ヤマトHD・長尾社長の会見発言骨子
ヤマトホールディングス(HD)の長尾裕社長が1月23日に行った記者会見での発言内容骨子は以下の通り。
【改革の背景】
・現中期経営計画は、働き方改革とデリバリー(宅配)事業の構造改革には一定の成果出ているが、あらためて検討を重ねた結果、さらなる抜本改革が必要との結論に至った。
・宅急便という強いサービスがあるがゆえに、宅急便に埋没している状況が出ているのではないか。
・現場で全て完結させるのが成長期の仕組みだったが、これからは大きく見直さないといけない。改革は第一線の社員の働きがいをどう作るかということにも直結する。
・「4事業本部」への移行、「4社」では会社ごとにサイロ化起こるのが否定できない。状況を大きく打破するにはいったん1つのヤマトを作り上げ、現場と一体になって1丁目1番地の顧客対応を目指すのが狙い。
・大企業病、かつてよりかなり深刻な状況ではないか。そうなってしまっているのは私をはじめ経営の問題。経営陣から思想や行動を変えていかないと(改革が)浸透しない。
・ドライバーの足を引っ張っている余計な業務は(IT活用による配送ルート作成迅速化などで)取り除かないといけない。現場での(ターミナルを経た)各センターでの2回目の仕分けは非常に大きな負担、極力なくしたい。
会見に臨む(左から)ヤマトHDの芝崎副社長、長尾社長、牧浦常務執行役員
【改革の方向】
・サービスの内容に応じた適正なプライシングはあってしかるべき。サービスに合ったプライシングでいかに提供するかは必要。
・データ・ドリブン経営への転換を図っていく。CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を社内に設立し、有望なベンチャーにも投資していく。
・EC事業本部がEC専業の大手から対応していく。現場のドライバーには極力、本来の仕事ができるようにしていく。
・受け取るお客さまのニーズに沿って安全を担保できるのであれば、「置き配」のようなサービスも必要ではないか。実装可能なサービス提供を始めないといけない。ドライバー以外の戦力が担うことも含めて検討する。
・大口よりもむしろ小口のお客さまへのプライシングをより深刻に捉えている。想定水準より上昇しており、この部分によってお客さまの離反が起きている。ドライバーとお客さまの関係構築を再度図っていきたい。
・再編後の新会社名はまだ決めていない。しかるべきタイミングでお知らせする。
・拠点数、この数年で減らしているが(再編後は)必要なものは増やす。ソーティング拠点増やすことも検討している。無駄に増やすという話ではない。現拠点の重複解消も必要。
・拠点数は再編で今より大きく増えるという話ではないだろう。人員は今後バックオフィス業務削減、仕分け部分の省人化が効いてくる。基本的にトータルで人員増やす計画は持っていない。
【海外事業】
・海外事業、成果出ているものとそうでないものの見極めが必要。年内めどに整理整頓はしっかり行いたい。
・海外は自分で宅配の拡大に取り組んできたが、今は自力、自前にこだわる時代ではない。適切な海外のパートナーと一緒にビジネス作っていく。アジアの成長に力点置いていきたい。
【その他】
・今のヤマトホームコンビニエンスの体制では家族向け引っ越しの再開は難しい。
・(牧浦真司常務執行役員)IT・デジタル分野への投資額、1~2年をかけて検討した上で1000億円と決めている。
・(芝﨑健一副社長)(中国・武漢に拠点がある関連でコロナウイルスへの対応を聞かれ)現在事実関係を確認中。社員や家族の罹患はないが、今後の対応は検討中。
(藤原秀行)
ヤマトHD、傘下の主要8社を21年4月に再編し事業会社に移行へ
「大企業病はかなり深刻」「強いがゆえに宅急便に埋没も」
事業の「基盤」と「構造」計6項目で抜本改革断行