楽天が20年3月18日スタート予定の「送料無料」、波紋広がる

楽天が20年3月18日スタート予定の「送料無料」、波紋広がる

独禁法違反の可能性? 出店事業者や物流業界からは懸念の声

楽天は12月19日、オンラインモール「楽天市場」で、ユーザーが商品を3980円以上購入すると送料を無料にする新制度を、一部地域を除き2020年3月18日に始めることを決め、出店事業者に通知した。

これまでは出店事業者がそれぞれ送料を決定したり、送料無料とする金額の条件を定めたりしており、出店事業者によってばらつきがあった。楽天は送料が無料になる条件を一律にすることでユーザーが商品を購入しやすくなり、売り上げの伸びが期待できるとみている。送料無料としても、商品価格に上乗せすることで対応可能と判断している。3980円未満の場合は出店事業者が独自に送料無料の水準を決められるようにする。

ただ、同社が今年1月に送料無料を取り入れる方針を打ち出して以降、関係方面には波紋が広がり続けている。出店事業者からは「送料上乗せで値上げになれば売れなくなる」「どの地域に送るのか事前に分からないのに送料をあらかじめ算出して上乗せするのは困難」などと不満が出ている。結果として送料の自己負担を強いられることへの警戒感も根強い。また、物流業界でも送料無料のしわ寄せが来ることを懸念する向きが少なくない。

関係者によれば、楽天は水面下で公正取引委員会に送料無料が独占禁止法に抵触しないか事前に相談。これに対し、公取委は出店事業者に送料負担を強いる恐れがある点を踏まえ、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる可能性があると指摘したもようだ。

「公取委から調査協力依頼あれば協力」

楽天はロジビズ・オンラインの取材に対し「関係当局とは日ごろからやりとりをさせていただいている。公取委から調査協力依頼などがあれば協力してまいりたい。その他、個別の事案については回答を控えさせていただく」と答え、公取委への相談の有無については言及を避けた。

併せて、「従前からさまざまな方法で説明を重ねながら、いただいたお声を施策に反映している」と強調。具体例として、出店事業者の声を踏まえて、送料無料の対象から家具などの大型商品と冷凍・冷蔵の商品を除外したことや、沖縄や離島向けの場合は送料無料となる購入額を9800円以上にすると追加したことなどを列挙している。

さらに、物流面でのサポートとして、出店事業者向けに総合物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を提供している点や、日本郵便と連携して出店事業者に特別運賃を設定している点などをアピールしている。

現時点では楽天に送料無料の制度開始を変更する考えはないもようだが、出店事業者や物流業界の幅広い賛同を得ているとは言い難い状況だけに、理解を得る努力を引き続き求められそうだ。今後の状況によっては送料無料とする条件の変更など制度設計の修正を迫られる可能性もある。

(藤原秀行)

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