体制を整えたり、リアルタイムで運行管理者が各車両の走行時の映像を取得できる新型ドライブレコーダーを導入したりしたことを紹介した。

瀬戸内海汽船の内堀達也常務取締役(航路事業部長)は、18年7月の西日本豪雨の際、土砂崩れで主要道路が寸断されたため、定期フェリー船や高速船などを使い、広島~呉間で通勤・通学客の輸送を担った経験を解説。豪雨前より旅客輸送人数が約40倍に達したことから「発災直後には鉄道やバスの代替としての役割・機能を一定規模で果たしたことがうかがえる」との見解を示した。

併せて、今後災害時の輸送支援を行う上では、殺到する移動困難者を秩序立てて受け入れられるよう、臨時的な輸送能力確保や港内の秩序維持についても配慮が必要なことなどを指摘。自治体などとの情報共有が不可欠と強調した。

中部国際空港の坂紀廣セントレア・オペレーション・センター部長は、05年以降に大雪などに遭遇した際、経験を基に社内や航空会社、管制機関との連携方法や訓練内容を見直すなど、関係者が協力して対応する「リエゾン文化」の醸成に努めてきたことをPR。16年の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)では各国首脳の安全な受け入れを図る上で貢献したとの見方を表明した。

関西国際空港が台風に襲われ、対岸との連絡橋が不通となったために空港内で大量の外国人観光客らが足止めを強いられた事態を考慮し、中部国際空港でも機能の維持・早期復旧を対象とした空港BCP(事業継続計画)を策定。外部との代替アクセスを確保しておくため、船舶事業者と関係を築くとともに、訪日外国人対応を重視して各国領事館とも協力体制を構築していることに言及した。

最後にはフリーアナウンサーの酒井ゆきえさんをコーディネーターとして、運送事業者代表の4氏と河田氏、国交省の山上範芳危機管理・運輸安全政策審議官が参加し、パネルディスカッションを実施。大規模災害は必ず起こり得るとの前提の下、通常時から指揮体系の見直しや必要な設備の準備などを進めておくことが大事との認識を共有した。


6人が意見を述べ合ったパネルディスカッション

国土大臣表彰は上野トランステックが獲得

国交省はシンポジウムの冒頭、19年度の運輸安全マネジメント優良事業者らを表彰した。「国土交通大臣表彰」は船員がインターネットを介してどこでも安全運航の研修を受講できる独自システムを開発して事故リスクを減らした上野トランステック、「大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官表彰」は事故につながる可能性がある潜在的危険を把握、未然に対応可能とする内部監査手法を取り入れた大阪高速鉄道と、ヒヤリ・ハットデータの収集と分析などで事故削減を果たした新潟運輸がそれぞれ獲得した。

(藤原秀行)

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